“加藤公一レオ”の「広告業界的ぶっちゃけ話」
通販王国と言われる九州で、一貫してダイレクトマーケティング型ネット広告に従事し、ネット広告の第一人者と言われる株式会社売れるネット広告社の加藤公一レオ氏の広告業界的“辛口コラム”
第15回:広告業界が「数字」で闘わない本当の理由
~小が大を喰うことが許されない日本のビジネス社会に物申す!~
~既得権益・年功序列をぶっ壊したダイレクトマーケティング~
まず、当たり前のことであるが、広告の目的は、商品を売ること。つまり、広告の指標はどこまで言っても「レスポンス」と「LTV」であるべきだ!ダイレクトマーケティングが今後の広告業界の未来の主軸となる以上、どこまで言っても「数字」を出したものが絶対的な王様なのである!
しかし、不思議なことに、未だに広告業界は「数字」を曖昧にする文化が根強い。ブランディングという名のTVCMが多いし、本来レスポンスを刈り取るためのネットという媒体においても、ブランディングの理論にもって行こうとして、「数字」は曖昧にされ続けてきたのだ。
「数字」で勝ったものが絶対的な王様であるダイレクトマーケティングが広告の主軸となっているのにもかかわらず、なぜ未だに広告の指標はCPAやCPO、LTV、ROASが当たり前になっていないのか? 私が思うその理由は、ズバリ、「既得権益」と「年功序列」により、小が大を喰うことが、日本のビジネス社会において許されていないからだ。
今回のコラムでは、広告の指標がいつまで経っても「レスポンス」と「LTV」といった「数字」が常識にならない2つの理由、業界全体の思惑やダイレクトマーケティングの本質、日本のビジネス社会の特性と広告の未来について、“タブー”も含めて大暴露していきたいと思う。
●そもそも、日本のビジネス社会の前提って?
本コラムのメインテーマに入る前に、そもそも日本のビジネス社会がどうなっているかについてお伝えしよう。
まず、あまりに夢がない発言かもしれないが、日本のビジネス社会には、本質的に「実力主義」が存在しない。組織レベルで言うと、日本の商売では大手絶対主義だし、個人レベルで言うと、課長が部長を追い越すことなんてよほどのことがない限り無理である「年功序列」の文化が根強いのだ。
どういうことか。例えば、広告業界でナンバーワンに君臨し続けている大手広告代理店。これまで広告主が大手広告代理店と取引してきた理由は、実績と言うよりも大手ネームバリューがある広告代理店と取引した方が「安心」といった心理的要因の方が実は大きい。
TVCMを作りたいけど…TVCMといえば大手広告代理店に任せた方が「安心」!と言った形である。これがまかり通ってきたのは、こうしたブランディングの領域はとりわけ「数字」を明確にされてきたわけではない、つまりTVCMの効果が不明確であるとされてきたからだ。よく分からない広告代理店に発注するよりも、大手ネームバリューのある広告代理店と取引した方が「安心」という心理である。
つまり、日本においてはベンチャー企業や中小企業は永遠に大手には勝てない座組である。広告代理店でいうと、2位博報堂、3位ADKは1位に永遠に勝てない仕組みだったのだ。これは広告代理店だけに限らず、例えば不動産や金融業界、自動車業界など、日本のビジネス社会のあらゆる業種でも同じである。「小が大を喰うこと」は、構造的に不可能なのである。同業種のランキングにおいて、よほどのことがない限り、「実力主義」は存在しない。
個人レベルにおいても同様。悲しいことだが、日本のビジネス社会では“実質”「年功序列」の文化が根強いため、例えば、課長がどれだけ成果を上げたとしても、部長を追い抜いて出世することは可能性としては低い。私自身、超大手商社出身なので、このことは痛いほど身に染みている。上のポストが空かない限りは、どれだけ成果を上げたとしてもそもそも評価制度が「数字」ではなく「年齢や勤続年数」であったりするのだ。
つまり、まとめると、日本のビジネス社会においては企業間であれ、個人レベルのプレイヤーレイヤーであれ、小が大を喰うような逆転劇が許されない。いわゆる既得権益を持つ大手企業・上司にはどうあがいても勝てない仕組みになっているのだ。
しかし、これをぶち壊す概念が日本の広告業界の主流となっている。
そう、それがネット広告とダイレクトマーケティングの台頭なのだ!
●日本のビジネス社会を揺るがした「ダイレクトマーケティング」の台頭
広告の費用対効果はあらゆる場面でデジタル化されたので、これまで曖昧にされてきた「数字」が明確になった。これにより、日本のビジネス社会で当たり前とされてきた既得権益を守る動き、個人プレイヤーレベルでの下剋上が不可能であった仕組みに一石を投じたのである。
20年前までは、広告は大手広告代理店に任せて、予算を消化するためのブランディングだけでいいといった潮流はもはや現代に存在しえない。リーマンショックに始まる世界的な不景気により、広告は軽視から「投資」となってきているのだ。
今となってはもはや当たり前だが、広告主が求めるものは、広告費に対していくら売上が上がったか、といった「数字」であり、効果のない広告は無意味なものとなった。その流れに乗って、今飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長しているのが、ダイレクトマーケティングを主軸としたネット広告の勢力であり、これまでタブーとされてきた、費用対効果を追い求める「徹底的な数字化」文化の台頭なのである。
ネット広告では、リアルタイムで全てが数字化される。つまり、これまで曖昧にされ続けてきた「数字」で結果を残したものが絶対的な「王様」である。このことは、広告業界、延いては、日本のビジネス社会に逆転現象をもたらした。つまり、小が大を喰うことが本来許されない既得権益をぶち壊す起爆剤となったのだ!
例えば、私が代表を務める『売れるネット広告社』は従業員数30名前後のベンチャー企業であるが、徹底的に「数字」で闘っているので、はっきり言って、広告業界ナンバーワンに君臨し続けてきた大手広告代理店から仕事をガンガン奪ってきた。繰り返しになるが、ネット広告とダイレクトマーケティングの世界では、「数字」を出したものが絶対的な王様。広告費を1億円預けて売上が5000万円しか返ってこない広告代理店と、1億円預けて売上が3億円で返ってくる広告代理店、どちらに大切な広告費を預けるのかは明白である。
個人プレイヤーレベルでも同じである。ネット広告の世界では、会社のネームバリューではなく、「あの広告マンに広告費を預けたら売上で2倍・3倍で返ってくる」といった指名で仕事を取れるような広告マンがたくさん現れた。そうした優秀な広告マンが、年功序列の会社に嫌気を差して次々に独立し、起業してきたことにより、この業界は会社の規模にとらわれず大発展してきたというのは言うまでもない。
サイバーエージェント、オプト、セプテーニなどを始めとしたネット専業広告代理店の数も、日々増え続けている。これは実は、他の業界ではあまりありえない事象である。不動産や金融業界で新しい会社が次々に立ち上がり、ビジネス成功チャンスをつかむのは難しいのだ。「数字」で勝負できる世界だからこそ、「数字」で勝てれば、小が大を喰う成功ストーリーを歩めるのである。
●既得権益を脅かされそうなエリート連中が行ったことこそ、「数字」の曖昧化
このように、徹底的に数字化される「ネット広告×ダイレクトマーケティング」の世界の市場拡大は、従来の日本ビジネス社会において、既得権益をぶっ壊すタブーとなってしまった。だからこそ、これまで必死に業界を牛耳ってきたいわゆるエリート層は、後手に回って必死で既得権益を守ろうとしているのである。それこそ、「数字」の曖昧化なのだ。
例えば、CPA至上主義やブランドリフト、レスポンス効果を否定するようなスタンスである。大手広告代理店が発表する市場調査や小難しい理論を見てみると、
☑短期的視点なCPA至上主義の『刈取り広告』はもう古い!
☑これからは中長期視点での『ブランディング広告』が重要だ!
☑ブランドの世界観のトーン&マナーを統一させることがマーケティングの価値でしょ!
☑カスタマージャーニーでしょ!カスタマーエクスペリエンスでしょ!
☑やっぱマーケティングファネルの上部に投資しなくちゃ!
こんな主張がツラツラ並んでいるのだが…私から言わせると、これがまさに超大手メーカー・広告代理店が「数字」で闘っているベンチャーを攻撃するような思惑の塊でしかない。
はっきり言うが、広告の目的は商品を売ること。広告費に対して、いくら売上が上がったかと言った「数字」が全て!ぶっちゃけ、こうした主張を見るたびに、あらゆる手段で「数字」を曖昧にする業界の思惑がはびこっているなとしか思えないし、逆に「数字」で闘う『売れるネット広告社』のようなベンチャー企業や中小企業が怖いから逃げているとしか思えない!!!w
確かに、「数字」の責任を負うのは、とても大変なことなので、気持ちも分からなくはない。これまでは既得権益・年功序列に守られて続けてきたわけだし。
企業間の闘いとしても、「数字」で勝負してくるベンチャー企業や中小企業への恐怖、個人プレイヤーの闘いとしても、「数字」で勝負してくる部下たちに、「数字」で勝ち続けることは大変なことなのだから…。
「数字」が明確になると、これまで以上に責任を追われる、責任が重くなる。言い訳なしに、「数字」だけがKPIになると、優秀な課長が無能な部長を追い越せる逆転劇も可能となるので、それは絶対に阻止したいため、「数字」は曖昧にしてきたのが、この業界の思惑であり、広告の指標が「数字」と断定されない理由なのだ。
●クライアントのために、広告業界の未来のために…広告マンは「数字」で闘え!
既得権益・年功序列が壊れるのを阻止するために必死になっているエリート層へ。私が声を大にして言いたいのは、一つだけ。
“広告マンであれば、「数字」で闘え!”
ということである。
「数字」で語るだけが全てではない!といった色んな弁明・言い訳が聞こえてきそうだが、はっきり言ってこれだけデジタルが発達している時代なのに、「数字」を明確にできないことなんて存在しない!TVCMのブランディングだって、レスポンスの刈り取りで数字化できるし、広告の本質は、「売ること」。費用対効果と売上がどれだけ上がったか、これが全てなのだ!
ぶっちゃけ、「数字」で勝負されると「負けるかもしれない」といった恐怖から、「数字」を曖昧にしているようにしか見えない。しかし業界トップがこのようなスタンスでは、広告業界のこれ以上の発展はしないと断言する。
ダイレクトマーケターとして「数字」で闘え!CPA/CPO/LTV/ROASなど、広告の重要指標を全て明確にして、「数字」で闘う広告マン・広告代理店が当たり前の業界の文化となってほしいと本気で思っている。
広告業界の未来予想図を考えると、今後「ネット広告×ダイレクトマーケティング」が伸びるのは必至である。世界的にもそうなってるのに、このままの日本のビジネス社会のままだと、絶対に世界と闘えないし置いていかれるのではないかと私は危惧している。
よく考えると、スポーツの世界だって、プロ野球・メジャーリーグは年功序列・既得権益なんてなく、打率・守備率といった「数字」で結果を残したものだけが生き残っている。引退したイチローがトッププレイヤーとして君臨し続けたのは、既得権益・年功序列があるからではない。「数字」で結果を残し続けてきたからである!
日本の広告業界も、「数字」を曖昧にした既得権益・年功序列を廃止して、「数字」をベースとした実力で闘うべきだ。個人レベルのエリート層も、「数字」が明確になると、これまで以上に責任を追われる、責任が重くなるが、それがクライアントの成功を導くし、業界全体を活性化することに繋がるはずだからである。
以上
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