[特集]クチコミで売れている広告媒体「クラブネッツ」 広告レスポンス3%、広告主のリピート率80%の秘密とは
株式会社クラブネッツ
執行役員
事業戦略室 室長
メディア事業本部 本部長
野尻 猛氏
エステなどの店舗や、単品通販会社の間で密かに話題になっている媒体がある。
この2年で取引社数を3倍に増やしているのが、共通ポイントカードを発行している「クラブネッツ」のリストレンタルサービス。
リストレンタルとは、クラブネッツのように、会員に対して広告主企業がダイレクトメールなどのお知らせを郵送、直接レスポンスをとることができるサービス。
個人情報保護法により、ダイレクトメールの送付に制限がかかる中で注目されているサービス。
今回はクラブネッツのリストレンタルサービスが、なぜ広告主の間でクチコミで広がっているのか。
広告主の高いリピート率や、取引者数の急増の裏側をメディア事業本部 本部長の野尻氏に伺った。
■媒体の概要 そもそもどんな媒体なのか?
クラブネッツは共通ポイントカードを主な事業としている会社。
ポイントカードというのは、普通1店舗でしか使えないが、これを一枚のカードを複数の店舗で使えるようにしたのが、クラブネッツのポイントカード。
主に中小の店舗が加盟店となり、店舗の顧客を会員化して来店を促すために使われている。
この店舗ごとの会員カードやポイントカードは、今となっては珍しくない来店促進や囲い込みのツールだが、これを加盟店共通で使えるポイントカードとして運営している。
「当社代表がROUND1で企画業務に携わっていた頃、“ROUND1のポイントカードが近くの美容院や居酒屋、喫茶店など別のお店でもポイントが溜まったら便利だ”と考え企画したのがきっかけです。」(野尻氏)
このポイントカードは、クラブネッツだけで加盟店を集めているわけではなく、全国各地のフリーペーパーや地域情報誌にポイントカードのしくみを提供することで拡大している。
例えば、Jリーグのファンクラブでも活用されている他、和歌山リビング新聞のエルカード、中日新聞販社のマイタウンとうとカードなど、地域の媒体社でも活用されている。
地域情報誌などの媒体社にとっては、広告主となる地域の店舗を加盟店として囲い込む共通カードになり、かつ、読者にとっては地域のあらゆる店舗で使える便利なポイントカードになる。
こうした、各地域の団体や媒体との連携により、クラブネッツカードには現在470万人の会員がおり、8000店舗が加盟している。
■リストレンタルとはなにか?
この470万人からセグメントした会員に対して、単独DM(ダイレクトメール)を送付することができるのが、リストレンタルサービス。
DMはクラブネッツから、クラブネッツ会員に対して送られるが、レスポンスは直接広告主に返るしくみ。
クラブネッツのDMはどのような流れで発送されて会員に届き、広告主に売上がもたらされるのか。
野尻氏にご説明いただいた。
「まず、クラブネッツからセグメントされた顧客にダイレクトメールが発送されます。
あくまで、クラブネッツからのお知らせですが、封筒の見た目は広告主が自由にデザインできます。
会員の手元に届いたDMからの注文や申し込みは、直接広告主宛に郵送される仕組みです。」
リストレンタルを使って発送されるダイレクトメール。
リストレンタルとはいえ、封筒まで自社DMに近い感覚でクリエイティブできるという。
クラブネッツのリストレンタルはエステのほか、化粧品などでも実績がある。
■単純に客単価でセグメントするよりも、店舗ごとに平均客単価以上のリストを抽出した方が効果が高い
クラブネッツカードのデータベースは、誰が、いつ、どこで、いくら買ったのかといった会員の購買情報を持っている。
また、クラブネッツでは加盟店の販促支援を行っているため、一部、加盟店舗ごとの客単価なども把握している。
これらのデータから、店舗ごとのVIP客を抽出することができる。
同じ美容室でも価格設定が違えば、1万円使うお客さんがVIP客なのか、通常の顧客なのか位置づけが変わってくる。
つまり、平均客単価以上の顧客というセグメントができるようになる。
ここが他の媒体との大きな違いだ。
また、ひとつの店舗のポイントカードなら、その店舗での購買データしか集まらないが、複数店舗共通のポイントカードであれば、美容室からエステ、雑貨屋、スポーツクラブなどカード会員の生活スタイルが見えてくる。
こうしたデータを蓄積していくことで、また新たなセグメントが可能になる。
加えて、クラブネッツカードは実店舗だけでなく通販会社も加盟しているため、通販利用の有無や購入した商材や単価なども把握している。
■初めての広告主でレスポンス率3%という結果
こうして3ヶ月以上、他社にはないセグメントを追求して、このリストレンタル初のクライアント、大手通販化粧品会社がダイレクトメールを実施した。
その結果、レスポンス率3%を超える結果を出したという。
通常、会員誌などではレスポンス率(注文などのアクション)が1%を超えると高レスポンス媒体と言われることから、3%を超えるレスポンスがいかに驚異的か分かる。
この大手通販化粧品会社は、抽出された80万件のリストのうち、初回に30万通を実施、結果を見て残りのリストのうち30万通強を実施したという。
■広告主のリピート率は80% 広告媒体としては驚異的な数字が並ぶ
リストをセグメントしてダイレクトメールを送付、レスポンスは広告主に直接返る、というと単純な仕組みに見えるが、野尻氏から出た数字は一般的な広告と比較して驚くべきものだった。
前述した大手通販化粧品会社の事例のように、初回発注からの広告主のリピート率は80%。
例えば、セグメントした60万件のリストのうち、最初に10万件のみテスト配信すれば、ほぼ8割の広告主が残りリストに対して2回目のDMを実施するという。
DM事業の広告主の取引社数は、対前年2倍。
2年間で3倍に伸び、今年の取引者数は150社を超えた。
主な広告主は単品通販。
それ以外にもエステ、紳士服、子供服など、店舗集客に強みを持っている。
最近増えているのが、小中学生向けの教材だという。
470万人の会員のうち、270万人は通販利用者。
通販利用者の中でも、購買履歴によるセグメントが可能なため、通販会社から圧倒的な支持を得ている。
通販会社は横のつながりが非常に強く、通販会社同士のクチコミでクラブネッツのリストレンタルを発注する通販会社が多いという。
「特に最近では、広告主の“広告を出しても失敗したくない”という傾向が強くなってきており、他社が成功したという実績や事例で広告媒体を判断している。」(野尻氏)
“広告を失敗したくない”というのは、まさにこの不況下での広告主の本音の一言だ。
■では、高いレスポンスが出せるのはなぜか?
広告の結果がよかったから広告主のクチコミで、発注が増えるのはわかった。
では、何故きちんと結果が出せるのか。
それについて野尻氏はこう言う「会員がいるから広告ビジネスをやろう、という発想ではなく、会員が必要としている情報を送ることで、広告主の驚異的なリピート率につながっているんです。」
会員数は470万人いるが、470万人全員へのDM発送は行わない。
必ずセグメントをかけて、その情報を送ると喜ぶ会員だけを抽出した上で、DMを送る。
そのため、リストレンタルで心配されるのが、会員から広告主への直接のクレームだが、クラブネッツではこうしたクレームはない、という。
会員が必要としている情報を、必要な会員だけに送れているから、クレームが発生しない。
また、クラブネッツカードは各店舗で発行されていることもあり、会員の行きつけの店舗に対する帰属意識が高いのもクレームが少ない要因の一つである。
他社のリストレンタルでDMを流した場合と比較して、レスポンスが2倍近く出るのはこうした背景もある。
■現在では大手企業も活用している
今回、クラブネッツを取材先に選んだのは、実際に広告主のごく一部でこの媒体が話題になっているほか、ファインドスター代表の内藤の著書「ニッチメディア広告術」(ダイヤモンド社)の巻末で紹介した中でも際立って問い合わせが多かった媒体だったからだった。
野尻氏によれば、同書籍からの問い合わせだけで7000万円の売上を上げ、大手企業との取引も継続しているという。
リストレンタルは、かつてはマイナーな存在ではあったが、広告主が広告に対するレスポンスを求める今、大手企業も積極的に活用する広告手法の一つとなったようだ。
取材を通して、野尻氏から広告主のリピート率や、驚くべきレスポンス率を聞き、広告主の間で何故話題になるのかが見えた。
一方で、どうして高いレスポンス率を叩きだせるのかについては3つの理由が見えてきた。
◆高いレスポンスを出すための条件
1.カード会員の帰属意識の高さ (店舗ファンを囲ったカードだから)
2.セグメントの仕方 (どの店で、過去にいくら買ったのか?をベースに)
3.会員に不要な情報を送らないという姿勢 (全件配信NG、セグメントは会員のためでもある)
会員目線でのメディアづくりが、結果として高いレスポンスをはじき出す要因になっている。
また、購買データをもとにした独自のセグメントは、広告主にとってもこれまでしたくても出来なかった“他社(他店舗)の優良顧客へのアプローチ”を可能にしている。
それと同時にこのセグメント方法は、会員にとっても必要な情報のみが送られてくるというメリットをもたらすグッドサイクルを生んでいる。
(杉山)
↓↓この記事で紹介したクラブネッツのセミナーを開催します!!↓↓