いま、ダイレクトマーケティングの現場では何が起きているのか。
- ダイレクトマーケティングといえば「通販」を想像する方が多いかも知れませんが、究極的には「個客」への接客です。これらのいろいろな取り組みは通販だけではなく、メーカーや店舗などの様々な業界・業種にもどんどん積極的に採用され始めています。
- ダイレクトマーケティングの現場でいま何が起きているのか、どういうことをしているのか、現場ならではの視点からいろいろな発見(あるいは失敗!)を、できる限りお伝えしていきます。
第2回:ぶっちゃけ、分析ってどんなことしてるの?どう始めたらいいの?
- ■ぶっちゃけ、分析ってどんなことしてるの?どう始めたらいいの?
- 「これから分析をしよう!」と思っている方はとてもたくさんいらっしゃると思います。でもきっと同じくらい分析に行き詰まっている方もとてもたくさんいらっしゃると思います。(私たちも日々行き詰まりながら、もがいて、もがいて、なんとかひとつひとつ乗り越えてきているので・・・苦笑)
- 分析のチームがスタートして、自分自身も、「ぶっちゃけ、分析ってどんなことしてるの?どう始めたらいいの?」という疑問をずっと抱えていたので、その取組みについて少しご紹介したいと思います。
- 前回も書きましたが、「見える化」するだけでぜんぜん違う。
- 基本的にはすべてこのための取り組みです。
- ■成功への近道1「クロス集計100本ノック」
- ダイレクトマーケティングをやっている人はお分かりになると思うのですが、結局のところ分析とはいっても、そんなに高度な分析はしていません。そう言ってしまうと、元も子もないのですが、ほとんどの場合がシンプルなクロス集計(せいぜい3次元でのクロス集計)だと思います。
- もちろんクラスター分析や重回帰分析などもやることもあるでしょうが、それを毎日、あるいは毎週やるほどの内容ではないことが多い。結局のところその類の分析には、傾向を探ったり課題を発見することが多く、その課題は毎日極端な変化をするわけではありません。
- 毎日少しずつの変化の積み重ねが、大きな差となって現れてきているにすぎません。ただ、その解決策のためのきっかけを探す。ほとんどがそういった目的のための分析です。
- たとえば、顧客属性なんかは毎日分析したって大して変化はありません。毎週分析したってそんなにかわらないでしょう。ターゲットに対するコミュニケーションの効果として特定の顧客層が反応したかどうか、を確認するくらいの頻度で十分だといえるかもしれません。
- ただし、まだ顧客分析をしたことがない、ということであればそこはぜひやってみてください。「お客様を知る(=お客様が求めていることを知る)」ということが、改善の第一歩であることにかわりはありません。
- もちろん、すでに基本的なところを超えてすべてやりつくした、という方や、業務として様々なターゲットにあったメッセージを発信しなくてはならないというような、ルーチンとしてその類の分析が組み込まれている方もいらっしゃるかもしれません。総合通販や流通業、大手メーカーなど、さまざまな顧客属性をかかえていらっしゃる業種・業界はこの課題に比較的すぐにぶつかると思います。
- 昔の定義を捨てて、いまの時代、いまのお客様に合わせたターゲット像を設定しなおしたり、インサイトを発見するための日常業務になるなど、少し複雑な分析をしなくてはいけない場合もあります。ただ、実際にはほとんどの方がそんな分析にまでいたっていない場合が多いのではないでしょうか。複雑な分析の多くは、すこし専門的であり、少し細かいと言ってもいいと思います。そこにいくまでに、もっと根本的な、基本的なことを変えるだけで、効果がすぐにでることもあります。そこを今一度考えた上で、複雑な分析に進んでからでも遅くないのではないでしょうか。
- なので、ぼくらの仕事の多くはほとんどの場合、ひたすらクロス集計をすることからはじめます。ぼくらはこれを「クロス集計100本ノック」、と言っています(笑)
- とてもシンプルです。
- ただし、簡単か、と言われれば、決してそうではありません。
- どれだけクロス集計をやっても、予想に反してそれっぽい答えがでてこない気がしてきたときのその無念さといったらもう(苦笑)もちろん、そのあとにはクラスタリングをすることもありますし、ニーズに合わせた分析を行います。
- 弊社は広告を中心とした「総合制作事業会社」なので、コピーライターやCMプランナーがたくさんいます。彼らは当然ながらCM絵コンテ100本ノックや、コピー100本ノックをあたりまえのようにやってきたプロフェッショナルたちばかりです。結局のところ、普通の人にとっては、量が質を生むということに間違いはないと思います。経験から生まれる知恵にまさるものはありません。
- 私たちもそれと全く同じです。光があたるその裏には、本当に地道で地味な(苦笑)クロス集計100本ノックがあるのです。
- 当然ながら、とにかくいろいろな集計軸で、違いを発見する。泣きたくなるくらい地味な作業の繰り返しです。しかもそれが週次だったり月次だったりして、ずっと繰り返されるのです。
- そうはいっても、さすがにいろんなお客様の多種多様な要望に応じて、それをずっと繰り返していると、「底力」はそこそこつきますよね。クロス集計100本ノックもなかなか馬鹿にはできません。
- やっていくうちに、「あれ、ここってなんでこんなに差があるんだろう」とか、「あれ、なんでさっきのと傾向が違うんだろう」という感じで「違和感」が出てきます。ぼくらはこの違和感(=直感)を大事にしています。さまざまな業界を幅広く横断して経験した分析。
- ここから得られた「違和感を感知する力」は私たちの強みになっています。
- ■成功への近道2「現場100回」
- そしてとても意識していることの2つ目、「現場100回」。
- とにかく現場の人に話を聞くこと。これも非常にシンプルです。
- データだけで語るのはとても危険です。データが正しくても現場にそれが受け入れられなかったらどうしようもない。重要なのは、そのデータから「どう成功を作れるか」。
- 極論をいえば、データがなくても成功が作れるならそれでもいい。
- データありきで私たちは考えていません。現場の人が受け入れられやすい文脈にして、現場の人が、なるほど、じゃぁこういうのってどうだろう?って思ってくれるような分析を提示することを心がけています。
- それはつまり、アウトプットについて現場がわかりやすい表現(翻訳)を心がける、ということ。
- 現場が「活用できる分析結果に落としこむ」という作業です。これがとてもむずかしい。
- 現場を理解していないと、この発想は出てきません。
- そのために必要なのが、この「現場100回」だと思うのです。
- 結局、現場が活用できない分析結果など、単なるコストにしかすぎません。なにも変わらないのですから。
- そして「現場100回」の副次的な効果は、とにかく自分の領域を超えて、他の人の仕事を知ろうとすること、課題を発見することで生まれる人間関係の構築にあります。(これがまた意外と重要だと実感しています。)
- そこで培った人間関係は、分析結果の社内活用での浸透度合いが違います。
- 一緒に悩んできた仲間の発言と、どこからともなく出てきた分析屋の発言では、どちらを参考にしたいと思いますか?どちらを信じたいと思いますか?紙で出てきた分析結果をただ見せられるのと、一緒になってがんばっている仲間から出てきた分析結果では社内の浸透に大きな差がある。
- 経営企画室から出てきた血の通っていない分析結果(失礼!でも社内では往々にしてそう思っているケースが多いのです。)ではなく、現場で自分たちが出したレポートのほうが、危機感を感じるのではないでしょうか。これは社内でも、社外でも同じ。一緒になってやってきた改善のためのチーム、そう思っていただくことが、私たちのスタートだと思います。
- もし、社内で分析結果へのアクションが進まないのであれば、社内の人が分析に理解を示さないという気持ちではなく、自分が十分に社内に浸透させられるような(近づく)努力・工夫ができていないのだ、と思ってみて、やり直してみるのもひとつかもしれません。
- データは生きています。組織ががっつり噛み合えば、それだけで改善されることがあるでしょう。みんなの意識が変わるだけ、たったそれだけでデータが改善されることがあるかもしれません。
- 繰り返しますが、活用されない分析結果には「何の意味もない」のです。
- ■本当にデータがないと「できない」のか?
- そして、理屈やデータ、分析結果で考えられるものだけが全てではありません。
- 私たちは左脳(=データベース・マーケティング、課題の発見)だけではなく、右脳(=クリエイティブ、創造力に優れた課題解決の打ち手)も使わないといけません。だからこそ、直感はとても大切にしたい。データはとても大事だけれど、どうせ全部が全部データで語れるものではない。(それにどうせこれまでだって、そんなにデータがあるわけではなかったし。)
- だったら、はじめからデータだけで語るのではなくて、直感も含めて、まるっと分析にも、課題解決にも役立ててしまえばいい。データベースマーケティングをする組織に所属していながら、私たちはそう思っています。
- だから、個人的には「データがないとできない」と言われることに対してとても懐疑的です。あながち、人間の直感は間違っていない。特に習熟した職人の「勘」というのは創造を超える領域に達しています。
- やらなきゃわからないことだってたくさんあるのだから、そこは覚悟を決められるかどうかの、その人、部署、会社の意思・覚悟次第だと思います。
- (その代わりに、事前にKPIも決めておいて、継続するか否かのポイントもあらかじめ決めておいて、検証は徹底的にやりましょう!やればデータはでてくるのですから。)
- 証明できないことは直感にしたがってチャレンジしてみる。これが重要です。
- 昔はデータがなくてもやっていたのに、いまはデータがないとできないという。これはおかしな話です。ただしリスクを軽減するために、とにかく小さく、少しでもはやくはじめてみる。最近はリーンスタートという言葉がいろいろなところで出てきますが、成功したら大きくすればいいし、失敗すれば方向転換すればいい。組織だって、事業だって、改善プランだって、PDCAすればいいのです。(ただし、データを活用してリスクを最大限に減らせたり、成功確率を最大限に高められるのであれば、それは全力でやるべきです。私たちデータベース・マーケティング領域の担当者はそのためにいるのです。)
- ■分析のポイントは3つ。
- 「何を見るのか?」「どう見るのか?」「その結果、何をするのか?」
- さて、結局ふたを開けてみれば、身も蓋もない単なるクロス集計なのですが、たったそれだけで、実は大きくかわります。WEB担当でアクセス解析や広告効果測定ツールを使っている方で、コンバージョンの際にいろいろな軸で顧客属性をとっているのであれば、ぜひまずはそこから始めてください。販売チャネルごとのデータや商品の販売動向のデータなどをもっているなら、ピボットでクロス集計をすることからはじめてください。
- まず、やってみる。
- 小さく始めて、徐々に大きくしていく。
- それが重要です。
- 商品軸で見てみたり、時系列で見てみたり、地域別や業種別、顧客属性別などでも見てみたり。
- とはいうのものの、じゃぁまず何からはじめればいいのか?
- これもなんだか身も蓋もありませんが、結局「なにを」「どう」みる、しか、分析ってやりようがありません。
- ただ、これを一度分析するまえに頭のなかで考えることに、とても大きな(そしてゴールまでたどり着きやすいという)意味があると思います。
- ただし、3つ目のポイントである、「で、どうするの?」は意識しておきたいポイントです。
- ・何を見るのか?
- - いまみたい分析はなにを求めたいのか?
- ・売上なのか、店舗の課題なのか、商品の課題なのか。
- ・どう見るのか?
- - その課題を中心(基準軸)にして、どんな軸(第2軸、絞り込み条件)でみるのか。
- ・時系列での売上や利益の推移を見たければ時系列でみてみる。
- ・全体で変化がなければさらに商品別やエリア・店舗別にドリルダウンしてみる。
- ・商品の顧客の構成の変化を見たければ、
- 定点観測で特定の時点での構成比を複数の時点で算出してみる。
- ・で、どうするのか?
- - 分析で差が出た結果に対して、どんなアプローチが可能なのか?
- - それはかけたコストに対してリターンが出るものなのか?
- など。
- なんとなくでもいい。目的を決めることが大切。この方法でなくてもいろいろなアプローチがあると思います。明確でなくてもいい。とにかくゴールイメージをつかむ。
- これが重要だと思います。明確な地図などなくても、なんとなくの方向さえもっていれば、そのうちたどり着きます。あとは訓練次第で、はやく正確にたどりつくことができるようになるでしょう。
- つまり、「ねぇ、とりあえず顧客分析したいんだけど?」という問いはナンセンスなのです。
- なんのために、顧客分析をしたいのか。
- 漠然とした問いには漠然とした回答しか出てきません。
- まずはじめてみる、と矛盾しているようですが、とりあえず(目的もなく)やってみる、というのには大反対です。おそらくなにも考えずに顧客分析をやると、全体の売上トランザクションに対する顧客属性がでてきて、
- 「う、うん、そうだね、思っていたのとさほど変わらないね・・・」
- 「分析ってやる意味ってあったの???」
- 「え、これでこんなにお金かかるとか、意味ないんじゃないの?」
- 「うん、で?ここからどうするの???」
- という話になるのが明らかです。(これは極論ですが、あながち間違いではないと思います。)
- 基本的な分析は、だいたいが「予想どおりで思っていたことと変わらない」ということが多い。
- しかしそれを証明するのと、しないのとでは次からのアクションにかける「覚悟」に大きな違いが出る。にも関わらず、「(あらかじめわかりきっていたことばかりしか出てこなくて、)分析した効果は特になかった」と捉えられることは非常に残念なことです。
- 稀に、「これまでウチは勘に頼ってやってきた。それが正しいのか間違っているのか証明をしたい」と明確なオーダーが来ます。こういう組織は分析をフラットに受け止め、これまでやってきたことが正しくても、間違ってたとしても、そのあとの結果を出すのがものすごく早い。そう感じます。分析は魔法の杖ではありません。課題があってはじめて、その参考になるデータが出る。これは「デザイン」とまったく同じだと思っています。
- よく、博報堂プロダクツという会社にそういう組織があることがわからない、と言われるのですが(苦笑)私たちはまったくそう思っていません。デザインも分析も、課題に対して解決するエグゼキューションに他なりません。エグゼキューションをもって応える課題解決企業、そう思っている分析チームです。
- (背景には、おたくは制作会社だよね?という暗黙の認識があるからだと思いますが、もうすこし広義の制作会社だと思っています。)
- そもそも「なんかすげーかっこいいデザインがいいんだよね!」というオーダーであがってくるデザインに、自分が思っている予想どおりのものがあがってくることはありません。これは明らかにオリエンが悪い。問題意識や目的がなくあいまいなオーダーを出しておきながら、それに対する回答にはものすごくシビアに意味を求めてくる。それは無理というものです。
- ■専門知識を持って目印をたて、専門知識を捨てて(先入観を捨てて客観的に)分析し、(ゼロベース思考で)アクションプランを考える。
- そのため、私たちは分析の前に、まず、いろいろな課題や問題意識について話をすることを大切にしています。(=現場100回、ですね。)
- これまでにやってきた分析はどういうものなのか。分析から活かせているもの、活かせていないものはなんなのか。分析をやっていないのであれば、いま課題に思っていることはなんなのか、売上なのか、運営なのか、商品なのか。
- 現場の方の意見はそれなりに有効で、みんな「肌感」をもっている。この「肌感」が重要です。データで現れる特徴的なものは、この肌感で解決できるものも多い。分析する前にある程度の肌感を私たちにも「インストール」する。そうすると、巨大な砂漠から金の石を探すようなあてもない旅から、目印が見えるようになることが多く、分析時間の短縮(=分析費用の削減)が可能になります。
- ただし、分析をするときには一度その知識を捨てることが必要です。
- たとえば特定の商品の利益が少ないとする。その商品はそれくらいの利益しか生まないんだ、という前提に立ってみると、それ以上の分析はしようとしなくなります。それはとても危険です。
- 思考停止に陥らないようにするために、いったん客観的になって分析をするように、先入観を捨てた分析が必要です。
- さらにいえばそのときには、分析だけではなく、できるアクションのレベルにまで踏み込んで議論します。分析結果から、特定の層が効くとなったときに打ち手に何があるのか。DMを送ってもよいのか。メールしかないのか。直接電話をかけてもいいのか。あるいは、お客様に直接会いにいってもいいのか。
- 分析と打ち手はセットです。打ち手がない分析に、あまり意味はありません。(ただし、打ち手は顧客へのダイレクトなアクションだけではありません。)
- このときに、先入観にとらわれていて改善案が小さくなってしまうようでは意味がありません。
- 大きな問題解決のためには、先入観にとらわれない大胆な解決策がときには必要になります。
- 本当にお客様のことを見ているのか?社内の都合だけで考えてはいないか?
- お客様のニーズは変化します。その変化についていかないと、お客様が離れてしまう。社内の都合はお客様にあわせるべきではないでしょうか。
- (理想論ばかりを言っても仕方がないのですが、そのくらいの気持ちを持って臨む、ということが必要です。そうしないと、変えられない局面に直面することも多く感じます。せっかくの分析結果が、あまり意味をなさないケースがあるからです。そういう意味では、前回述べた「ブルドーザー的人材」は、そういう部分が比較的上手だと感じます。)
- 少し分析の手法に話を戻します。
- ■じゃぁ「なに」を「見える化」すればいいのか?
- 分析といっても、なにをどう見るのか?は当たり前の話です。
- (それしか方法がありません。)
- じゃぁどうするのよ?ということなのですが、このとき、一般的には「顧客軸」で見るクセをつけておくと分析に深みが出てきます。
- この「顧客層」は「どういうお買い物行動」をしているのだろうか?ということです。
- 結局、店舗でも商品でも、買うのはお客様なので「お客様の買われ方」を見ていくことでヒントが見つかる場合が多いからです。
- 前回の事例では、
- ・会員登録のときは男女の比率が男:女=5:5
- (男性も女性も同じくらい会員登録する)
- でしたが、
- ・利用回数(購入頻度)は男女比が男:女=1:9
- (会員登録は男性もするが、男性はあまり買わない)
- でした。
- じゃぁ男性の会員登録にかけたお金はなんだったんだ!なんてことになってしまっていたのですが。これも
- 「会員登録」と「購入」に男女差はあるんだろうか?
- =もしあるのであれば効果が無い広告はやめなければ!
- というアクションの裏付けを探すことが目的でした。
- ここで重要なのは、分析をするにあたって、基準となる軸を作ること。
- ・顧客軸
- ・商品軸
- ・コンテンツ軸
- ・流入チャネル軸
- など、通常はさまざまな軸をベースに集計を行います。
- たとえば、顧客軸であれば、顧客属性(性・年代・職業・会員である期間)や顧客購買行動(累積購買金額・購買頻度・購買間隔・購入している商品)ごとに、さまざまな集計を行います。
- ただし、これをひたすらやっていくのは時間がいくらあっても足りないので、ある程度の「アタリ」をつけて行うことになります。これがよく言われているところの、「仮説」をたてて分析をしよう、ということですが、実際には明確な仮説があることは少なく、なんとなく、ここに違いがあるんじゃないか?という「勘」というか、「経験則」になっていることが非常に多いです。(もちろん、全てにおいて明確な仮説が作れればそれがベストです。)
- 裏を返せばそこがまさにノウハウであるということでもあるのですが、この「アタリ」のつけかたで、以降の分析の労力がかなり変わります。
- (だからこそ分析の前の議論については、とても大切にしています。)
- たとえば、WEBの会員数と売上のデータからの悩みについての事例です。
- ・全体の会員数が増えているのに、売上が伸びない。
- (ギモン)
- ということは、客単価が減っているか、あるいは毎月の購入者数全体が増えていない、ということが考えられる。
- (アタリ)Activeの毎月の購入者数はどうか。 → (結果)増えている。
- (アタリ)客単価はどうか。 → (結果)減っている。
- (ナメる)どの層の客単価がへっているのか?(性・年代・商品などさまざまな軸で集計)
- (結果)
- 流入施策を効率のよいネット広告にシフトしすぎたため、お金をたくさん使っていた、年配の顧客の獲得が疎かになっており、さらに離反していることもわかった。
- 若年層の会員は非常に増えていたが、年配の顧客に比べると、売上はそれほど多くなかった。(年間のLTVがとても低い。シニア層と比較しても半分以下。)
- 会員獲得あたりのCPAベースでのみ評価をしていたため、そのあとの顧客ごとの購入金額にまで意識がいっていなかった。
- (対策)
- 評価ベースをCPAベースだけではなく、年間LTVベースでの2軸にした。
- これで獲得効率だけではなく、総合的な判断として継続顧客の指標がはかれるようになった。
- 一発で年代別の客単価と人数、売上トータルの月別推移を出せばトレンドがわかるでしょう、という結論を言ってしまえばそれまでなのですが、なにもない段階からそこまでいきなり導き出すのは経験値がないと勘も働かないので、至難の業。
- そのため、ある程度の粒度の「アタリ」をつけながら、どんどん課題を特定して、地道に深堀りをしていく。この繰り返しで、課題の発見と、対策について考えていきます。
- 対策まで、きちんとやれるか、が、分析結果の「その先」に求められる重要なポイントだと思います。
- 通販系の企業はすでにネット広告だけでなくさまざまな流入チャネルでこれを行っています。新聞ごとに電話番号をわけてみたり、資料請求番号をつけてみたり。お電話での申し込み時になにをご覧になったのかをヒアリングしたり。
- 結局のところ、私たちがやっているダイレクトマーケティングの普段の業務としては、とにかくさまざまなところで「見える化」している。それが次の課題解決の方針になることが多いので、この「見える化」はなかなかバカにできません。
- とくに最近ではそれが、通販系クライアント以外にひろがっていて、印象としては「商品の売上(商品中心の分析)」についての分析から、「顧客の動向(顧客中心の分析)」についての分析に比重が変わって来ている感触があります。あえて難点があるとすれば、顧客を特定することが通販系クライアント以外の大手メーカーなどには少しハードルが高いと考えられているということでしょうか。
- ソーシャルやWEBのアクセス、イベントの参加状況や売上を複合的に見たい、という要望がとても増えてきているように見られます。ただし、個を特定することが困難なため、思うようなチャレンジには至っていない状況が多いようです。これも、純粋に手を付けられるところから実践して、少しずつ拡大していけばいい。そう思っています。先進的な企業では、広告を純粋に配信するためだけのものではなく、お客様をより深く理解するためのDMP(またはプライベートDMP)の取り組みも始まっており、私たちもそのお手伝いをするケースが徐々に増えてきています。
- この「見える化」のキモは次の3つに分けられると考えています。
- ダイレクトマーケティングにおける運用エッセンスと捉えてもいいかもしれません。
- 成功している企業ほど、これが組織内で自然とできているように見受けられます。
- ▼見える化のキモ
- ①「発見」: 原因を見つける。対策を見つける。
- ②「共有」: 課題やアクションの結果を共有、組織全員の問題として認識する。
- ③「定着」: それを組織として当たり前のことにする。
- 次回はこの「『見える化』のキモ」についてを予定しています。