電通、2012年日本の広告費発表 総広告費5年ぶり増加、四マス媒体も前年超え

株式会社電通は2月21日、日本における総広告費と、媒体別・業種別広告費を推定した「2012年(平成24年)日本の広告費」を発表した。
これによると、昨年2012年(1~12月)の日本の総広告費は5兆8,913億円、前年比103.2%であった。総広告費は、2008年の米国金融危機に端を発した世界同時不況を背景に減少に転じ、2008年(同95.3%)、2009年(同88.5%)、2010年(同98.7%)、2011年(同97.7%)と4年連続して前年実績を下回ったが、2012年は東日本大震災の反動増もあり、5年ぶりに前年実績を上回った。

 

■2012年(平成24年)の広告費の特徴
1.2012年の総広告費は、復興需要などによる2011年後半からの回復傾向を受けて前半は好調だったが、ロンドンオリンピック後は、エコカー減税・補助金終了の影響による個人消費の減退、円高や欧州経済の低迷、輸出が減少したことなどによる景気後退のあおりを受け、減少傾向となった。
しかしながら、通年での総広告費は5兆8,913億円、前年比103.2%と、5年ぶりに増加。マスコミ四媒体広告費は2兆7,796億円と、震災前の2010年の水準を上回るなど広告出稿は活性化した。

2.媒体別にみると、「テレビ広告費」(前年比103.0%)、「新聞広告費」(同104.2%)、「雑誌広告費」(同100.4%)、「ラジオ広告費」(同99.9%)の「マスコミ四媒体広告費」は同102.9%と前年を上回った。また、「プロモーションメディア広告費」も同101.4%と前年を上回った。ロンドンオリンピックなどで好調だった「衛星メディア関連広告費」(同113.7%)は3年連続で2ケタの伸びを示した。「インターネット広告費」(同107.7%)は、引き続き増加となった。

3.業種別(マスコミ四媒体)では、「自動車・関連品」(前年比126.9%、軽自動車、2BOXなどが増加)、「情報・通信」(同110.5%、スマートフォンサービス、衛星放送、ウェブコンテンツなどが増加)、「飲料・嗜好品」(同107.0%、美容・栄養ドリンク、乳酸菌飲料、炭酸飲料などが増加)など、21業種中16業種で前年を上回った。減少業種は、震災後の大量出稿による反動減の影響を受けた「官公庁・団体」(同30.6%、広告団体などが減少)、「案内・その他」(同80.2%、企業グループ、映画・演劇の案内などが減少)など5業種であった。

 

1.総広告費の推移
2012年の総広告費は5兆8,913億円、前年比103.2%と、5年ぶりの増加になった。

 

2.媒体別広告費の概要
「マスコミ四媒体広告費」は、2兆7,796億円、前年比102.9%。「テレビ広告費」が前年比103.0%となったほか、「新聞広告費」「雑誌広告費」も増加した。また、「プロモーションメディア広告費」も同101.4%と前年を上回った。さらに、ロンドンオリンピックなどで好調だった「衛星メディア関連広告費」は同113.7%となり、「インターネット広告費」も同107.7%と堅調に推移した。なお、「マスコミ四媒体広告費」を四半期別にみると、年前半は高い伸びだったが、年後半は景気後退感が強まり、マイナスに転じた。

各媒体別の状況は、次のとおり。

<新聞広告費>
・新聞広告費は6,242億円、前年比104.2%。
・2012年前半は復興需要や消費マインドの復調、また震災の影響の反動から、新聞広告費は好調に推移し、前年比で10%近い大幅増となった。しかし、後半は円高や欧州危機などの下振れ要因が重なり、震災の反動効果が徐々に薄れていき、ロンドンオリンピックや衆院選といった下支え効果があったものの、前年を若干下回った。通年では4.2%増となった。
・業種別にみると、21業種中15業種が前年比プラス、6業種が同マイナスとなった。特に伸びの大きかった業種は、「エネルギー・素材・機械」(前年比116.2%)、「飲料・嗜好品」(同116.1%)、「化粧品・トイレタリー」(同114.8%)、「官公庁・団体」(同114.6%)などで、2ケタの増加となった。特に「飲料・嗜好品」や「化粧品・トイレタリー」、通販関連の商材が伸びをけん引した。また、構成比の大きい「交通・レジャー」、「流通・小売業」も増加した。
・こうしたなか、新聞各社はターゲットを絞った紙面の開発、デジタルを絡めた紙面企画、新しいクリエーティブの試み(映画やコミック、女性ファッション誌とのタイアップ、大型紙面での出稿)など、これまでにない取り組みを行い、他のメディアでも取り上げられるなど注目を集めた。また、デジタル対応においても、主要紙の電子新聞が出そろい、タブレット端末やスマートフォンへの対応が進んだ。

<雑誌広告費>
・雑誌広告費は2,551億円、前年比100.4%。
・2012年の前半、特に4-6月は好調だったが、後半は低調に推移し前年を下回った。
・業種別にみると、21業種中11業種が前年を上回り、そのうち「薬品・医療用品」「飲料・嗜好品」「精密機器・事務用品」の3業種は10%を超える伸長となった。雑誌広告で大きな構成比を占める「ファッション・アクセサリー」(前年比104.6%)と「化粧品・トイレタリー」(同
100.1%)も順調に推移した。このほか、前年は震災の影響で大幅減だった「食品」(同109.3%)が、健康食品・美容食品の伸長に支えられ、復調に転じた。
・ジャンル別にみると、女性誌、男性誌、ミセス誌など9ジャンルで前年を超えた。特に「女性誌」と「アダルト男性誌」が大幅に伸長した。創復刊点数は98点で、過去最低レベルの100点を割る低調ぶりだった。目玉となる大型創刊は少なく、主な創刊誌は女性誌の『andgirl』(エムオンエンタテインメント)と『Richesse』(ハースト婦人画報社)であった。アラサー世代女性向けの『BAILA』(集英社)や「女性・母・妻の3役」を提唱する30代女性向け『VERY』(光文社)の広告集稿は前年比で30%以上の伸長をみせており、大型創刊誌が少ないなかでも健闘した。
・一方、スマートフォンやタブレット端末の普及などから、20代前半女性をターゲットにした『Cancam』『JJ』などは、部数・広告集稿ともに低調だった。
・休刊誌は152点で、前年とほぼ同水準にとどまった。主な休刊誌は、通販誌『Look!s』(スタイライフ)、料理男子向け『男子食堂』(ベストセラーズ)。また、定期誌が本誌点数を減らす一方で、創刊リスクの少ない不定期誌刊行に力を入れる傾向が拡大した。創刊/別冊刊行は、不定期誌で4,832点(前年比101.5%)、ムックで9,087点(同103.8%)となった。

 

<ラジオ広告費>
・ラジオ広告費は1,246億円、前年比99.9%。
・業種別にみると、21業種中12業種で前年を上回った。「精密機器・事務用品」(前年比148.6%)など3業種が2ケタ増、「自動車・関連品」(同109.7%)も大きく伸長した。また、ロンドンオリンピック効果もあり、「食品」「外食・各種サービス」も前年を上回った。一方、ラジオ広告費において比較的シェアの高い「飲料・嗜好品」については、特に業界市況の煽りを受けたアルコール系で出稿に低下傾向がみられた。また、衆院選での大量出稿があったものの、前年に大量出稿があった広告団体の影響で、「官公庁・団体」は前年割れとなった。
・radiko.jp(ラジコ)については、各種タイアップキャンペーンによる認知拡大や番組予約システムの構築等による番組の積極聴取を促す施策や、ラジオNIKKEI第一・第二での全国配信の開始、また南海放送・琉球放送の参加等により、前年に引き続き活動が活発化した。
・コミュニティ放送の広告費は、わずかながら増加した。地域別では関東、東海、北陸で減少したが、その他の地区、特に東北は前年を大きく上回った。広告主の減少や予算の縮小で減少傾向にある放送局がある一方で、自治体等の獲得、地域密着型イベント、震災復興支援、メディアミックスの取り込みで増加した放送局も多くみられた。

<テレビ広告費>
・テレビ広告費は1兆7,757億円、前年比103.0%。
・2年ぶりに前年を上回った。
・業種別にみると、21業種中16業種で前年を上回った。「自動車・関連品」(前年比133.5%)「情報・通信」(同115.2%)など5業種が2ケタ増、構成比の大きい「食品」(同106.5%)「化粧品・トイレタリー」(同103.5%)も増加した。
・内訳は、スポット広告費が1兆562億円(同103.0%)、番組広告費が7,195億円(前年比103.1%)であった。
・スポット広告費は、3年連続で増加した。1-3月は、前年の震災やタイ洪水に伴う影響からの反動で回復基調となり、「食品」「化粧品・トイレタリー」が好調を維持した。また、「金融・保険」などの業種による積極的な出稿もあった。4-6月は、前年に震災の影響で大きく落ち込んだことによる反動増や、「自動車・関連品」のエコカー減税・補助金関連の大型出稿などで活況を呈した。しかし、8月以降は低調な海外景気に伴う業績見通しの悪化や消費低迷などによって減速し、「飲料・嗜好品」「化粧品・トイレタリー」などが落ち込んだ。
・番組広告費は、2006年以来6年ぶりに前年を上回った。レギュラー番組やスポーツ番組等に広告主の年度末予算が投入された結果、1-3月は伸長した。また、震災からの回復基調が好影響を与え、さらにロンドンオリンピック効果も相まって、夏場までは堅調に推移した。しかし、10月以降はその勢いも弱まった。

<マスコミ四媒体広告制作費>(注:広告制作費は媒体別広告費に含まれている。)
・マスコミ四媒体広告制作費は2,911億円、前年比104.0%。
・そのうちテレビCM制作費は1,990億円、前年比105.1%。
・年前半は、移動体通信サービス、エコカー減税・補助金関連の出稿で、ロンドンオリンピックまでは好調に推移したが、その後は外需不振により、「家電・AV機器」「自動車・関連品」などの状況が悪化し、広告制作費も縮小傾向となった。年初の予想よりも大きな下振れとなり、結果として予想よりも低い伸びにとどまった。

 

<衛星メディア関連広告費>
・衛星メディア関連広告費は1,013億円、前年比113.7%。
・BS放送は、前年比122.0%。2011年のテレビ放送完全デジタル化と2012年のロンドンオリンピック中継はBS放送での視聴を中高年層に習慣づけし、巨人戦などのプロ野球中継、紀行番組・時代劇・韓流ドラマなど、地上波テレビとは異なるM2・F2(男女35~49歳)以上向けの編成が定着化した。それにより、これらの層を対象にした大手広告主(消費財で高価格帯の商品・耐久財・サービス)の新規出稿や出稿額が2011年以上に増加し、引き続き好調な通販広告とともに各局の売り上げを拡大させた。
・CS放送は、前年比102.0%。有料チャンネルとしての「ターゲット戦略」で雑誌やローカルテレビ局などとのコラボレーション戦略やイベント戦略が年前半は好調であったが、年後半は広告主の費用抑制やロンドンオリンピックの開催でBS放送に注目が集まったことから、広告主が流出し、大きな成長には至らなかった。広告主としては、相変わらず通販(健康食品関連)などによる恒常的な出稿はあるものの、商材によってはレスポンス効果が二極化することもあり、成長がやや鈍化している。一般広告主については、地上波と異なる富裕層を対象にした商材を持つ広告主からの出稿が増加しつつある。
・CATVは、前年比100.7%。地上波デジタル化対応をきっかけとするCATV事業者によるコミュニティチャンネルの広告営業がCATV連盟を挙げての動きとなってきている。事業者によっては、通販以外の地元流通や自動車販売店、パチンコ店などの広告主に対して積極的な営業活動を進めている。拡大戦略が奏功しているのは、主要エリアの大手MSO(統括運営会社)が中心で、ローカルエリアは大きな伸びが示せず、二極化の状況にある。

<インターネット広告費>
・インターネット広告費は、8,680億円、前年比107.7%。
・インターネット広告媒体費は、6,629億円、前年比107.1%。
・インターネット広告媒体費の市場全体をみると、前年が震災等の影響で市場の伸長が鈍化したこともあり、2012年は前年比でみる限り高い成長率を示した。また、ロンドンオリンピックや衆院選などのイベントにおいては、インターネット広告の活用が進み、成長を後押しした。市場の内訳では、運用型広告が高い成長を遂げる一方で、これまでの枠売り広告は「情報・通信」などの主力業種を中心に引き続き堅調ではあるものの、次第に伸びが横ばいに近づきつつある傾向がみられる。その背景には、ここ数年続いているフィーチャーフォン広告市場の縮小が挙げられる。一方、枠売り広告においても、主流であるポータルサイトの活用だけでなく、動画などのリッチ広告、ソーシャルメディアの活用についても、さまざまな進化が見られ、「食品」「飲料・嗜好品」といった業種においては広くインターネット広告の活用が定着するなど、市場の活性化が進んでいる。
・また、インターネット広告媒体費のうちの運用型広告費は、3,391億円、前年比118.9%。
・運用型広告費に含まれる検索連動広告は、スマートフォンの普及拡大の恩恵を大きく受けていることもあり、引き続き拡大基調にある。また、その他の運用型広告についても、急速な技術の進展に伴って登場したRTB(リアルタイム入札)のようなターゲティング効果の高い手法は市場の注目を集め、高い成長を続けている。業種としては、金融やeコマースなどを軸に、ブランディングを目的とした幅広い業種の広告主に運用型広告の活用が拡大しつつある。
・インターネット広告制作費は、2,051億円、前年比109.5%。
・2011年が前年比112.2%であったため、成長率は若干鈍くなった。震災等の影響はかなり小さくなってきたが、制作単価の下落やフィーチャーフォンサイトの制作件数の落ち込みなどが成長率の鈍化要因となった。一方で、スマートフォンの普及やタブレット端末等の多様化により、アプリの開発や専用サイトの制作件数は増加し、さらにスマートフォンの普及と連動するようにSNSの活用が活発化した結果、FacebookページなどSNS関連の制作件数が大きく増加した。
・業種別でみると、「情報・通信」「不動産・住宅関連」「金融・保険」「アミューズメント」などが伸長した。
・今後も、インターネット広告制作費は増加していくと見られる。広告キャンペーンにおけるウェブサイトの活用が拡大傾向にあるほか、ウェブサイト専用の映像制作やスマートフォン用アプリの開発などが拡大を後押ししていく。

・また、一般広告主・通販広告主がeコマースに参入するケースが、前年に引き続き増加傾向にある。一般広告主は、食品・化粧品・ファッション・アパレルを中心に、今後も幅広い業種への拡大が見込まれる。

<プロモーションメディア広告費>
・プロモーションメディア広告費は2兆1,424億円、前年比101.4%。
・前年の震災による出稿自粛の反動増もあり、5年ぶりに前年を上回った。「屋外広告」(前年比103.8%)、「交通広告」(同103.9%)、「折込広告」(同102.1%)、「DM」(同101.3%)、「POP」(同100.5%)、「展示・映像他」(同108.3%)がプラスに転じた。
・2012年は前年にあった震災の影響による出稿キャンセルや自粛がなくなり、ロンドンオリンピック景気も相まって徐々に回復に向かった。しかし、夏場以降は個人消費の減退や外需不振によって日本経済にも減速感が増し、衆院選はあったものの、前年にあった東京モーターショーのような大きなイベントがなかったため、大幅な回復には至らなかった。プロモーションメディア広告における費用対効果へのニーズが高まったことを受け、デジタルデバイスとの連動などが求められ、紙メディアとウェブメディアの使い分けや、またその共存が試行される段階に入ってきた。

 

3.業種別広告費(21業種、マスコミ四媒体のみ)の概要
2012年は21業種中16業種で増加、5業種で減少した。
増加業種は、「自動車・関連品」(前年比126.9%、軽自動車、2BOXなどが増加)、「情報・通信」(同110.5%、スマートフォンサービス、衛星放送、ウェブコンテンツなどが増加)の2業種が2ケタの増加。「精密機器・事務用品」(同109.7%、デジタル一眼レフカメラ、腕時計などが増加)、「流通・小売業」(同108.6%、総合スーパー、通信販売などが増加)、「交通・レジャー」(同108.2%、旅行代理店、ホテル・旅館などが増加)、「ファッション・アクセサリー」(同107.6%、婦人服、靴などが増加)、「飲料・嗜好品」(同107.0%、美容・栄養ドリンク、乳酸菌飲料、炭酸飲料などが増加)、「食品」(同106.4%、健康食品、美容食品などが増加)、「外食・各種サービス」(同104.4%、女性用ウィッグ、エステティックサロンなどが増加)、「不動産・住宅設備」(同104.1%、住宅付属設備、分譲マンションなどが増加)、「化粧品・トイレタリー」(同104.0%、化粧水、美容液などが増加)、「薬品・医療用品」(同103.4%、医薬品メーカーの企業広告、メガネなどが増加)、「教育・医療サービス・宗教」(同103.2%、英会話・語学スクール、予備校・学習塾、通信教育などが増加)、「出版」(同103.0%、単行本、出版社の企業広告、趣味専門誌などが増加)、「金融・保険」(同102.7%、保険会社の企業広告、カードローンなどが増加)、「家庭用品」(同101.2%、家具、台所用品などが増加)の16業種が前年を上回った。
減少業種は、震災後の大量出稿の反動減が大きい「官公庁・団体」(同30.6%、広告団体などが減少)、「案内・その他」(同80.2%、企業グループ、映画・演劇の案内などが減少)、「エネルギー・素材・機械」(同96.3%、電力、ガスなどが減少)、「趣味・スポーツ用品」(同98.1%、映像ソフト、パチンコ・パチスロ機、ゲームソフトなどが減少)、「家電・AV機器」(同99.3%、液晶テレビ、ブルーレイディスクレコーダーなどが減少)の5業種。