フルフィルメントとは?業務内容と流れ、外注のポイント等を解説、業者10選
フルフィルメント(英訳:fulfillment)とは、物流業界で使われることが多く、通信販売やECサイトにおいて、受注・梱包・在庫管理・発送・受け渡し・代金回収など一連のプロセスのことです。つまり、受注から配送までの業務全般がフルフィルメントです。
ECサイトは、商品を販売するだけでなく、受注から配送までのスムーズさや、商品到着後のクレーム対応など、フルフィルメントで顧客の評価が左右され、ECサイトを成功させるためには、フルフィルメントをいかに円滑にするかがポイントとなります。
本記事では、ECサイトを成功に導くフルフィルメントについて、概要から業務の流れ、円滑にフルフィルメントを進めるためのポイントも解説。
フルフィルメントを円滑にするための、会社一覧も紹介します。
今後、通信販売やECに新規参入される方も、ぜひ参考にしてみてください。
1.フルフィルメントとは
フルフィルメント(英訳:fulfillment)とは、通信販売やECサイトにおける受注・梱包・在庫管理・発送・受け渡し・代金回収などの業務プロセスのこと。
基本的には、顧客が、ECサイトで商品を注文し、手元に届くまでの事業者側の業務フローを指します。
しかし、会社によっては、以下の業務もフルフィルメントとして扱われています。
<商品到着後の業務>
・クレーム対応
・問い合わせ対応
・返品や交換対応
<受注までの業務>
・商品の撮影
・商品の採寸
・原稿作成
・顧客データ管理
・分析
このように会社によっては、作業領域が非常に広いため、どこまでをフルフィルメントとして扱うのか、しっかりと定義しておきたいところ。
2.フルフィルメント業務の流れ
それでは、受注からエンドユーザーへ発送するまでのプロセスを例に、フルフィルメントの業務内容について整理していきます。
2-1.入荷管理・検品作業
荷物が物流倉庫へ届くことを「入荷」と呼びます。
そして、卸会社やメーカーから、商品そのものや数量が正しく入荷されているかをチェックするのが入荷管理です。
また、荷物が正しく入荷されていても、性能や品質に問題があるケースもみられます。
このような状況で、荷物の性能や品質を検査する作業を「検品」といいます。
検品作業を怠ると、顧客の元へ不完全な商品が届いてしまうなど、クレームの原因にもつながりますので、非常に重要。
なお、検品作業は「入荷検品」と「出荷検品」の2種類に分かれます。
入荷検品とは、自社工場に届いた商品を倉庫に入れる前に、品質の破損や異常を点検するもの。
次に出荷検品とは、出荷先別に仕分けをした商品の配送先、品名、品番、数量に誤りがないか、出荷指示書を見ながら、確認する作業です。
このように2種類の検品作業によって、誤出荷や不良品の配送を抑制します。
2-2.商品保管
商品保管とは、物流倉庫において、商品や荷物を預かり、保管すること。
検品を終えた商品を注文が入るまでの間、ラックやパレット単位で保管します。
商品によっては、傷みやすいものもあり、顧客からの注文が入るまでの間、商品の価値を維持する役割も担います。
市場への安定供給、商品価値の維持のためには、商品保管が担う役割は大きいでしょう。
なお、商品を保管するための物流センターや倉庫については「生産立地型倉庫」と「消費立地型倉庫」の2種類に分かれています。
生産立地型倉庫とは、商品の生産地や仕入れ先に近い立地に建設された倉庫のこと。
傷みやすい生鮮食品などを取り扱う際、仕入れ先数が販売数より多い場合で、利用されています。
一方、消費立地型倉庫とは、消費地や販売地に近い場所で構える倉庫のこと。
さきほど紹介した生産立地型倉庫とは、逆で、仕入れ先数よりも販売数が多い場合、販売先からのリードタイムを意識した際にメリットがあります。
通信販売やECサイトでは、宅配便料金が物流コストの多くを占めますので、コストを考慮して消費立地に物流センターを構えることが多い傾向です。
2-3.受注処理
受注処理とは、顧客からの注文を受けてから、注文完了報告、在庫状況の確認、決済方法の確認、送り状の発行など、広範囲における業務プロセスを指します。
アナログ管理やWMS(Warehouse Management System)などの倉庫管理システムを用いて、在庫を管理し、CSVデータなどによって出荷指示を行います。
通信販売やECサイトからのオンライン決済だけでなく、電話による注文など、さまざまな販売チャネルに対応しなければなりません。
そのため、受注処理に関しては、コールセンターに集約されているケースが多い傾向です。
2-4.ピッキング・流通加工
ピッキングとは、出荷指示を受けて、在庫から必要な数量の商品を取り出すこと。
物流センターや倉庫では、多くの商品を保管しているため、倉庫から必要な商品数を都度取り出さなければなりません。
最近では物流センターにおいて、自律移動のできるモバイルロボットの導入も進み、従業員によるピッキングの負担軽減に役立てられています。
もちろん、ピッキングの自動化については、普及に時間がかかりますが、今後は人とロボットによる共同作業も増加するでしょう。
大型商品の場合は、フォークリフトや台車を利用して、ピッキングしなければならず、多くの人的資源が必要です。
なお、商品によっては、ピッキングの後に製品の組み立てや箱詰め、ラベル貼り、値札付けが必要な場合もあり、これらを流通加工と呼びます。
2-5.梱包
検品を終えた商品を発送するためには、梱包をしなければなりません。
商品が顧客に届くまでの間、衝撃や傷から守るため、必ず緩衝材を入れ、梱包する必要があります。
また、梱包には、クーポン券の差込やパンフレットなど、商品によってさまざまな工夫が必要。
梱包が乱雑であれば、顧客からの信用失墜につながりかねませんし、商品を取り出しやすい梱包も問われます。
このように、梱包1つとっても顧客の評価が左右されるため、重要度の高いフローです。
2-6.発送
梱包した商品を配送業者の集荷に合わせて、受け渡します。
宅配業者は、受注処理の際に作成した個人情報を利用して、顧客の元へ商品を届けます。
当然ですが、商品を発送した際は、事業者が発送完了メールを注文者に送り、配送されたことを伝えなければなりません。
このようにフルフィルメントには、大きく分けて6つの業務フローがあります。
この他にも、決済・返品対応・クレーム対応など、事業者によっては、さまざまな業務を担います。
3.フルフィルメント外注で知っておくべきメリットとデメリット
通信販売・ECサイト事業者が、フルフィルメント業務を自社で対応する場合、ご紹介した通り、設備投資や人材確保など多くの経営資源を投下しなければなりません。
しかし、予算に限りがある事業者にとっては、フルフィルメントを自社で対応することは困難。
そこで、フルフィルメントの外注が検討材料にあげられます。
ここでは、フルフィルメントの外注で知っておくべきメリットとデメリットについて、具体的にご紹介します。
3-1.フルフィルメントのメリット
フルフィルメントにおける主なメリットは、次の通りです。
・商品企画・マーケティングなどコア業務に集中できる
・物流品質を安定的に維持できる
・フルフィルメントへのコストを抑えて業務拡大可能
フルフィルメントには、お伝えした業務フローでもおわかりいただける通り、取り扱う商品点数が増加するほど、商品管理が煩雑化します。
そのため、設備投資や人材確保、業務フローの見直しなど多くの経営資源を投下しなければなりません。
フルフィルメントを外注化できれば、このような多くの負荷を軽減でき、商品企画やマーケティングなどコア業務に集中できます。
また、リソース確保の懸念から、商品点数拡大に業務フローや設備、人材が追いつかず、物流品質が低下する場合もあります。
しかし、外注化であれば、設備投資もリソース確保も、全て専門に対応していますから、商品点数の拡大によって、品質低下に右往左往する必要がありません。
さらに、自社でフルフィルメントを対応するとなると、人員増加や設備投資に都度コストがかかりますが、外注化なら業務負担を抱えることなくコストも抑えられます。
3-2.フルフィルメントのデメリット
次にフルフィルメントの外注化で考えられるデメリットは、次の通りです。
・外注化することで物流状況の把握が困難
・自社にノウハウが蓄積しない
・場合によってはお客様との接点が減少する
自社で物流管理を行っていれば、受注した商品のキャンセル状況や顧客の要望がリアルタイムで反映されます。
しかし、フルフィルメント会社に外注すると、受注状況やキャンセルの申し入れなど、顧客に関する情報の反映にタイムラグが発生します。
商品の返品対応に時間がかかってしまったということがないように、外注に依頼した場合にも、密に連携を取るなど工夫が必要。
また、物流業務を自社で担う場合、業務フローの見直しや設備の改善など、さまざまな物流ノウハウが蓄積します。
しかし、フルフィルメント会社へ外注してしまうと、当然ですが、それらのノウハウは蓄積されません。
ノウハウの蓄積も考慮したいのか、それとも、ノウハウよりもリソース拡大を最優先事項にするのか、天秤にかける必要があります。
なお、フルフィルメント会社によっては、受注から発送までの業務フローの外注だけでなく、関連したカスタマー対応も可能なケースが存在します。
カスタマー対応までお任せする場合には、顧客からの貴重な意見を得る機会も減少してしまうかもしれません。
特に、顧客の意見や情報によって、商品開発のヒントが得られる場合もありますから、顧客との接点をどのように構築するのか検討しておく必要があります。
このように、フルフィルメントには、コスト削減、コア業務への集中など、非常に多くのメリットがありますが、デメリットにも注目しましょう。
まさに、物流とコア業務の選択と集中が問われます。
4.フルフィルメント会社を選ぶ際のポイント
実際にフルフィルメントの外注を検討する場合の、フルフィルメント会社を選ぶポイントについて解説します。
4-1.外注化の目的を明確化する
自社でフルフィルメントを外注する目的があやふやだと、サービス会社選びにも迷いが生じます。
具体的には「物流の業務負担軽減」が目的なのか「受注から配送までのスピード化」が目的なのか、それによってサービス会社選びが変わります。
まずは、フルフィルメントの外注を導入する目的を整理しましょう。
4-2.対応範囲で比較する
一口にフルフィルメントの外注化といっても、生鮮食品など温度管理が必要な商品も取り扱える会社、カスタマーサポートまで対応可能な会社などさまざま。
フルフィルメント会社を選ぶ際には、自社で取り扱う商品や外注化の目的から、対応範囲も比較してみてください。
4-3.サポート体制
フルフィルメント会社を選ぶ際には、サポート体制も比較検討しましょう。
注文から配送まで、ワンストップで対応してもらうわけですから、クレームへの対応、商品の破損など予めリスクヘッジが必要です。
顧客との万が一のトラブルを想定し、どのような対処法、サポートをしてもらえるのか事前に確認しておきましょう。
5.フルフィルメント by Amazonとは
フルフィルメントのアウトソーシングを依頼できる会社は、非常に多くありますが、そのなかでもAmazonが提供している「フルフィルメント by Amazon」が有名です。
ここでは、 フルフィルメント by Amazonの概要と特徴、業務範囲、料金について詳しくご紹介します。
5-1.概要と特徴
フルフィルメント by Amazonは、頭文字をとって「FBA」とも呼ばれ、Amazonが出品者から在庫を預かり、商品が売れた場合に、梱包から発送までを行うサービス。
Amazonは、フルフィルメント専用の倉庫を所有しており、24時間365日、スピーディーに対応可能です。
FBAを利用するためには、Amazonの出店サービスに登録し、商品を用意、Amazonの指定どおりに納品します。
FBAを利用することで、出品する商品をAmazonプライムの対象商品として、掲載できるため、顧客からの信頼性もアップ。
さらに、配送特典も付けられ、お急ぎ便などにも対応します。
事業者、顧客双方にメリットの多いフルフィルメントです。
また、商品の保管、梱包、発送だけでなく、カスタマーサービスも請け負っているため、コア業務に集中できます。
5-2.業務範囲
商品の保管、梱包、発送、カスタマーサービスまで対応しているFBAですが、だからといって業務が必要ないわけではありません。
具体的には、出品用のアカウント作成、商品の情報登録、発行されたバーコードと納品書を商品と同梱し、FBA専用倉庫へ発送するなど。
作業自体は単純ですが、商品点数が多いほど、FBA倉庫への納品作業も増加しますので、一定のリソースは必要です。
5-3.料金
気になる「フルフィルメント by Amazon」の料金ですが「小口出品」「大口出品」のプランによって異なります。
小口出品
小口出品は、毎月49点まで商品を販売でき、商品ごとに費用がかかる形態です。
商品1点につき、100円と販売手数料、FBA配送代行手数料がかかります。
販売手数料については商品のカテゴリーによって異なり、FBA配送手数料については、梱包サイズによって変動します。
大口出品
大口出品は、毎月4,900円と一定額で利用できるプランで、月49点以上の商品を販売する事業者におすすめです。
小口出品では、対応不可だった「一括出品で時間を節約する」「フィード、スプレッドシート、レポートを使って在庫を管理する」など、さまざまな機能が利用可能。
なお、販売手数料やFBA配送代行手数料は、小口出品と同様です。
6.フルフィルメント会社一覧で比較
6-1.アートトレーディング株式会社
ECサイト制作から物流まで、一貫対応。
商品の撮影、受注代行、在庫管理、出荷業務、商品の保管まで、ワンストップで依頼可能です。
フルフィルメントセンターも保有しており、1日出荷点数10点でもご依頼できます。
6-2.株式会社スクロール
出典:株式会社スクロール
通販物流一筋で35年以上の実績を有し、通販代行・システム構築を主軸として、物流代行・受注代行・決済代行・EC運営代行と、幅広く展開されています。
通販支援企業は750社以上、月間出荷件数は120万件以上を誇ります。
6-3.株式会社イー・ロジット
出典:株式会社イー・ロジット
株式会社イー・ロジットは、フルフィルメント完全対応で、受注や発送だけでなく、カスタマー代行、撮影、システム自動連携、薬事対応までサポート。
東京、埼玉、千葉、大阪に7つの物流センターを運営しています。
6-4.株式会社 音研
出典:株式会社音研
3,000パレットの収納能力、緊急の生産から、個別発送まで対応しています。
また、トラックターミナルも40フィートコンテナ対応で、海外輸入品の検品、保管業務もサポート。
6-5.カンタムソリューションズ株式会社
入荷、在庫管理、ピッキング、梱包、伝票作成、出荷、配送追跡などフルフィルメントにおける業務フローを、全てお任せ可能。
Webベースのシステムから物流業務を一括管理し、海外通販の物流業務を一貫対応してくれます。
6-6.株式会社エスプールロジスティクス
エスプールロジスティクスでは、受注処理から出荷、返品処理、返金処理まで一連の業務をお任せできます。
物流センターは、首都圏に集約しているため、スピードが求められるEC業界にも対応しています。
6-7.株式会社 千趣会
出典:株式会社千趣会
通販サイトで有名な「ベルメゾンネット」を運営している株式会社 千趣会。
通販事業で培ったノウハウを活かし、フルフィルメントサービスも展開しています。
通販ノウハウに加えて、年間2,000万個の出荷を実現。
6-8.株式会社グロップ
出典:株式会社グロップ
40年以上の物流ノウハウを用いて、商品入庫、検品工程、アッセンブリー工程、保管、出荷・配送まで、ワンストップで対応します。
6-9.トランスコスモス株式会社
出典:トランスコスモス株式会社
トランスコスモス株式会社が独自に開発、カスタマイズを行った受注管理・ロジスティクス管理システムを軸に、入荷、保管、梱包、出荷のみならず流通加工も対応。
6-10. SBロジスティクス株式会社
ロボットやAIなど最新技術を導入した物流センターにより、24時間365日安定的な出荷を可能にしています。配送のリードタイム短縮も実現。
7.まとめ
本記事では、以下の項目をまとめてご紹介しました。
・フルフィルメントの概要
・フルフィルメントの業務の流れ
・メリット、デメリット
・フルフィルメント会社を選ぶ際のポイント
・フルフィルメント by Amazon
・フルフィルメント会社一覧
フルフィルメントの外注を検討中の場合には、利用目的を明確にし、メリット・デメリットを把握した上で、導入を判断してみてください。