有名番組で宣伝してもらうテレビPR攻略法 ~あの人気番組はこう攻めろ!~

本コラムでは、有名番組で取材してもらうためのテレビPR攻略法を
具体的に紹介していきます。

玉木 剛

第1回「企業広報の憧れ テレビ東京『カンブリア宮殿』製造メーカーは、放送後売上1億円以上アップ!」


■はじめに

第一回目は、企業広報の憧れでありテレビ露出の最終目標とも言うべき、テレビ東京「カンブリア宮殿」(毎週木曜 22:00~22:54)の攻略法についてご紹介したいと思います。

「カンブリア宮殿」は2006年にスタートした経済ドキュメンタリーで、企業のこれまでの歩みと現在の奮闘ぶりを描いた人気番組です。毎回一社だけにスポットライトを当て一時間かけて紹介するため、PR効果がとても高く、放送後には大きな反響が期待できます。また、番組に取り上げられるのは名の知れた大企業や業界で躍進している勢いのある企業が多く、「カンブリア宮殿」に取り上げられること自体が企業にとって大きなステータスであり、ブランディングにも繋がります。実際に弊社で取材獲得をサポートした製造メーカーは番組で46分間取り上げられ、広告換算額は8億円以上。売り上げが1億円以上アップし、他番組からも取材依頼をいただけるようになりました。

ですが、影響力が高いということはそれだけこの番組に取り上げてもらうのは難しいということでもあります。番組には多くの企業から売り込みがあり、その中で実際に取り上げられるのはほんの一握りに過ぎません。
そんなハードルの高い番組に取り上げてもらうには一体どうしたら良いのか?番組は何を基準に取材先を選んでいるのか?番組に売り込むプロモート資料には何を書いたらいいのか?企業広報の多くが抱えているであろう、そんな疑問にお答えいたします。

 

■知名度が高く、業界上位の企業が選ばれやすい
番組担当者が取材先を選ぶ際にまず最初にチェックするのが、「知名度」が高い企業かどうかということです。「カンブリア宮殿」だけに限った話ではありませんが、テレビ番組は「視聴者」に向けて番組を作っており、視聴者に興味を持ってもらえるかどうかを重視して番組を制作しています。世の中に山ほどある企業の中で視聴者が興味を持ちやすい企業となると、必然的に知名度が高い企業が選ばれやすくなります。

ただ、知名度と言っても社名が知られていなければいけないというわけではありません。扱っている商品やサービスが視聴者にとって馴染みがあるものであったり、メディアで話題になっているようなものであれば、社名はあまり知られていなくても問題ありません。

また「業界内順位」も重要視されます。理由は知名度と同様で、業界10位の企業よりも1位の企業の方が視聴者に興味を持たれやすく、視聴率に繋がりやすいためです。実際に番組担当者にアタックすると、「知名度」や「業界内順位」を理由に不採用になってしまうケースは少なくありません。

 

■何かしら「課題」を抱えていることが重要
これは意外に感じる方が多いかもしれませんが、実は全てが上手くいっている企業は取材先として選ばれません。何かしら課題を抱えていることが重要で、その問題をどのように解決していくかという「課題解決へのプロセス」を描くことが番組の肝になっています。

例えば飲食チェーンを取り上げる場合、繁盛している店の様子や美味しそうな料理を撮影してもネタにはなりません。新業態店舗のオープンや海外進出などタイムリーな動きがあり、そこに人々の奮闘する様子があって初めてネタとして成立するのです。

「カンブリア宮殿」はCMを抜いた約45分間の放送時間のうち、35分を企業密着取材VTR、残り10分をスタジオでの社長インタビューで構成していますが、この35分のVTRの多くを占めているのが「課題解決のプロセス」で、3か月~半年もの長い期間をかけて取材しています。

この「課題解決のプロセス」をいかに面白く描けるかが番組作りの上で重要で、もし何も課題を抱えていない企業であればこのような「課題解決のプロセス」を描くことができず、ドキュメンタリー性の無いただの企業紹介VTRになってしまいます。

 

■VTRは企業の「過去」「現在」「未来」の3ブロックで構成される
番組のVTRは主に「過去」「現在」「未来」の3つのブロックで構成されています。
「過去」はその会社がどのように誕生し、どのような経緯を辿って今に至っているのかという会社の歴史で、これまでに何を成し遂げてきた会社なのかが重要です。

「現在」は先ほど述べた「課題解決のプロセス」にあたる部分で、企業が今どのような状況に置かれているか、どんな課題を抱えているのか、それを解決するために何をしているのかということです。課題は「売り上げ」に関するものに限らず、「人材育成」「社内制度」「業務の効率化」「アウトソーシング」など様々ですが、課題解決のために人が奮闘する様子が描けるもので、ある程度長い期間をかけて密着取材ができるような内容が理想的です。番組に取り上げられるかどうかはこの「現在」ブロックの内容次第と言っても過言ではありません。

「未来」は会社のこれからの展望で、課題解決の先に描いているイメージや理想像についてです。

番組に売り込む際には、この「過去」「現在」「未来」の3つの項目を明確にしてから担当者にアタックするようにしてください。

 

■番組が好む4つのキーワード
番組にアタックする上で「課題解決のプロセス」が重要であることはわかったけれど、自社に何が当てはまるのかよくわからない…そんな方も多いと思います。そんな時には過去に放送された内容を参考にするのがおすすめです。実は過去のタイトルを分析すると、同じようなワードがよく使われていることがわかります。よく使われるということは、それが番組が好む内容であり、それに準じることが取材獲得への近道でもあります。

(1)「革命」「改革」
これまでの社内体制や業務内容など既存のシステムを変更した企業や業界の常識を覆すような画期的な取り組みを行っている企業を取り上げる際に使われています。
例)「拾う」から「選ばれる」へ 老舗3代目のタクシー革命!(日本交通)
  老舗とんかつチェーンの“人気の秘密”と“知られざる企業改革”(井筒まい泉)

(2)「挑戦」
これまでと異なる新しいビジネスをスタートさせたり、海外に初めて進出するなど、困難を伴う新たなチャレンジをしている企業を取り上げる際に使われています。
例)大躍進!ららぼーと&都市開発 デベロッパー王者の飽くなき挑戦!(三井不動産)
  「安い・快適・安全」バス業界に新風を吹き込む風雲児の挑戦(WILLER)

(3)「逆転」「復活」
落ち込んでしまった業績を立て直すために奮闘し、業績をV字回復させたような企業を取り上げる際に使われています。
例)秘伝のレシピで一発逆転!串カツ田中の経営戦略の全貌(串カツ田中)
  目の健康を売る!苦境メガネチェーン華麗なる復活劇(メガネスーパー)

(4)「サバイバル」
厳しい生き残り競争の中で、ユニークな取り組みによって生き抜いている企業を取り上げる際に使われています。
例)機能性の追求を武器に!スポーツメーカーのサバイバル経営(デサント)
  サバ専門の外食から養殖業まで!サバ一本にかけるサバイバルベンチャー(鯖や)

 

■プロモート資料に何を記載すべきか?
番組にアタックする際に用いるプロモート資料にはどんな情報を載せれば良いのか、また枚数はどれくらいにするのが良いのか、わからない方も多いと思います。プロモート資料は番組担当者が企業を判断する上でとても重要なものですので、いかに番組に則した内容でわかりやすくまとめられるかがポイントです。

(1)タイトル
タイトルはまず一番最初に目に入る部分であり、ネタとして面白いか面白くないかのファーストインプレッションが決まる重要な項目です。先述の「革命」や「挑戦」などの番組が好むワードを使い、実際に番組で自社が放送されたらどんなタイトルになるかを想定して付けるようにしてください。

(2)社長(会長)プロフィール
番組ではスタジオに社長または会長を招きMCとトークを行うブロックがあります。会社を代表する人物の顔写真とプロフィール、簡単な経歴を載せてください。

(3)会社概要
一般的な会社概要の他に業界内の順位やシェア、売上高の推移なども載せてください。

(4)会社の歴史
会社の設立からこれまでの歩み、何を成し遂げてきた会社なのかをコンパクトにまとめて載せてください。これがVTRの「過去」ブロックに該当します。

(5)会社の課題と解決策
いま会社がどのような課題を抱えていて、それを解決するためにどんな取り組みを行うのかという、VTRの「現在」ブロックに当たる項目です。企画の肝となる最も重要な項目ですので、大まかなスケジュールやどんな映像が撮影できるのかなど、取材を意識した具体的な内容まで載せられると番組担当者も企画のイメージがしやすくなると思います。

(6)今後の展望
課題を乗り越えた先に描いている会社のイメージや理想像で、VTRの「未来」ブロックに
該当する項目です。

プロモート資料はいろいろな情報を盛り込みたくなってしまうものですが、
あまり文字数が多すぎると内容が伝わりにくくなってしまいます。

上記のようにポイントを絞り、A4用紙2,3枚で簡潔にわかりやすくまとめるようにしてください。

 

■まとめ
「カンブリア宮殿」は多くのビジネスマンが視聴している、とても影響力が高い人気番組です。
取材を獲得するのは簡単ではありませんが、番組の特徴や傾向を研究し、番組の構成に合わせた資料を作成してアタックするようにしてください。

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