その広告、本当に効いている?「売り」につながる「広告効果測定」「ROI分析」とは

広告効果測定の専門機関として25年目を迎える株式会社テムズ。

広告主でも広告代理店でもない「第三者機関」として、客観的な視点だからこそできる「次の打ち手につながる広告効果測定」の考え方と手法を紹介します。

本コラムを担当する株式会社テムズ代表取締役鷹野義昭氏の1000素材を超えるCMキャンペーン分析の知見とノウハウは、広告の費用対効果の「見える化」にお悩みの担当者にとって必見の内容です。

鷹野 義昭

第2回:TVCMは時代遅れ???本当に実売に効かないのか?


なぜWEB広告ばかりが、もてはやされるのか?

    「コストが安い?」「自由度が高い?」「効果が明白?」

まずは、ここ数年の各媒体別の広告費の推移をみてみましょう。
WEB広告が右肩上がりの躍進を続け2012年に8680億円、2013年には1兆円に達する勢いです。他の媒体に対しては、新聞広告・雑誌広告を抜き、テレビCMに次ぐ第二のメディアの位置づけがWEB広告です。
一方、テレビCMは、リーマンショックの影響が大きかった2009年に大きく落ち込んだあと、回復傾向がみられています。


 
消費者の購買行動がWEB上へとウエイトシフトし、生活時間あたりの接触媒体としての力も強くなってきていますので当然の結果といえます。近年、総合的な広告展開を組み立てるうえで、WEB広告や周辺のSNS、それらの受け皿となるホームページの充実などが不可欠となっていることは言うまでもありません。

しかしながら、それらだけがWEB媒体(オンライン広告)にシフトしてきている理由なのでしょうか。

WEB広告は、TVCMなどのマス媒体(オフライン広告)に比べて、ひとつのキャンペーン展開あたりの費用規模が格段に安いこと、広告表現などの制約が少ないことがあげられます。確かに、1回の全国キャンペーンで億単位のお金がかかり、15秒・30秒という表現枠、TV局のCM内容の考査などなどといった「TVCMのハードル」を考えると相当手軽な媒体といえます。
また、費用面や自由度といった手軽さから、トライ&エラーによるキャンペーンのPDCAサイクルを何度も繰り返すことが可能となることも大きな魅力でしょう。そして、ログ解析などにより「実売への結びつきが見えやすい」媒体であることが、さらに優位性を高めることになります。

ただし、「実売への結びつきが見えやすい」ということと「費用対効果が高い」ということは、同義語ではないということを忘れてはいけません。


■「コンバージョン」
という言葉の魔力?

近年、企業の宣伝担当者は、広告等の費用対効果を強く求められます。そのようななかで、例えば「ブランドイメージ醸成のためのTVCM」などは、経営サイドや周辺社員から「費用対効果は?」「いつ売り上げに結果が出るのだ?」といった圧力にさいなまれます。

その点でWEB媒体は、アクセス数に始まり、各階層におけるページビュー、そこからの問い合わせ件数、さらには実購入(成約)まで数値で相当明確に捉えることができます。
そして、各WEB媒体からのログ解析をすることで、その広告の価値や評価が客観的に決まることになります。

経営サイドからみると、1件当たりの「アプローチ単価」や「獲得単価」が出ることが広告投資の是非に対する有効な判断基準となるのです。
ということで、オンライン広告であるWEB媒体においては、実売などへの転換を指す「コンバージョン」という言葉がクローズアップされてきます。この「コンバージョン・レイト」が高ければ高いほど、取りこぼしの少ない有効な広告やタッチポイントと考えられるからです。

 

でも、ちょっと待ってください。

TVCMなど他の媒体を全く展開せず、WEB展開だけの商品ならば、こうした直接的コンバージョンの考え方のみでも良いでしょう。しかしながら、TVCMや交通広告などオフライン広告を伴うクロスメディア展開では、KPI(Key Performance Indicator)として目的とする中間指標(認知拡大・理解促進など)も踏まえ、間接的効果を捉えることが重要となってきます。

仮に、あなたが普通のイチ消費者として想像してみてください。
全く新しい今まで世のなかになかった商品を購入する際に、どのような行動をとるでしょうか。もちろん、目的買いでキーワード検索からWEBサイトに入り込むこともあるでしょうが、商品の存在自体を知らない場合です。

例えば、その新商品を「TVCMで初めて知って」→「何度かTVCMをみるうちに興味を持って」→「ネットでキーワードから検索する」ということを誰しもが行っているのではないでしょうか。

というわけで、しつこいようですが、「明確にコンバージョン・レイトが出しにくい」=「TVCMの効果が低い」などと一概に言えないということなのです。


■「クロスメディア」
「メディアミックス」の違いとは?

さて、ここで確認です。

5~6年ほど前から、「クロスメディア」という言葉が頻繁に使われるようになりました。
それ以前は、複数の媒体を使って広告展開をすることを、「メディアミックス」と呼ぶことが多かったのですが、両者の違いはどこにあるのでしょうか。

従前のメディアミックスは、メインとなるひとつの広告表現を決め、TVCMを中心に新聞・雑誌・交通広告など様々な媒体で展開する手法です。つまりは、一連の広告に対し、なんらかの媒体に接触させリーチ(=接触率)を拡大する、例えば「TVCMを見ないサラリーマンのオジさんでも新聞は見るだろう」という発想です。

対して、クロスメディアは、それぞれの媒体に役割を担わせ、それに合った広告内容としていきます。例えば、TVCMには「ブランド名称を覚えさせる」ことを主とし、じっくりと見てもらえる電車内などの交通広告では「商品の内容を説明」し、WEB広告では「より細かい商品情報や購入方法」を提供するといったことです。

つまり、ターゲットの心理変化や行動パターンに合わせて購入に導く「しくみづくり」をするということになります。従って、広告表現が媒体の役割によって異なるということです。

ここで大事なことのひとつは、各媒体やタッチポイントが受動的か能動的かということです。一家団欒のお茶の間までズケズケと入り込んでくるTVCMと、自分から検索などして入り込んでいくインターネットを介在したタッチポイントでは、その位置づけが大きく異なるのです。(WEB上でのバナー広告が、必ずしも能動的とは言い難いですが、、、)

つまり、導線をつくるにあたって、ターゲットにおける態度変容や購買行動などのうち「何を目的」として、「どういった媒体を活用」「何を伝えていく」かが重要となってきます。
例えば、生命保険は多くの人が既にどこかに加入しています。現在加入している保険内容に疑問を持っていない層に「見直し」を訴求するには、TVCMをもって「何度もお茶の間にズケズケ入り込む」ことが話を聞いてもらうには必要ということなのです。


本当にTVCMは実売に対する効果が低いのでしょうか?

 「コミュニケーション効果のパス図とは」

このように、広告媒体によってKPIとなる目的(中間指標)が異なるわけですから、広告パワーを次のステップから次のステップへと、リレーのように実売に向けて伝達していかなければなりません。そして、その個別媒体のパワーを捉えることを指すのが、「アトリビューション」という言葉になります。

「アトリビューション」とは、アクションなどのコンバージョンに至った貢献度ということです。当然ながら最終的には、この貢献度を広告投資費用で割り算し効率分析をします。

ここでは、シンプルに捉えられる典型例として、ダイレクト販売の商品を例に間接効果を含めたアトリビューション・パスの関係について説明していきます。なお、店舗販売のほとんどの商品についても、形の違いはあれ基本的に同様の構造がみられます。

この事例をみると、つい目がいくのが、自社ホームページから取り込まれる⑤のパス、そしてフリーダイヤルからの①のパスだと思います。(経営サイドも しばしば こちらばかりに目がいきますが、、、)

しかしながら、TVCMから発信される②③のパス、トータルでは①も含めたパスがTVCMのアトリビューション(貢献度)として捉えられます。こうして俯瞰すると、WEB単体によるパワーは実は低く、TVCMが自社ホームページへの誘因に大きく働いていることがわかります。
前述のクロスメディアの考え方では、TVCMはWEBへの誘因がメインのKPIということなり、具体的なCM表現では、お決まりのCM止めカットでの「検索キーワード提示」となります。

ということは、以下の足し算をメインとした式が、TVCMの実売に対する効果となるのではないでしょうか。

なお、この図ではシンプルに理解していただくために、TVCMのブランドイメージへの寄与や、ベースとなるブランドイメージ資産の検討行動への寄与といったある程度タイムラグが想定されるストック効果については割愛しています。
当然ながら実際の効果分析では、図のような短期的な実売といったフロー効果だけではなく、心理面で大きく影響するストック効果のパスもみていきます。

さて、今回ご紹介した【パス・イメージ図】の事例、なんとなくご理解いただけましたでしょうか。
そのなかで、グレー色で示した「曖昧なパスを実際どうやって定量化していくのか」など、様々なタッチポイントが複雑に絡みあうアトリビューション・パスの算出については、次回以降にお話しさせていただきます。

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