ストーリーで口説く統合コンテンツ論
IMC(統合型マーケティング)プランニングを専門的に実践するインテグレートにて、デジタルメディア・コンテンツの企画立案、編集、運営を行うメディアソリューション部が、デジタル時代の「コンテンツ」について語るコラム。情報が一方通行でなくなった今、魅力ある「コンテンツ」とはどういうものか、分析、探究していく。
第6回:パワーコンテンツ連動型アトリビューションの検証実験から見えてきたこと
「ストーリーで口説く統合コンテンツ論」も本稿で最終回となります。
本連載ではマーケティングにおけるコンテンツ活用の意味について、様々な角度から論じてきましたが、今回は「コンテンツ」がユーザーの態度変容やコンバージョンに及ぼす影響を測定した「パワーコンテンツ連動型アトリビューション・マネジメント プロジェクト」をご紹介しながら、マーケティングにおける「コンテンツ」の可能性についてお話したいと思います。
「パワーコンテンツ連動型アトリビューション・マネジメント プロジェクト」は、株式会社デジタルインテリジェンス、アタラ合同会社、株式会社日本ビジネスプレスと弊社の4社合同で進めてきました。
本プロジェクトが画期的な点は、ユーザーのカスタマージャーニーの中で、コンバージョンに直接結び付かなかったディスプレイ広告や自然検索等の接点が、ユーザーの態度変容やコンバージョンにどれくらい貢献しているのかを可視化するだけでなく、Webメディアの「編集記事/コンテンツ」の貢献度も加味したアトリビューション分析を実現している点です。
何故このようなことができるのかというと、日本ビジネスプレスが提供する「isMedia」をプラットフォームとして運用しているWebメディアの編集記事コンテンツに計測タグを装着することが可能となったからです。これにより、Webトリプルメディア(ペイドメディア、オウンドメディア、アーンドメディア)の全領域をカバーするアトリビューション解析の素地ができあがりました。
企業が行っているデジタルマーケティングは、リスティング広告に代表される刈り取り施策に偏重した結果、ブランド認知やエンゲージメント強化、新規需要創出といった施策が手薄になり、マーケティングの全体効率が低下したと言われています。また、TVCMにおける認知がWebコンバージョンのアクションにどのような影響をあたえているのか可視化する方法がなくブラックボックスになっています。
ここで、プロジェクトメンバーの立てた仮説は以下のようなものです。
“「その商品について聞いたことがある(が、具体的にどういうものかわからない)」という状態から、「欲しいから買う」という状態に至る上では態度変容のきっかけがあるはずで、その商品に対するユーザーの意識をポジティブな状態に高めていく要素として、メディアの編集記事/コンテンツの果たす役割は大きいのではないか?”
それは例えば、ヤフートピックスに編集記事が掲載されるとオウンドメディアへの流入が増加し、それに伴い問い合わせやコンバージョンが増えるという現象からも言えることです。
ユーザーが様々なコンテンツに触れ、「気づき」や「納得」を感じ取り、それが購買行動につながっていくというプロセスが可視化されることで、偏ったマーケティング施策が是正され、正しいマーケティング予算の投資配分が可能になります。この取り組みは、企業にとってもマーケティングやメディア業界においても、非常に大きな意義があります。
そこで、本プロジェクトの趣旨に賛同いただいた大和ハウス様とともに、コンテンツの整備、データの蓄積及び解析を進めることとなりました。
商品特性や時事性を勘案し、効果的にユーザーの態度変容を促すであろう文脈を初期仮説として置きながら、直接コンバージョンに繋がったコンテンツに限らず、迂回ルートを含めた様々なコンバージョンパスのなかで、ユーザーの興味関心を喚起するルートを探っていきました。
プロジェクトの過程のなかで様々な発見があり、詳細は後述しますが、なかでも、『記事を読めば読むほど、CVRがあがる、検索経由で入ってくる人が増える』といったことが明らかになり、編集記事/コンテンツの影響力が把握できたことは、本プロジェクトの成果といって良いでしょう。
アトリビューション分析では、初期の仮説設計が重要になります。仮説を立てることで、効率的に検証できます。
まず、最も効率的にユーザーを自社サイトに連れてくるためには、どのような文脈で記事/コンテンツを組み立てていけばよいのかを、仮説を立てながら探っていきました。文脈を構成する変数は、商材やターゲットであるお客様、また、季節やその時の話題性など、複雑に絡み合っています。こうした変数間の相互関係を整理しながら文脈を組み立てていくスキームとしてインテグレートが持つ「情報クリエイティブ」というメソッドを活用しパワーコンテンツを作り上げていきました。今回注目したトピックは、2013年より政治イシューとして論議された「消費税増税」です。住宅という高額商品では消費税率のアップは大きな負担につながります。「消費税増税」という“世の中ゴト”とダイワハウスがもつ技術等の要件を組み合わせてコンテンツのストーリーを設定しました。そのストーリーは「地震に強い家」と「遊休土地の活用」という2つでした。そして、このストーリーと、ストーリーに沿ったデータや根拠を収集しました。
メディアの編集サイドでは、この資料を参考にしながら、タイアップ記事や新旧の編集記事を用意し、計測タグを埋め込みました。また、ユーザーが興味のある記事を読み進めるうちに、大和ハウスの広告タイアップ記事に辿り着くような設計を行いました。
各媒体社で掲載した記事コンテンツの解析を通じて以下の有意義な結果が得られました。
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・閲覧ページ数が増加するにつれて、サイト訪問率があがっていく
・閲覧ページ数が増加するにつれて、CVRがあがっていく
・閲覧ページ数が増加するにつれて、検索経由来訪率が上がっていく
・記事閲覧のキーワードは「消費税」関連が圧倒的に多い、
タイアップ記事のキーワードも上位に
→コンテンツが効いている、質的変化が見て取れる
・閲覧ページ数が増加するにつれて、来訪率があがっていく、
バナー広告に反応しやすくなっている
・記事閲覧者の方が短い期間でサイトに到達する傾向がある
→単純にバナー広告を出すだけよりは、
記事閲覧したほうがサイトへ到達するスピードがはやくなっている。
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本プロジェクトは、次の目標に向かって動き出しています。
今回のコンテンツに接触したユーザーは、ナーチャリングプロセスの過程にいると考えられます。このホット化したユーザーに対して、リターゲティングなどの更に適切なコミュニケーションを図ることでコンバージョンを高めることができるでしょう。
アトリビューション分析で見えた、勝ちパターン=ゴールデンパスのルートから導き出したコミュニケーション文脈を広告にフィードバックするということで、さらなる効率化を図ることもできるでしょう。
アトリビューション分析は今後、更に進化します。編集記事コンテンツ以外にも、ソーシャルIDやオフラインの購買データ等、様々なビッグデータを紐づけることで、分析やターゲティング・セグメントの精度が上がり、本当の意味でのマーケティング投資配分最適化の道が開けていきます。
インテグレートで開発を進めている新しい「マーケティング・ダッシュボード」は、これら様々な変数を俯瞰して見ることでマーケティングの業務プロセスを効率化し、企業が独創的なマーケティングフレームを確立する上での基盤となるものです。
今後さらなる高みを目指し、新しい試みにトライして行きたいと思っています。