いま、ダイレクトマーケティングの現場では何が起きているのか。
- ダイレクトマーケティングといえば「通販」を想像する方が多いかも知れませんが、究極的には「個客」への接客です。これらのいろいろな取り組みは通販だけではなく、メーカーや店舗などの様々な業界・業種にもどんどん積極的に採用され始めています。
- ダイレクトマーケティングの現場でいま何が起きているのか、どういうことをしているのか、現場ならではの視点からいろいろな発見(あるいは失敗!)を、できる限りお伝えしていきます。

第1回:ダイレクトマーケティングの現場で何が起こっているのか?
- ■「ダイレクトマーケティング=通販」ではない
- ダイレクトマーケティングは、通販だけのものではありません。
- これは常に私たちがよく言っていることでもあり、少しこだわっているところでもあります。
- ダイレクトマーケティングはマーケティングのひとつの手法であり、それを求めているところはどこだって、この手法を使うことができます。
- だから、ダイレクトマーケティングの部署にいながらにして、通販系以外の案件もすごくたくさんあります。割合として多いのは、通販系「以外」のクライアント様からの、
- ・ROIやLTVを意識したプランニングをしたい
- ・チラシや各メディアの費用対効果をもっとよくしたいんだけれど
- ・そもそもどうやってPDCAを回していけばよいのか
- ・KPIをつくりたいんだけど、どうやったらいいのかがわからない
- ・KPIはつくったものの、PDCAの運用ができていない
- というご相談です。
- そしてここ最近で一番増えてきているのが、
- ・顧客分析を「したい」。どうやったらいいのかがわからない。
- ・顧客分析は「やった」。でも、そのあと、何をしたらいいのかがわからない。
- というご相談。どんどん増えてきています。
- ■データを「活用する」 という夢と、実現までの高いハードル。
- この類いの相談の急増は、ビッグデータがブームになってきていることが大きいと思っています。これまで意識してこなかった自社のデータを、どう活用していけばいいのか。うちのデータを分析すればなにか勝手に答えがでてくるんじゃないか、行き詰まっているビジネスを打開するためのすばらしいアイデアが、このデータから出てくるんじゃないか、という希望を、この「データ」に託して夢見る方も多いと思います。
- (その考えについて個人的な意見を述べると、一方で真実であるのですが、もう一方では真実ではないと思っています。)
- たくさんの雑誌や書籍やセミナーで、データ!データ!データ!となっているので、それはそれでとてもいい機会だと思います。おそらく、会社の中でも、社長や役員の方々をはじめとして、データについての取り組みに注目が集まってきていることだと思いますので、いろんなデータについての取り組みが推進・承認されやすくなっているのではないでしょうか。
- ちなみに、データの重要性の1つに「見える化(=お客様、あるいはモノ・コトの流れをより深く理解する)」がありますが、これはダイレクトマーケティングとかなり相性がいいと思っています。これまで見えなかった、いろいろな現象が「数値」として取得できる技術や仕組みが作られてきました。
- 「これまでわからなかったことが、わかるようになってきた」ということです。
- たとえば、ドライヤーにセンサーを仕込んで、利用する時間を把握できるようにすれば、どのエリアで、いつ使われているのかが把握できるようになる。
- 朝の利用が増えているのか、夜の利用は増えているのか、一日何回使われているのか?
- さらに、そのドライヤーのシリアルコード(ユニークの製造番号をあらかじめ用意します)とあわせて会員登録(性別、年齢、一人暮らしか家族と一緒か、などの登録も)をしてもらえれば、お客様のライフスタイルに合わせた利用状況をさらに詳しく知ることもできます。
- 当然、会員登録があれば、特定の利用をしているユーザーに、直接メールなどでアプローチすることも可能です。
- もちろん、意味もなく登録を要求されることは監視されているようで気持ち悪いので、その登録と「トレードオフ」になる何かがある、という視点が重要になることは言うまでもありませんが。このあたりはビッグデータにとても詳しい、野村総合研究所の鈴木良介さんがよくおっしゃっている部分でもあります。
- ドライヤーメーカーは、これまで購入時点(POS:Point Of Sales)のデータしか把握できなかったかもしれません。(それもこれまでは流通企業からデータをもらわないと、把握できなかったのですが。)
- 今後はこういった技術により、利用時点(POU:Point Of Usage)のデータを取得し、より深く、お客様を理解することができるようになるでしょう。
- ・集める技術
- (データを回収する物理的な仕組みと、抵抗なく回収できる心理的な仕組み、スキル)
- ・貯める技術
- (長期的に保存、分析しやすいように分類するなどして保存しておく仕組み、スキル)
- ・理解する技術
- (分析可能な仕組み、理解しやすい可視化する仕組み、スキル)
- ・対応する技術
- (その解釈に基づいて、打ち手が打てる仕組み、スキル、または打ち手そのもの)
- 徐々にこれらの技術が揃ってきたからこそ、ビッグデータの潮流が来ているのでしょう。
- 私たちのところに頂くご相談の内容として特に多いのは、「対応する技術」の相談です。分析してくれる会社は時代の流れなのか、だんだん増えてきています。貯める仕組みを提供してくれる会社も増えてきています。ただし、分析の結果に対して、課題解決の部分まで提供してくれる会社はなかなかない。そう言われてご相談を受けることが多くなってきました。
- ただ、これらを全て思うとおりに実現できているところは現時点では非常に稀だと思います。
- ■結局は「ひと」
- その理由としてよく出てくるのが、「人材不足」と「担当部門が不明」という問題。
- うちの会社でそれは誰がやるの?どの部門がやるべきなの?
- 事業部門:
- 「これは全社の取り組みだ!」「分析をするシステムが必要だ!」「さすがにシステムのことは事業部門で勝手に進めるわけにはいかない」「そもそもぼくたちはどんなシステムが必要なのか、よくわからないし!苦笑」
- ということから情報システム部門に白羽の矢が。
- 情報システム部門:
- 「でも、ビッグデータに積極的に投資する意味を見いだすのは仕組みを作るシステム部門ではなく、そのデータを活用する事業部門だ」「事業部門がきちんとデータの活用の仕方や、どうやってそのデータを活用してビジネスをするんだ、それはさすがに事業部門が考えてくれ。」「ぼくらはシステムの仕組みをそれにあわせてつくるから!」あるいは、「じゃぁそのシステム投資を全部事業部門で持てるのか?」
- となったとたんに、しゅるしゅると話がしぼんでしまい、なかったことに、なんてのもよくある話かもしれません。
- これは、企業において、この「データ『活用』の取り扱い部門」の位置づけが非常に曖昧だからです。投資なのか、コストなのか。社内システムなのか、事業部の取り組みなのか。そして、その責任者は誰なのか。「管理」は情報システム部門がやっているが、「活用」になるとかなり曖昧になってきます。
- 一方、わりと成功しているのでは?と感じる企業には、「データ活用のブルドーザー」(専門知識よりもさきに、とにかく、やらなきゃ!という気持ちにあふれて、どんどん推進してしまうひと)がいることが多いと感じます。
- 自ら社内調整をして、いろいろなところにかけあって、いろんな勉強会に潜り込んで、詳しくなって、その繰り返しなので、社内でビッグデータ(あるいはデータ活用)ならあのひとだよね、となって、結果的に、その人を中心とした、組織がつくられていく。
- これは完全に私の勝手な偏見ですが、ちょっとぐらいブルドーザー的要素が強いほうが成功しているケースのほうが多い気もします・・・笑
- もはやこうなると、結局は知識ではなく、その人のやる気の問題なのでは、と思うことも。
- もちろんいろんなハードルがあるので、一筋縄ではいかないことがたくさんあるはずなのですが、それでもそのあたりのハードルをクリアしてしまう、その方たちのモチベーションには脱帽です。
- たくさんの会社の方とデータビジネスについてお話させて頂く機会が増えてきたのですが、「人がいない」というのは、人数の問題ではなく「ちょっとくらいのハードルなら(あるいはかなり高いハードルでも死ぬ気でこえていくような気持ちで)推進する、高い意欲のある人材がいない」ということと同義だな、ということが、よくよく聞くとわかってきました。
- ここに対する「これ!」という明確な解はまだもっていなく、私たちも手探りの状態でいろんな会社の方たちと、「データ活用の人材育成」というテーマでよくディスカッションをしていたりもします。
- なので、とにかく自分たちでやってみよう!ということで、弊社のデータベースマーケティング部には分析チームも作りました。なんでもやってみないとわかりませんよね!(笑) ベテランのデータアナリストがすぐそばにいるおかげで、これまで以上に分析の視野が広く、深さも深くなっています。すでに、「とにかくやってみる」ことの価値を実感しています。
- ■「見える化」できるということは、ダイレクトマーケティングと相性がいい
- 多少強引ですが、これらを全部まとめてひとことで言ってしまうと、お客様の動向を「見える化」しているとも言えます。見えないから対応できないわけで、見えてしまうと、何かしらの対応が可能になることも多いのです。
- そういう意味では、ビッグデータと、ダイレクトマーケティングの部門の相性は非常にいいと言えると思います。人材不足と言われている中で、一番「データの活用」に近い場所にいる人たちは、普段からデータ(の量や質に関わらず)に触っている「WEBまわりの解析やPDCAをやっているひとたち」「ダイレクトマーケティングをやっているひとたち」なのでは、と最近では思うようになっています。
- では、「見える化」できると具体的にどんな効果があるのか。
- (厳密にいえば、「見える化」する「だけ」では解決しないので、それによってどういうアクションがとれて、その結果、どんな効果があったのか、という事例です。ビッグデータの話というよりは、ダイレクトマーケティング本来の話題に戻ります。)
- – あるネット通販の事例 –
- あるネット通販では、スタート時からたくさんの会員獲得をするために、男女均等にネット広告を打っていました。会員登録時点では、男女半々の割合で登録があったからです。CPAで目標値をクリアしていれば広告投下は継続する、という判断をしていました。
- そのネット通販を運営する会社では、実店舗も展開しているのですが、その来店比率は女性の方が多くなっていました。そうすると、なぜお店よりネットのほうが男性が多いの??という疑問がでてきました。
- そこで、「登録」ではなくて「購入」までの購買プロセスをきちんと把握したところ、「購入者全体」については、全体は、やはり女性のお客様の購入者が多い。もしかすると、この男女の登録の比率は半々でも、購入については違うかもしれない、ということで、ネット広告経由での登録者に限定して、購入経験や購入回数、購入金額、ログイン回数などについて分析をしました。
- 結果は予想通り。ほとんど男性は会員登録で終わっていて、購入どころかログインすらしていませんでした。
- 購入の比率は男性:女性=1:9。男性の会員登録したお客さまの大半は購入していない結果となりました。
- つまり、いくら男性に広告を投下しても、ネット通販の売上が全然たたないのです。
- この瞬間から、広告投下を女性に絞ったことは言うまでもありません。かわりに女性の広告投下の対象者(エリアや年齢層、媒体数)を拡大して、資源を集中しました。
- 改善前と改善後でROIは約2倍。
- 同じ広告予算で、倍ちかくの売上を獲得することができました。
- さらに、今度は年齢層もチェック。若い女性はこのネット通販を使うのか?年配の女性はこのネット通販を使うのか?を分析したところ、若い女性は登録はするが、購入頻度がとても低い。年配の女性はそもそも購入以前に、登録もしていない結果がわかりました。
- よって、若い女性へのネット広告投下、そして年配層へのネット広告投下をやめて、購入頻度が多い層へ資源を集中しました。
- 改善前と改善後で、ROIは約1.5倍。
- (年齢層別にROIの効果をブレイクダウンすると、若いユーザーはボリュームが多かったのですが、売上という視点では効果がなかったので、改善効果は非常に高い結果となりました。年配層はそもそものボリュームが少なかったので、ROI上での改善効果は少しだけ、という結果でした。)
- これらの連続した改善で、トータルでみるとROIは約3倍に。
- どこに改善できる余地があるのか?を発見すると、それに対するアクションがとれる。
- 改善効果がものすごくわかりやすく出たケースです。
- ■「見える化」の取り組みで、気をつけたいこと
- 問題解決のための「見える化」のあとは、必ずその課題に対しての「アクション(課題解決)」が必要です。裏を返すと、「アクションがとれない」見える化にはあまりお金を払う価値はありません。
- 何でもかんでも「見える化」すればいい、ということではありません。「見える化」するだけでとんでもないコストがかかることもあります。(このコストには、時間コスト、社内調整コスト、機会コストなど、さまざまなコストが含有されます。)
- 果たして、その「見える化」したい内容は、解決できるアクションがあるのか?と自問自答することこそが大事だと考えています。
- 自社のビジネスや自社のチーム全体を見て、人的リソース、金銭的なリソース、技術的リソースなどのさまざまな面から判断します。「アクション可能な内容」から徐々にその範囲を拡大していくこと。小さくはじめて、大きくひろげる、ということが大切です。
- 最近バズワードのように頻繁に言われているのが、オフラインのデータとオンラインのデータを統合して、分析すればきっとすごいことができる!ということですが、まさに注意したいところはここ。オフラインデータとオンラインデータの統合は魔法の杖ではありません。
- とはいっても、これが実現すれば本当にすごいのです。
- データ数・ユーザ数が多くなればその威力も計り知れないインパクトがあります。間違いなくすごいのですが、その前に一度冷静に、自社の環境を正確に把握することが重要です。
- (ちなみに、この仕組みをものすごく活用して成功している会社もすでにたくさんあります。この点について否定的なわけではなく、むしろ積極的にとにかくはじめてみる、ということには大賛成です。ただし、考えるべきところについては考えてから、という前提ですが。)
- 「見える化」の取り組みで注意するべきポイントはいくつかあると考えています。
- ・ちゃんとデータは統合分析が可能な状況か。
- ・オンラインのデータとオフラインのデータは同じ人単位でひもづけられるのか?
- そしてそれは、
- ・必要なアクションのための分析データになりうるのか?
- ・同時に、その分析結果から、アクションがとれるのか?
- などをあらかじめ把握しておく必要があります。
- そういう意味では、
- ・「いまあるデータが何か」
- という視点も大事ですが、
- ・「何をしたいのか」
- ・「そのためにはどんなデータが必要なのか」
- ・「そのデータを集めるにはどうしたらいいのか」
- ・そもそもそのデータは自社だけで集めることは可能なのか
- ・誰かから入手しなければいけないのか
- という「データありき」ではなく、「ビジネス目的起点」でのデータ収集に関するマネジメントが必要になってきます。
- (ビジネス視点や技術視点がいろいろ複雑に絡み合いますので、これはこれで「誰がやるんだ」「どこの部門ができるんだ」という曖昧な領域という問題が発生します・・・)
- これまたいろいろな方々とお話をさせて頂いている中で、この解はなんとなくぼんやり見えてきていて、「みんなでやればいいじゃない!」と思うのです。(なんだか言葉にしてしまうと元も子もないですが、きっと現時点では一番いい方法なのでは?という気もしています。)
- ※次回は「見える化」の具体的な視点、分析の方法論について、の予定です。