ニールセン、13年3Qの世界の広告費動向を発表
ニールセン株式会社は、ニールセンが全世界の広告費を調査するGlobal AdView Pulseの2013年第3四半期(7-9月)版の結果を発表した。
それによると、広告費は世界全体で緩やかな増加を続け、2013年第3四半期は前年比で3.2%、2013年1月-9月期累計でも3.2%増加していることがわかった。以下に同社の調査・分析の結果を記載する。
■地域別広告費:際立つアジアの存在感、アジア太平洋の続伸が世界の広告費を押し上げる
アジア太平洋における広告費の伸びは引き続き力強く、2013年1月から9月までの期間に前年比で7.0%伸長し、世界全体の広告支出を押し上げる要因となっている。
一方、苦境が続いていた欧州の広告市場にはようやく明るい兆しが見え始め、第3四半期は前年同期比0.4%減と、ごくわずかな減少にとどまった。これにより、2013年1月-9月期までの累計も3.8%減となった。前回2013年第2四半期の報告でも触れたが、欧州の広告市場の落ち込みもようやく底に達したと思われる。
北米の第3四半期の広告費は微増(1.3%)にとどまったが、それでもなお、年初からの累計で見ると前年比1.7%の増加となっている。また2012年同期には、大統領選挙を控えた米国メディアに政治広告が溢れており、今期の減少はその反動によるところも少なからずあると考えられる。
世界経済に明るい兆しが見え始め、アジア太平洋の広告市場がさらなる躍進を遂げる中、ニールセンは、世界の広告市場がこのまま回復基調を続けられるかどうかに注目している。(図表1)
図表1:地域別広告費
2013年1月-9月累計地域別広告費の増減(対前年同期比)
■媒体別広告費:オンライン・ディスプレイ広告が大躍進
2013年第3四半期の媒体別広告費では、年初からの傾向に大きな変化は見られず、テレビとオンライン・ディスプレイ広告の伸びが世界全体の広告費成長を支える状況が続いている。
調調査対象国は限られているが、オンライン・ディスプレイ広告は年初から第3四半期までに前年同期比32%超の成長を遂げている。オンライン広告は、広告業界における「有能な新参者」として認められつつあり、広告主もオンラインの重要性が急速に高まっていると広く認識している。オンライン広告の著しい成長が何かを暗示しているとすれば、この広告主の認識は正しいと言える
一方、オンライン・ディスプレイ広告への支出が急速に拡大する中でもテレビ広告費は4.3%増加し、広告費全体の57.6%という圧倒的なシェアを保ち続けている。広告支出全体が長らく減少傾向にあった欧州でさえも、テレビ広告費に関しては2013年第1~第3四半期を通して横ばい状態(0.0%)となっている。
また、同時期のラジオ広告費に関しては、欧州で6.5%の減少、中南米では12.4%増加しており、世界全体でみると第1~第3四半期までの累計で前年比0.7%減となっている。さらに、新聞、雑誌、映画広告もそれぞれ2.2%、 1.1%、1.3%ずつ減少しており、これらの予算をテレビとオンライン・ディスプレイ広告へと振り分ける傾向が強まっている。(図表2)
ニールセンのグローバル広告分析部門責任者ランダル・ベアードは「オンライン広告が他のメディアを凌いで成長するであろうことは予想されていましたが、その中でもテレビの圧倒的優位は揺るぎません。そして面白いことに、二つのメディアは共存の方向へ進んでいるようです。今、多くの広告主は複数のスクリーンで消費者とつながる統合的なキャンペーンを展開し始めています。様々なメッセージを巧みに組み合わせることで、最大限の効果を生み出そうというわけです。」と述べている。
図表2:媒体別広告費
2013年1月-9月期媒体別広告費の増減(対前年同期比)
2013年1月-9月期媒体別広告費シェア
■産業別広告費:世界全体で鉱業、農業、不動産、サービス業の広告費が上向く
産業別に見ると、2013年1月-9月期までの間に最も高い伸び率を記録したのは鉱業・農業・不動産・サービス業と、一般消費財(FMCG)のカテゴリーだった。
鉱業・農業・不動産・サービス業のカテゴリーでは、特に不動産業の広告費が世界全体で11.3%増と大きく伸長。この原動力となったのが伸び率33.9%増のアジア太平洋で、2012年秋の米国大統領選挙の反動から5.7%減となった北米を補ってなお余りある増加となった。
また、一般消費財の広告費も前年を上回る状態が続いており、世界全体で6.0%増となった。産業別広告費のトップシェア(21%)を占め、成長を続ける一般消費財産業には、食品・飲料、化粧品や日用消耗品などが含まれるが、このカテゴリーへの広告出稿には減少の気配すら見られない。
一方、他の産業では広告費を抑制する動きも目につく。自動車産業は世界全体で広告費が縮小され、今四半期までの累計で前年比1.9%減となった。中でも欧州では11.2%の減少と縮小幅が一段と大きくなっているが、アジア太平洋においても自動車産業の広告費は6.8%減少している。衣類・アクセサリー産業と金融業の広告出稿でも保守的な傾向が強まり、広告費は2013年1月から9月までの累計でそれぞれ前年比1.7%、1.0%の減少となっている。(図表3)