いま、ダイレクトマーケティングの現場では何が起きているのか。

  • ダイレクトマーケティングといえば「通販」を想像する方が多いかも知れませんが、究極的には「個客」への接客です。これらのいろいろな取り組みは通販だけではなく、メーカーや店舗などの様々な業界・業種にもどんどん積極的に採用され始めています。
  • ダイレクトマーケティングの現場でいま何が起きているのか、どういうことをしているのか、現場ならではの視点からいろいろな発見(あるいは失敗!)を、できる限りお伝えしていきます。
望月 洋志

第3回:「見える化」するだけで、そんなに変わるの?

  • 前回は「見える化」によってどういうことがわかるのか、という点について書かせていただきました。今回はその「見える化」を、すこし別の切り口でお伝えさせていただきたいと思います。

 

  • ■「見える化」にこだわる理由は、「チームPDCA」による「組織への定着」

 

  • 私たちが「見える化」にこだわるのには理由があります。

 

  • それは「見える化」すると、PDCAが組織に定着しやすくなり、さまざまな改善効果がみられるからです。これはさまざまな種類のダイレクトマーケティング業務を担当させていただいたなかでも、やはり同じような傾向がありました。

 

  • PDCAを推進するうえでは、この「組織への定着」というのがなかなかバカにできません。個人的にはこれを勝手に「チームPDCA」と呼んでいます。ここでいうチームの定義は「自社のみ」「自部門」ではなく、「他部門も」「クライアントもサプライヤーも」関係者全てによる、みんなで実現していくPDCAのことを指します。セブン-イレブンでいうところの「チームMD」みたいなイメージです。

 

  • 「チームPDCA」のチーム構成は当然ながらケースによって大きく異なりますが、成功している企業ほど、この「チームPDCA」がとてもうまく運用できているのです。

 

  • 相談を受けるタイプを「チームPDCA」の課題で分類すると、「立ち上げフェーズ」か「発展への移行フェーズ」となるので、それぞれのフェーズでの「チームPDCA」の運用のコツや注意点などについて整理してみました。

 

  • ▼フェーズ1 【立ち上げフェーズ】

 

  • ■立ち上げから、運用がうまく軌道にのるまでの「加速装置」として使う。

 

  • やりたいけれどどうしたらいいかわからない!助けて!のフェーズ

 

  • これは意外と簡単です。1つ1つ、順を追って地道につくっていけば必ずできます。

 

  • ただし、当然ながら「目的」「必要な要素」「手順」「装置」などを知っていないと、手探りで進めなければいけなくなりますので、進むのが遅くなりやすい。その会社や部門のステージやリソースなどにもよりますが、立ち上げ時期は一時的に広告代理店やコンサルティング会社、SIerにサポートしてもらうのが最も手っ取り早く、かかる時間は短縮できると思います。(時間の短縮の代わりに、費用は当然ながらかかります。)

 

 

  • ■軌道にのったら運用は出来る限り自社で巻き取る。

 

  • これには注意点があります。サポートを都度必要なときに、というレベルであればいいのですが、ずっと運用を丸投げし続けるのは社内にノウハウがたまらないため、個人的にはあまりおすすめしません。ノウハウがたまらないうえに、費用もかかり続けます。「どこの部分を何のためにアウトソースするのか」については予め明確にしておいたほうがよいでしょう。

 

  • わかりやすいのは、新しいチャレンジについてはアウトソースし知恵やリソースを借り、それが成功しはじめたらその運用については自社内で運用業務としてワークプロセス化し、巻き取っていくやりかた。
  • 一般的には広告代理店やコンサルティング会社、SIerは様々な業界、企業のサポートをしており、ベストプラクティスをよく知っています。「単なる労働力」として使うというよりは「知恵」を借りて協業していくスタンスが良いシナジーを生むケースが多いように感じます。

 

  • 単なる労働力として継続的に使っていくと、運用人件費が高い(労働力が「進化」に使われず、「運用維持」に使われるだけになる)から費用対効果が高く感じ、結局継続できない、というケースによく遭遇します。それはお互いにとっても非常に不幸なことです。

 

  • また、よく聞く失敗に「すべて社内でやろうとして何度も失敗してきた」というケースもよく聞きます。これらもよくよく話を聞いてみると、手段が目的化していたり、具体的な作業イメージ・結果イメージまで落とし込めていないで着手していることが多いため、その整理をちゃんとしていくと解決することもあるかもしれません。

 

  • たとえば、「POSデータとTVメタデータ、ソーシャルのデータを掛けあわせたらきっと面白いことがわかるよね!」というような類の話。これは完全に「複数のデータを掛けあわせたら面白いことがわかるに違いない」という分析手法そのものが目的化してしまっており、「どういう問題を」「どういうふうに解決したいのか」「その結果、どういう効果が得られるのか」をすっとばしています。

 

  • のにもかかわらず、そうだ!きっとできる!やろう!となって、SPSSやSASを導入したり、BIを導入したり、各種データを購入したりするのですが、結局アクションまでイメージ出来ておらず、ツールやデータを使いこなせていないケースです。具体的なアクションを考えずにとりあえず着手して失敗する、よくあるパターンです。

 

  • ■「チームPDCA」は相手を信頼してこそ成功する。まずはそこから。

 

  • また、これも「すべて社内でやるんだ」という会社に比較的共通することでもあるのですが、「うちのデータは機密情報で社外に知られてはならない」「ものすごく価値が高い財産だから社外には絶対に開示できない」「社内だけで全部やるんだ!」というこだわりが強い傾向にあります。
  • それはそれで正しい側面もありますが、ここにこだわりすぎて、前に進めないのはあまりよくありません。

 

  • 安全にデータを授受する方法はいくつもありますし、ちゃんと双方で会話や機密保持契約をきちんと行い、安全な対策をしながら進めていくことで、社内を説得する方法はかならずあるでしょう。「チームPDCA」は、パートナーを信頼しないとなにもはじまりません。パートナーを信頼せず、本来必要なはずのデータなどをあまり出さずに、「いい提案が出てくる」という期待はあまりしないほうがよいでしょう。

 

  • ちゃんと一緒にパートナーとしてやっていこう、と決めているのであれば、「どう実現していくのか」「どうすれば乗り越えられるか」という会話になるはずです。まずはそこからのスタートが実はとても重要になります。

  

  • あえて言ってしまいますが、「使いこなせていないデータ」にあまり価値はありません。ダイヤの原石のようなものです。原石そのものは(もちろん貴重ですが)そこまで価値は高くありません。加工して、売れて(活用されて収益化できて)、はじめて価値が高いといえるのです。

 

  • 会社で眠っている資産を最大限に「活用」することを最優先したほうが、このビッグデータの時代で勝ち残っていく考え方になるでしょう。もし「データという資産」の重要性を感じているのであれば、その「資産価値をどれだけ高められるか」を最優先にしていけるかの最善のプランを考えるべきです。仮に外部のサプライヤーに相談をしたところで、そのデータの所有権や活用する権利が自社からなくなるわけではないのですから。

  

  • ▼フェーズ2 【発展への移行フェーズ】

 

  • ■「チームPDCA」を拡大することで歯車をより多く、より大きく。

 

  • もっと新しいことにチャレンジしたい!もっとたくさんいい結果だしたい!
  • が、どうしていいかわからない!のフェーズです。

 

  • さらに大きな効果を期待するときには、単一の部署で行われる施策だけではなく、組織単位での統合したPDCAが必要なことも多くなります。そうすると、ひとつの部署での施策の話に終始せず、組織の運用の話にも及び、やや難易度があがります。
  • この成功事例がまだまだあまり多くないのは、「業務そのもの」と密接につながり、組織的な課題が大きいからではないかと思っています。

 

  • というのも、「さまざまな業務」に「活用」していくとなると、当然ながら「業務」について熟知していなければなりません。業界共通のものもあるでしょうが、その会社特有のものも多くあります。そのディテールを広告代理店やコンサルティング会社、SIerが熟知しているかといえば、なかなかそこまで求めることは難しい。
  • 彼らが知っている知恵・エッセンスを「どう、ウチの業務に落としこんでいくか」「どう運用に応用していくか」というフェーズが必ず必要になります。そのときには必ず現場レベルの担当者の業務の話になり、ここで組織の壁が立ちはだかります。これまでやってきた業務の見直しや、大幅な変更が発生する可能性が高いのです。どこかの部門の業務改善のために、別の部門の負担が大きく増える可能性がでてくることもあるのです。

 

  • となると、この段階で、「社外とのチームPDCA」「社内でのチームPDCA」の両方のハードルがぐぐっとあがってしまいます。

 

  • 経営レイヤーの強烈なGOがあればそれもラクに超えられるかもしれませんが、現場だけではここはなかなか超えにくい。前に挙げたブルドーザータイプの人材がいる会社が成功しやすいのは、経営レイヤーと現場レイヤーのパイプ役となってガンガン組織の壁を上手に壊しながら推進していくから、だとも言えます。

 

  • ■「見える化」すると、「正しいかどうか」のベクトル確認ができる。

 

  • ここで効果が出てくるのがさきほどの「チームPDCA」による「見える化」です。

 

  • そうすると、「このやり方はよい結果が出ている」あるいは「このやり方はあまりよい結果が出ていないので変えなくてはならない」という、いまの活動に対する評価基準ができあがります。社外・社内を問わず、アクションに対して当然ながらかける費用が発生することになるため、GOかNO GOかの基準がおのずと出てきて、身動きがしやすくなるのです。

 

  • 「今やっていることは正しい。だからもっと拡大をしたい、スピードをあげたい」 などというNEXTのアクションのために、経営層に理解をしてもらうためのエビデンスにもなるでしょう。

 

  • ここもフェーズ1同様で、フェーズ2をいつまでも外部の会社に頼ってばかりいると、自社にノウハウがたまらない、運用コストが非常に高くついてしまう、自社の細かい部分まで考えたPDCAのアイデアがなかなか出にくい、などのデメリットもあり、組織のPDCAがなかなか加速しません。

 

  • もちろん、企業によってデータの保有状況や分析者の状況、活用レベルがさまざまなので、一概には言えません。ずっと業務を外に委託している方がうまく業務がまわって、効果がでる可能性も大いにあります。
  • たとえば、良い結果が出ないとなかなか投資の判断がつかない会社。担当者の自分としては、全然会社は人も採用してくれない。そんななかで新しいチャレンジなんかできる余裕はない。運用にかける自分のリソースもない。こういうときには「前に進むための一時的な運用労働力」としてのアウトソースを行い、成功したあかつきにはちゃんと社内で人を採用してもらう。そのための一時的措置としての運用アウトソースは十分に有効です。

 

  • このあたりをよくわかって頂いているクライアント企業様は、私たちをフェーズ1にしろ、フェーズ2にしろ、「スタートするための加速装置」としてご理解頂いた上で使って頂くことが多いです。また、もうひとつの視点、「時間コスト」についても非常に明確な方針をとられている企業様が多いように感じます。

 

  • ■隠れたコスト、「時間コスト」を意識する。

 

  • 繰り返しになりますが、初期でコストがかかるのはあたりまえ。
  • 結局ヒト、モノ、カネが企業の資源です。
  • このうち、分析業務において、ツール(モノ)や分析者(ヒト)を全部外に出してでも企業で活用できるケースを作っていこうとするのであれば、残された資源である「カネ」がかかるのは至極当然です。

 

  • 裏を返せば「カネ」をかけたくないのであれば、残りの「モノ」と「ヒト」で何とかするしかありません。とはいえ、「データサイエンティスト」と呼ばれる優秀な人材を確保するのは、すでに難易度がかなり高くなっているのが現状です。

 

  • ちなみに、この「カネ」をかけたくない、という考え方が曲者で、「時間コスト」の概念がわりと抜けていることが多いのです。カネをきちんとコストとリターンの両面で見なくてはいけません。たとえコストがかからなかったとしても、一向にリターンが生まれないのであれば、それは成長機会をロス(損失)しているということにもなります。
  • (ちなみに、現実的には担当者としては時間コストよりも自部門の予算に縛られていることが多いので、ここも致し方ないといえます。経営感覚が強い現場担当者の方は、このあたりを意識されている人が多いように見受けられます。)

 

  • 瞬間的にコストがかかったとしても、そのあとに大きなリターンを得るための起爆剤としてコストをかけることは、一定の役割を果たすために必要こともあるのです。自社で全てチャレンジしたときのスピード感と、一時的に外部の起爆剤を活用するのか。変化が激しい状況の中で、あまりのんびりしている余裕もない、ということもあるのではないでしょうか。

 

  • なんでもかんでも自社で、ということは、かえって全員にとって良い結果にならないこともあります。
  • 目的と役割に応じて臨機応変に対応することをぜひ検討してみてください。
  • (逆に、なんでもかんでも外部に委託するのも避けて下さい。)

 

  • 実際、スタート段階を全部自社でやるのは結構キツいです。
  • これは私たち自身が身を持って毎日感じています。
  • 自分たちだけでスタートするのは大変なので、「お金がかかるのは初期段階では仕方がない」というふうに割りきって、それよりもスピードを優先したチャレンジをすることで、変化の激しい時代を乗り切ることも選択肢の大きなひとつです。
  • 私たちも自社ですべては完結させることにこだわりすぎず、必要に応じて外部のアライアンス・パートナーに頼っているケースもあります。

 

  • ただし、あとはこの初期段階で得たノウハウを「どう社内に定着できるか」という目線。これが重要です。これが全社的にできればとても強い。逆にこれがないと、せっかく初期段階で手伝ってもらった部分のノウハウが貯まらないことになる。それはとてももったいない。いつまでたってもノウハウがたまらないばかりか、お金が逃げていくだけなので、あまりよくありません。

 

  • 自分の子供に対しても、家で勉強する習慣が定着してくれれば、どんなに塾の費用が浮くのか、と考えたことはないでしょうか?

 

 

  • ■「チーム PDCA」は「普通」を「劇的に変える」チャンスをうむ。

 

  • 繰り返しになりますが、ダイレクトマーケティングではPDCAはもはや当たり前です。
  • (そもそもの話でいえばダイレクトマーケティングにかぎらず、全てにおいてPDCAが当たり前になっていないとだめなのです。少し切り口が変われば、このPDCAの部分がグロースハックと呼ばれたりもするでしょう。さまざまな企業活動でPDCAは有効なのです。)
  • ただし、なかなか日頃のアクションに踏み込んでPDCAをまわせている企業は実はそこまで多くはなく、むしろなにかしら、PDCAの課題を抱えている企業が多い。特にダイレクトマーケティングにはいままであまり縁がなかった企業ではその傾向が顕著です。

 

  • 逆にいえば、これまでチャレンジしてこなかっただけで「やり方を知らない」だけ、というケースもあり、「やり方さえ知ってしまえば」効果がみるみるうちにでることも多い。ものすごく当たり前のことしかしていないのに、「ひとつの大きな目標(KPI)」や「カイゼンの仕組み(PDCAの仕組み化)」のもと、「組織がガチっと噛み合えば(運用体制・評価などフィードバックの仕組み)」効果がでることが多い。

 

  • 取り組んでいるが効果がでていないというのは、この「噛み合っている状態」が作り出せていないことが原因、ということもよくあります。

 

  • 少し別の事例では、宣伝部主導でやっていたFacebookが初期ではうまくいかなかったが、カスタマーサポートの部門やセールス部門、その他の様々な部門を巻き込んで実施してみたら案外うまくいった(単に連携がとれていないだけだった)、というケースも実はよくあります。

 

  • ちまたでよくある「PDCAの議論」ではあまり語られていないかもしれませんが、PDCAがうまくまわっている組織では、この「組織同士が『噛み合っている状態』をどうやったら作り出せるのか?」という視点の比重が大きいことは忘れてはいけません。組織の「噛み合っている状態の作り方」については別の議論になりますので、機会があればまたそのときに。

 

  • ■見える化のキモ3つをまとめると、「発見」「共有」「定着」

 

  • 前置きが(とても)長くなりました。
  • 私たちが意識している「見える化のキモ」の3つです。

 

  • 1)発見
  • 2)共有
  • 3)定着

 

  • おそらく「え?そんな基本的なこと?」と思われることかもしれませんが、「個人単位」ではなく、これを「組織単位」で浸透していること、が重要であるとお考えいただければ。1人のPDCAの威力よりも、組織全体のPDCAの威力のほうがはるかにパワフルなのは明らかです。

 

  • ●見える化のキモ① :「発見」

 

  • 新聞紙を100回折ると富士山よりも高さが高くなる、というのは有名な話ですが、結局ダイレクトマーケティングのキモは「改善の繰り返し」です。ひとつひとつのアクションについてコンマ数%ずつでも改善していけば、その積み重ねはとても大きい。

 

  • そのためには「違い」や「ふとした疑問」の見える化が必要です。
  • 誰もが簡単に「違い」や「ふとした疑問」を「発見」できる仕組み、仕掛け。

 

  • これがあると、発見できる項目が飛躍的に多くなります。
  • つまり、改善するべきポイントをどうやって「たくさん」発見できるか?
  • ここにPDCAを成功させる秘密が隠されています。

 

  • たくさん発見するということは、それだけ改善する余地がある、ということです。
  • ただし、もちろん、むやみやたらに数を追求しても意味がありません。その質(方向性や効果など)も考慮して、PDCAを実践しましょう。

 

  • そして、「誰もが簡単に」発見できる仕組み、仕掛け、というところも重要です。
  • プロの分析官じゃないと課題がなかなか見つけられません!というのと、社内のメンバーがいつでもアクセスできる環境で、課題が発見できる仕組みがあるのとでは、全然PDCAのスピードが全然違う。

 

  • 広告効果測定ツールを導入したり、アクセス解析ツールを導入するのは、こういった「発見できる項目をたくさんつくる」ことにつながっていますね。オンラインではとてもわかりやすい。オンラインでやっていることを、同じような運用でオフライン領域で「見える化」することで、このPDCAが促進されます。昔からあるBI・帳票などはその役割を担っているといれるでしょう。

 

  • あとはその違いを「どうやって発見するか」です。

 

  • 昨年リリースした「HAKQEN®」というツールはまさにこの「発見のチカラ」に注目して開発したクラウド型の分析ソリューションです。

 

  • ▼HAKQEN®
  • http://www.hakuhodo.co.jp/archives/newsrelease/11968

 

  • HAKQEN(ハッケン)は、私たちがこれまで数多く実践してきた、マーケティング・プロモーション目線での分析ノウハウを搭載し、自社のデータをいろんな切り口で簡単に分析できる仕組みです。
  • 「広告会社もクライアント企業さまも一緒になって」課題やゴールを発見・共有・定着化させる「チームPDCA」を行うことで、PDCAを促進させる役割を果たします。

 

  • この「チームPDCA」のキモは、さきほど書いた「運用にのせる」ということ。
  • PDCAは一瞬では効果がありません。継続してこそ、PDCAがいきてくるのです。

 

  • そのためには業務ベースで有効な、理屈だけではない作業レベルにまで落とし込んだ運用PDCAを行うことが重要です。理屈ではこうすればよい、ということも、実際にやってみるとうまく行かなかった、というケースも意外とよくあります。

 

  • そのときに、そこまで一緒になって考える、そこまで一緒になって手を動かす。

 

  • そのためには、しっかりとパートナーシップを組んで、データや原因、取りうることが可能なアクションの内容の共有まで進めていかないとなかなかその領域にまでチャレンジできません。

 

  • そうすると、自社だけではなかなかできない、「抜ける」境地までたどりつきやすくなり、「チームPDCA」が機能してきます。

 

  • たとえば、同じようなセグメントルール、ターゲティングルールを適用するんだけれども、バナーのクリエイティブ(メッセージ内容やデザイン)にまで配慮してキャンペーンを実施したところ、効果が跳ね上がった、というケースも過去に多くありました。考えてみれば当たり前の話なのですが、WEBサイトを管理する部門と、販促を行う部門が分かれていたために、「チーム」として機能いなかっただけなのです。
  • これに限らず、こういうケースはよくあるのではないでしょうか?

 

  • 「チームPDCA」は、たくさんの視点による「発見力」を活かせる体制でもある、ということになるでしょう。

 

 

  • ●見える化のキモ② : 「共有」

 

  • もう一つのキモとしては、「共有」
  • これも大切です。
  • 分析をすると、つい、あれもこれも、になってしまいます。そしていつの間にか、大きな視点を失ってしまい、商品ひとつひとつのミクロの話に。とくに、担当者が増えていくと、いろいろな人の意見がどんどん出てくるために、こういったケースが起こりがちです。
  • ポイントは「大きな共有」と、「小さな共有」の両立です。

 

  • 大きな目的や考え方を共有してさえいえば、みんなのベクトルはだいたいそっちの方を向いています。細かいことはさておき、方向性をあわせておき、つねに細かい目先の部分だけにとらわれない、ということが重要です。(当たり前のことですね)

 

  • そして、小さな共有も大切です。
  • ひとつひとつのアクションの共有と、結果の共有。

 

  • 今回の分析は「ロイヤリティの高いターゲットをあぶりだし、その購買傾向を探ってアクションにむすびつけることとする」とか、「まだこの商品を買っていない人がこれくらいいるので、この商品を買ってくれそうな確度の高いひとを既存顧客の中からあぶり出してアクションにつなげる」とか。具体的であればあるほど、イメージが湧きやすいのでみんなの意識もまとまりやすいと思います。
  • この中には成功もあれば、失敗もあります。そのひとつひとつのやり方や結果を共有することで、次回はこうしよう、という細かい改善の繰り返しをPDCAできるようになります。

 

  • そうすることで、みんなの大きな方向がずれずにまとまっていきます。成功するケースのだいたいが、関与者の熱量がとても大きく、みんなのベクトルが同じ方向を向いています。

 

  • 結局のところ、会社全体でみたときに、一部門だけの歯車が高速に動いても、全体の速度はたいしてかわりません。むしろからまわっているだけかもしれません。それぞれの部門の歯車が、同じ方向に、同じタイミングでスピードが倍になるとこれはもはや会社のスピードが倍になります。そのための方向や数字、目的をきちんと共有すること、これが、成功にもっとも近いと思っています。
  • (もっともこれはダイレクト・マーケティングに限った話ではなく、すべてに通じることなのですが・・・)

 

  • それを少しでも推進するために、マーケティングダッシュボードといったツールが一役買うのかもしれません。ダッシュボードの議論になると、だいたいがツールにフォーカスされますが、本質的には「組織・チームでの運用の話」であるのです。「それを使って」「なにを」「どう」運用するのか?ということが、話の中心のはずですから。

 

  • ●見える化のキモ③ : 「定着」

 

  • 3つ目のキモは「定着」。これは前書きの部分でほとんどお伝えしてしまいました。
  • おさらいすると、定着のポイントは、

 

  • ・自分でやるんだ、という運用の「覚悟」をきちんと持つ。
  • ・「自社、あるいは自部門のみ」ではなく、
     「他部門クライアントもサプライヤーも、関係者全て」で、みんなで実現していく。
  • ・組織の壁をいい意味で壊せるような結果を出していく。

 

  • この3つが重要であると思っています。
  • ひとつひとつはものすごく当たり前のことばかりですが、これをきちんと回すだけで結構インパクトのある結果がでてくるでしょう。一気にいろんなチャレンジはできないかもしれませんが、1つ1つトライしていくと、振り返ったときに、1年、2年でかなり進歩していると感じるはずです。

 

 

  • ■隠れたハードル:「分析できない人は、金銭感覚がわからない」

 

  • 少し余談になるのですが、これもあまり語られない現場の悩み(笑)です。

 

  • 結局のところ、分析をするときに現場で課題になるのが、
  •  ・「自分で分析作業ができない人」が「分析費用に対する理解」が無い
  • こと。

 

  • このケースは、分析についてあまり詳しくない方とお仕事をするときに、比較的たくさん遭遇します。 

 

  • これは私たちが分析サービス提供する側だから言っている、というわけではなく、社内の複数の部門間で実際に運用するとかならず壁にぶちあたることです。

  

  • 分析を依頼する側からすると、

 

  • 「分析のボリュームはどうでもいい。
  •  多くても少なくても「課題」を発見してくればなんでもいい。」

 

  • 逆にいえば、

 

  • 「いくら分析ボリュームが多くても、課題の発見に至らなければ、
  •  お金は払いたくない。だってなんの意味もないから。」

 

  • (お金がかかるなら、少ない分析で「課題」を発見すればいいじゃないか・・・
  •  そこが君たちのウデの見せ所だろう・・・!)

 

  • ということになります。

 

  • 「分析を依頼する側」からすれば、とてもまっとうな感想です。
  •  ただし、「依頼を受ける側」は、単純に分析する作業工数を考えると、課題が発見できるかわからないのに、分析の時間が延々とかかってしまう。それなのに、そこが評価されない。対価をもらえない。これは非常にしんどい。

 

  • 「このギャップが、分析そのもののハードルを上げている」といえるのではないでしょうか。もちろん、分析者のスキルレベルが高かったとしても、依頼側にこの「分析手順」や「事前準備」などに対する理解が無い限り、同じ議論になるでしょう。
  • つまり、「分析費用の理解の無さ」は「分析工程の理解の無さ」から来ているということです。

 

  • 同じような集計軸について簡単な分析をやるのに、対象期間や対象の商品、またはカテゴリを変えて追加で分析するだけで、なんで2倍も3倍も費用(あるいは時間、工数)がかかるんだ、となります。
  • (分析者からすると、対象期間を変更して集計作業を2,3回やると純粋に工数が2,3回分かかるので至極まっとうな請求(あるいは主張)と捉えます。)

 

  • しかも、純粋に集計をやり直すだけではなく、必要に応じて新しいセグメントを作るために、マスタを工夫したり、カテゴライズを変えたり、元データそのものにも加工をするケースもあります。
  • そうすると、当然そのために少し時間もかかります。今日知りたいとおもったことが、「じゃぁまた来週持ってきます」となりかねないので、それに影響されて、アクションもどんどん後ろ倒しになります。

 

  • 実はこれが痛い。

 

  • 期間を変えて(あるいは分析軸を変えて)分析したからといって、その分析結果から課題はとくに発見できませんでした、なんてこともよくあるからです。じゃぁこの待っていた1週間はなんだったんだ、というふうになります。その場ですぐに分かったら、別のアクションを考える判断もあったでしょう。

 

  • ■「データの前加工」「データの整備」は、実はとても大切。

 

  • しかも、その分析をする前には、実は「データの整備」という「分析の前にデータを分析しやすいように整理をする前加工」が必要になります。ここの理解も非常に少ない。
  • データがそこにあるんだから、データを分析ツールにポンといれれば分析できるんだろう、的な発想をもつ人が多いといっても言い過ぎではないでしょう。

 

  • 我々はこの「データの整備」にもこだわっています。「マーケティング的な視点」で分析をするのに、単なる「店舗マスタ」で分析してもしょうがない。その店舗がどういった立地特性なのか。その商品はどういう分類なのか。JANコードと商品名からなるデータに対して、様々な視点からマーケティングの視野を広げるデータの「前加工(再分類)」を行ったりもします。データは単なるデータのままでは意味がありません。自社にとって、どう活用できるか?なのです。そのための工夫が必要なのです。そこには、マーケティング的視野が必要不可欠です。

 

  • みなさんがもし経営層から分析の部門を立ち上げるように言われている責任者であれば、この分析工程には注意してください。これを理解するのとしないのとでは、その分析部門の活用レベルが大幅に変わってくるでしょう。

 

  • さきほどご紹介した「HAKQEN®は、分析をシンプルにして切り出しているために、スタートさせやすく、組織に定着させやすく、マーケティング的視野をもってチームPDCAを実施しやすい、ひとつの解でもあるのです。

 

  • 次回は、私たちがよく行う具体的な分析の切り口を体系的にまとめた「顧客化10の発見」について、を予定しています。

 

 

Column バックナンバー一覧