マーケティングの巨星たちが教える、21世紀型マーケティングとは

「マーケティングで世界をより良く」をスローガンとする、ワールド・マーケティング・サミット発起人のフィリップ・コトラー教授のインタビューなどを紹介します。

ワールド・マーケティング・サミット・ジャパン編集部

第三回:「現代のマーケティングの父」フィリップ・コトラー教授に聞く(下)

 

 第2回に続いて、マーケティングホライズン編集委員長・丸の内ブランドフォーラム 代表 片平秀貴氏による、フィリップ・コトラー教授へのインタビューを紹介させて頂きます。

 

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マーケティング3.0は「回りとともに幸せになること」

片平 先生は、最近ヘルマワン・カルタジャヤ氏などと一緒に「マーケティング3.0」という新しい考え方のご本を出されました。人間の情熱とか感情がマーケティングの中心になるべきだと説いていて、ある意味、ポジショニングやセグメンテーションを前面に置いたマーケティング2.0と対立する考え方のようにも思えますが。

コトラー 3.0が2.0と対立した概念だという話は今まで聞いたことがありませんでした。そこで私たちが言っているのはこういうことです。昔のマーケティング(マーケティング1.0)は主に機能的な側面に注目した言わば左脳的なものでした。機能的に同じ商品でも片方だけを好きになることがあります。そのような感情的側面にも注目したのが2.0です。でも、これは所詮会社と顧客の関係ですね。マーケティング3.0はそれを超えて環境のこと、地球のことを考えるべきだと説いているのです。Sharing and caring (分け合い、心配しあう)という言葉を使っていますが、これがあるかないかです。


 企業はブランドを育てていますが、同時に(回りに対して)どのような立場をとるかをきちんとしなければいけません。Having a brand (ブランドを持つこと)だけでなくTaking a stand(どのような立場をとるか)が重要なのです。企業の価値観が問われてきているのです。人々のトータルな生活の質の向上、すなわち、より良い世界の創造にどう貢献しようとしているのかが問われています。これが、マーケティング3.0の世界です。地域や地球環境への貢献を仕方のないコストととらえる向きがありますが、それではだめです。企業が本心でそう信じて行動しているかが大切なのです。もしそうなら従業員も元気が出るでしょう。回りの供給業者や流通業者もその大義に動かされるはずです。

 

片平 なるほどよくわかりました。時間もなくなりましたので最後にお聞きします。米国のビジネススクールは将来の経営者の再生産機関です。そこでは今おっしゃったような、自分たちだけでなく地球環境をはじめとする自分たちの回りも含めて幸せにしようという、マーケティング3.0的な人たちが育たなければいけません。一方、そのような人を育てる教官の採用を見ると論文の実績に基づいた旧態依然としたやり方が主流になっています。これでいいのだろうかと思います。

 

コトラー どうやってマーケティング3.0的なものをビジネススクールの教官採用の基準に組み込むかは考えたことがありませんでした。いまでも採用基準はPhD論文の優秀さで多分にテクニカルなものです。社会とか持続可能性について深く考えているかどうかとは関係ありませんね。ただ、特にマーケティングの分野では何年も教えていくうちに必ず哲学的な面を深く考えるようになるものです。でも難しい問題ですね。

 

インタビューを終えて

 インタビューを終えて改めて強く感じたのは、今われわれが「マーケティング」と呼んでいる仕事領域とそれを研究対象とする学問領域は、もしコトラー教授がいなかったら今のようなかたちでは存在しなかったに違いないということです。教授も「教科書として使う教官たちに自尊心を植え付けたこと」と言っているように、マーケティングという領域の格をファイナンスとか経営戦略と同等のレベルに上げたのは教授の最大の功績だと思います。そのおかげで米国でも日本でも職場でも大学でも「何のご担当(専攻)ですか」と聞かれて胸を張って「マーケティング」と答えられるのです。


 もう一つ印象的だったのは、教授の強い好奇心です。最初のご挨拶のところからすっかり打ち解けたのはいいのですが、こちらがインタビューするはずが逆に、「なぜ日本には強いマーケティング部門が育たないのか」などなど、教授からの質問の嵐にさらされてインタビューとしては全く異例の展開となりました。

 

この部分もとても面白いのですが紙幅の都合で割愛させていただきました。この強い好奇心とそれに基づくご自分の知の拡張と深耕こそが何十年にもわたって世界をリードし時代をリードする仕事を続けていられる原動力なのに違いありません。まさに「イノベーションで勝つ」はコトラー・マーケティング論に最も当てはまるのではないかと思うのです。今回は、コトラー教授、本当にありがとうございました。

 

  
                                                                            Interview & text  片平秀貴
(マーケティングホライズン編集委員長・丸の内ブランドフォーラム 代表)
「フィリップ・コトラー マーケティング・フォーラム 2014」特集号から引用

                         

 

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以上、フィリップ・コトラー教授インタビュー後編でした!
なお、フィリップ・コトラー教授が今回、24~25日に「ワールド・マーケティング・サミット・ジャパン 2014」で講演されます。

 

9月24~25日の2日間、世界各国のマーケティングの第一人者が集結する「ワールド・マーケティング・サミット・ジャパン 2014」。
日 本の最新マーケティング事例を含むケーススタディや、世界各国から招く著名なスピーカー達によるディスカッションなど、広告・マーケティング業界にいる方 必聴のコンテンツが多数用意されているとのこと。

 

 

今回、広告ニュースで本コラムをご覧頂いている方にも、参加費用2万円引きの特典をご用意頂きました。以下に詳細を記載させて頂きます。ご興味がございましたら是非お申込みください。

 

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日程:2014年 9月24日(水)10:00~18:45(予定)
        25日(木)9:30~17:40(予定)
会場:グランドプリンスホテル新高輪「北辰」
登壇:フィリップ・コトラー
   デビッド・アーカー
   アル・ライズ
   ドン・シュルツ
   高岡浩三(ネスレ日本代表取締役社長兼CEO)
   新浪剛史(サントリー顧問)
   吉田忠裕(YKK代表取締役会長)
   魚谷雅彦(資生堂代表取締役執行役員社長)ほか

参加お申し込みはこちら:
→ https://ssl.worldmarketingsummit.jp/apply/
  ※ 広告ニュース読者様は参加費が2万円引きされます

     お申込時、「参加区分」で「ファインドスター広告ニュース」を選択して下さい。

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