電通総研「生活者が選ぶ話題・注目商品2015ランキング」

電通総研は、「生活者が選ぶ話題・注目商品2015ランキング」および「生活者が選ぶ有望商品2016ランキング」を発表した。
毎年、その年の話題・注目商品の調査を通じて、時代の気分や消費の深層トレンドを分析しており、ランキングをもとに分析した2015年の消費トレンドを分析している。

1.「生活者が選ぶ話題・注目商品2015ランキング」

「話題・注目商品2015ランキング」は、事前調査などで抽出した120の商品・サービスについて、全国の15~69歳の男女を対象にインターネットによるアンケート調査を行い、「今年流行った・流行っている」をベースに作成したもの。

【生活者が選ぶ話題・注目商品2015ランキング ベスト30】
1位 爆買い / インバウンド
2位 錦織圭
2位 ラグビーワールドカップ2015日本代表
4位 マツコ・デラックス
5位 火花(又吉直樹)
6位 ユニバーサル・スタジオ・ジャパン
7位 北陸新幹線
8位 自治体プレミアム商品券
9位 ふるさと納税
10位 Instagram  
11位 ドローン
12位 日本人のノーベル賞受賞
13位 自撮り棒
13位 フードフェス
15位 ハロウィン
16位 ふとんクリーナー
17位 松岡修造
18位 iPhone 6s
19位 ガウチョパンツ
20位 モンスターストライク
21位 スーパーフード
22位 おにぎらず
22位 スター・ウォーズ
24位 ラブライブ!
25位 進撃の巨人 ATTACK ON TITAN
26位 ランチパスポート
26位 近藤麻理恵(こんまり)
28位 3Dプリンター
29位 グラノーラ
29位 SIMフリー携帯

2015年は、年初から続く株価上昇などデフレ脱却に向けた明るい話題も出た一方、物価の上昇や今後の見通しの不透明感などもあり、生活者を取り巻く消費環境は好調とはいえないまでも、変化の兆しも見えた年となった。

年初から始まった中国など外国人観光客による「爆買い」に代表されるインバウンド消費は、日本の消費にも少なからぬ影響があった。

今回の「話題・注目商品2015」のランキングからもその結果が見て取れ、今年のランキングの1位となった「爆買い/インバウンド」は、2月の春節を機に注目を集めた。その後も国慶節など折々に話題となり、日本製品を買い求める外国人観光客の様子がマスメディアを通じて頻繁に紹介されたことで、生活者に大きなインパクトを与えた。

生活者の「爆買い/インバウンド」へのまなざしは、日本の新しい魅力の発見にもつながり、7位の「北陸新幹線」の延伸開業や、9位の「ふるさと納税」を通じて、地方のさまざまな産品に注目が集まり、生活者は日本の持つ魅力を再発見することになった。
また2位の「錦織圭」や「ラグビーワールドカップ 2015日本代表」のように、今まで世界との大きな壁を感じさせたスポーツでの世界的な活躍は、生活者の驚きと称賛を勝ち得た。その活躍のたびに、日本という枠にとらわれずに戦う姿に勇気をもらった生活者は多かったといえる。

2.2015年の5つの新しい消費のムーブメント

1)「私たちの知らない日本」が始まった
 来日した外国人観光客による「爆買い/インバウンド」を通じて、生活者は今まで気付かなかった日本の強みを知る機会となった。また、「ラグビーワールドカップ2015 日本代表」での外国出身選手の活躍など、日本が「外」からの力を借りて、より強くなっている様を感じている。これらを通じて、生活者は今まで「知らなかった日本の魅力」の存在に改めて気付き始め、それらの気持ちは、日本のことをより深く知りたいという思いとなり、「北陸新幹線」での北陸観光や、地元を活性化させる「自治体プレミアム商品券」、地方のさまざまな産品に触れることのできる「ふるさと納税」のヒットにもつながった。

2)「みんなで一緒に」から「攻めの自分」へ踏み出す
 近年の消費の傾向であった「みんなで一緒」に楽しむことから、一歩踏み出したい気持ちが生活者の中に沸き起こった。周りに合わせるのではなく、「自分」を出していきたい気持ちは、SNSでも自己表現に重きを置いた「Instagram」の流行や、自分をもっときれいに写真に残す「自撮り棒」のヒットへとつながった。また、個性的な仮装を通じて、いつもと違う自分を表したいという思いが日本の「ハロウィン」市場を大きなものにした。そして、これらの「自分を出したい」という思いは、自分に正直なスタンスを貫く人への支持にも通じ、「マツコ・デラックス」や「松岡修造」が注目を集めることになった。

3)「ゆるく・ハイパフォーマンス」を狙いたい
 今年の夏は楽に着られて快適かつ、見た目がおしゃれな「ガウチョパンツ」が若い女性の間でヒット。また、「おにぎらず」は、簡単に作ることができる上に、見た目も味も非常に満足度が高いと話題を集め、主婦層を中心にヒットした。こうした、快適・頑張らないでよい・ストレスがないという点で”ゆるい”けれど、そこから高いメリットやパフォーマンスが得られて、満足できるモノ・コトに生活者は注目。布団の表面にかけるだけでほこりやダニをきれいにできる「ふとんクリーナー」も “ゆるさ”と”ハイパフォーマンス”の両立が、生活者の心にヒットしたものといえる。

4)「コスパを超えたコスパ」に驚く
 経済環境が持ち直しつつあるとはいえ、生活者の節約意識は依然として高い状況が続いている。そんな中で「この金額でここまで!?」という驚きを与えるようなサービスが次々と登場している。街中のさまざまなレストランでワンコインのランチが食べられる「ランチパスポート」や、月々1,000円程度の金額を払えば音楽や動画が使い放題になる「定額配信サービス」は、単に安くいろいろなものが使えるというだけでなく、今まで行ったことのないお店や聴いたことのない音楽、見たことのない映像に接する機会を広げ、生活者の消費意欲も広げている。

5)「温かいテクノロジー」が日々の生活に入ってきた
 2015年は、未来を感じさせる商品やサービスが、 機能だけを見せる”冷たい技術”ではなく、使いやすく・分かりやすく・楽しい姿を持った”温かみのあるテクノロジー”として生活に入り始めた。高度な技術を簡単な操作で扱える「ドローン」や「iPhone 6s」、最新のテクノロジーをエンターテインメントの形で体験させる「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」、生活者は意識せずとも最新のテクノロジーに向き合い、自らの可能性を拡張している。

3.2015年は「枠超え消費」の年

 「日本人が考える日本らしさとは異なる日本の魅力」「周りと合わせるのではなく、より自己を打ち出そうとする意欲」「ゆるくても高いパフォーマンス」「驚きを感じさせるコストパフォーマンス」「温かな新テクノロジー」、2015年に起こったこれらの「消費のムーブメント」は、長年、日本の生活者が培ってきた日本の消費の常識や固定観念を自ら打ち破ろうとする新しい動き。電通総研は、この潮流を「枠超え消費」と名付けました。この新たな消費ムーブメントを通じて、生活者はデフレ環境がもたらしていた鬱屈した気持ちから抜け出そうとしており、2015年は新しい消費の時代に向けて「枠超え消費」が加速した年といえる。

4.「生活者が選ぶ有望商品2016ランキング」

 また、本調査では、「話題・注目商品ランキング」とともに、「これから流行ると思う」に焦点を絞って集計した「有望商品2016ランキング」も作成している。

【生活者が選ぶ有望商品2016ランキング ベスト10】
1位 水素自動車
2位 3Dプリンター 
3位 SIMフリー携帯
4位 コミュニケーションロボット
5位 テレビの見逃し配信サービス
6位 4Dシアター
7位 遺伝子キット
8位 シェアリングサービス
9位 マイナンバー
10位 スター・ウォーズ
11位 防災グッズ
12位 ウェアラブルカメラ 
13位 コンビニやスーパーのイートイン
14位 ドローン
15位 渋谷区の同性婚条例(LGBT)
16位 音楽定額配信サービス
16位 ガラホ
18位 動画定額配信サービス
19位 お手軽キャンプ/バーベキュー
20位 機能性表示食品

 2016年の有望商品ランキングでは「水素自動車」(1位)、「3Dプリンター」(2位)、「コミュニケーションロボット」(4位)など、未来的なテクノロジーが多くランクインしています。また音楽や動画の「定額配信サービス」や「シェアリングサービス」といった超高度なコストパフォーマンスを提供するサービスへの期待感も見られる。

 2016年はより一層、常識や固定観念の枠を打ち破る動きが加速します。生活者が期待するさまざまなテクノロジーが生活の中に入り込んでいくことで、私たちの生活は変わり始めるきざしが見られる。テクノロジーがもたらす生活の変化に不安を感じることがありつつも、変化によって得られる恩恵を享受し、生活の景色の変化に期待する年になると予想される。