10億超えたらはじめよう、通販CRM大学

世界最高峰のダイレクトマーケティングアワード「DMA国際エコー賞」3冠、「全日本DM大賞」19冠。
100社以上のEC&通販ビッグカンパニーのCRMコンサルティングを手掛けるDM0ことダイレクトマーケティングゼロ。
今、最もアツイ通販コンサル会社である。
全員が「EC/通販メーカー」出身、結果に責任を持つ「成果保証スタイル」という拘り集団DM0の社長である田村雅樹氏のコラムは必見!!

田村 雅樹

第1回:顧客構造を分解してゴールデンルート®を見つけようぜ!

 

CVR・CPA 目標をクリアし、新規顧客数を拡大し、徐々に事業の安定性が増してきた通販会社。そこに立ちはだかる、売上 10 億円以降の成長率ダウンという永遠の悩み。
実はこの問題を解決する手法を年間売上 1,000 億円超えても完璧に持っている会社はありません。もちろん、ボクも完璧じゃありません。
ただ、

「通販メーカーに勤めていたときよりは、CRM 強くなったなぁ」っていう実感を持ってます。

 

あ、ちなみにダイレクトマーケティングゼロは社員全員が「通販メーカー」と「通販コンサルティング会社」を「両方経験している」レアな会社です。なので、「R を使った、有意差を判別するための研究」とか、「部分的ソリューション」とか、「枠売りやシステム売り」とか、あまり責任を持ちにくい仕事はご遠慮してます。

 

そんなわけで、ボクはこのコラムを

 

「社員数 100 人くらいの EC/通販メーカー」にいる「販売促進部」「マーケ部」「CRM 部」あたりの社員さんや部長さん。

「社員数 30 人くらいの EC/通販メーカー」にいる上記部署+経営層」

 

に向けて超実践主義で書きますので、そうじゃない人はスルーしてください。

ついてこい!ってくらいの気持ちで書きます。

 

さて、CRM という言葉で表される、既存顧客に対する継続的なマーケティングとコミュニケーションのトレンドと事例を学ぶ上で、栄えある第 1 回は。。。

「とりあえず、CRM の構造を捉えようぜ」って話。

 

 

 第 1 回:顧客構造を分解してゴールデンルート®を見つけようぜ! 

 

■既存のお客様を鮭的にタグ付して追え!

「とにかく CPO はいいんだけど、LTV が悪い。っていうか LTV ってどうやってよくすんの?」
新規顧客獲得ばかりを重視している会社さんから、よくこんな質問をされます。リスにアフィ、リタゲに DSP。折込に同梱、5 段、インフォマもテスト済。CPO(1 人の顧客の獲得費用)が低いところに新客獲得コストをかけ、クリエイティブのスプリットはガンガンやってる。売上も右肩上がり。

いい感じですね。どこにでもそういう時代があるものです。で、そういう会社さんほど、「いや、CRMもやってるよ」っていうんです。
まず、最初に断言しておきたい。過去、メーカー時代のボクも含め、

 

「CRM をパーフェクトにできてる通販メーカーなんて皆無中の皆無」!!

 

ビッグデータ時代、BI や DMP などのツールで CRM 分析が盛ん。え、御社でも使ってる?では、質問です。「初回購入した方が、どうやって優良顧客になるか、答えられますか?」というより、「あなたの会社にとって理想とする優良顧客って、LTV はいくらで、何%いますか?」

ツールに頼ってばかりだと、何もできませんよ。
そして、新規顧客獲得がうまくいかなくなり、CPO が跳ね上がった時点で、真っ青になるんです。「CRM、ちゃんとやっておけばよかった」ってね。

そうならないためにも、早めに自社の顧客がどういう人なのか、がしがし追っていきましょう。One to one マーケティングという流行りの言葉に惑わされず、まずは似た傾向の人たちをひとくくりのセグメントにして。それが、CRM のはじめの一歩。

 

■RFM 分析は、顧客の行動結果が見えるだけ

顧客のセグメント分析といえば、代表的手法が、ご存じ RFM 分析。3 軸だとわかりづらいので、直近購入日(Recency)と累計購入回数(Frequency)からなる RF 表で顧客を分析する手法を推奨しています。

ま、「そんなのわかってるよ」という会社さんも多いか…。

 

 

RF 表は単純に顧客をプロットする上のような表以外に、「RF スイッチ率」といって月次での顧客の移行率を下記のように%表化する手法もあります。

ボクも実際のコンサルティングの現場でよく使う分析手法のひとつ。
RF スイッチ率を見て、打ち手がパッとわかるようになれば、まずは基礎レベルクリア。
しかし、欠点が 2 つあります。1 つ目は、「R の比重が大きすぎる」欠点。
でも、ボクはそれ以上に「顧客の軌跡=行動ルートが見えてこない」欠点に危惧をおぼえるんです。

 

だって、考えみて。
仮に F2(2 回目購入者)かつ R10(直近 10 か月前購入者)のセルが悪いからといって、何ができますか?「ここに DM 打つのやめようぜ」とか、せいぜいその程度。
F3/R9 時点でどんなコミュニケーション取るべきか、とか、この表を見てもよくわからん。
だいたい F2/R1 から来た人と F2/R12 から来た人を一緒くたにしちゃだめでしょ(笑)

 

幸い全員はじめは新規顧客だったわけです。だから、早い段階から、誰がどれくらい、こういう行動をとってくれたら、どれくらい売上があがる、くらい SIM して、先回りして打ち手を打つ。それが、CRM の神髄じゃなかろうか。

 

そこで、ボクが「ゴールデンルート」分析っていうのを生み出したんです。

 

 

■顧客の行動パターンを先読みできるゴールデンルート分析

ゴールデンルートとは、顧客の理想の育成ルート。

 

顧客の購入ルートを、購入時期・商品・金額、転換時期とか、様々な因子で分解した際に、LTVの高い群が初回購入時から通ってきた、最も特徴的なルートのことなんです。

 

作り方は簡単(嘘)。まず顧客の行動のおおまかなパターンを分岐させながら、デシジョンツリー図で表すだけ。ここでは超簡単な下記の条件で実践!

 

条件)とある化粧品通販会社がありました。そこの化粧品会社の理想の優良顧客像は、定期便コースに入会してくれた人。なにしろ 360 日 LTV は 45,000 円だから。定期会員をゴールにした際のルートがゴールデンルートとなるわけだ。さて、ほかに下記情報があるとして F2(2 回目購入)までをツリーにしてみよう。

 

・新規顧客(F1)は 1,000 円の 1 回お試しのトライアルセットで獲得する
・F2 で、いきなり定期コースに入会してくださる方が 20%いる。
・F2 で単品購入を買う人は 15%いて、LTV は 25,000 円
・もちろん 2 回目を買わない人もいる

 

って、おいおい F1 の LTV が分からないって!?トライアルだけしか買わなかった人の LTV が1000 円なんだから、あとは計算。(20%×45000 円+15%×25000 円+65%×1000 円)/100%で13,400 円。

はい、完成!

今回の場合、一番上の黄色の線がゴールデンルートっていうこと。このルートに顧客を誘導することが売上伸長につながるっていうわけ。
あと、このとき重要なのは、各セグメントの属性、割合、同一条件での 360 日 LTV(この場合は新規受注日を 0 日目とした場合の新規受注額を含めた 360 日間の LTV)を示すこと。

 

さて、ここから分析。各セグメントのボリュームと他との LTV の「ギャップ」を見てみて。一番ボリュームが大きくて、ギャップが大きいのは?そう、2 回目非購入者です。トライアルを買った顧客に対してフォローを忘れていないか、そんな仮説を立てるのです。さらにさらにー!

2 回目購入者を定期購入者のルートに動かせば、1 人あたりの LTV が 44,000 円(45,000-1,000円)上がる。5%動かせば、F1 の LTV が 2,200 円上がる。だから CPO がもっと上がってもいいから、あの媒体にトライできる!なんて、試算もできるわけです。

 

どうです?簡単ですよね?

顧客の行動をとらえるのって楽しくないですか?
あ、ここでついてこられない場合はボクの本を買うか、セミナーに来てください(笑)。

 

実際には、もっといろんな行動パターンがありますよね。単品を 2 品買う方、他の商品を買う方(クロスセル)、他の商品のトライアルを買う方、など。F2 で終わることもないので、分岐もかなり複雑になるのが普通。ざっくりイメージだと下記のような感じ。

ただ、分析は先ほどと同じ「ボリューム」が大きく(10%以上がおすすめ)、他との LTV のギャップが大きいセグメントを見つけるだけ。だから恐れることはなし!

 

今日は初回なんでゴールデンルートを算出するときのポイントを 2 つだけ教えちゃいます。

(1) 自社の「ありがちな顧客の行動パターン」をベースにする。
(2) 受注回数をキーとする場合は、○日以内という感じでありがちな期限を切る。

 

どうですか?これを読み終わったら、さっそく自社データを用いて、ゴールデンルートを作成しよう!次回からそのゴールデンルートを用いて売上伸長のポイントをより具体的に解説するので、それまでの宿題!

 

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