数字は語る!マーケティングリサーチャーが読み解く最新消費者トレンド
インターネットリサーチ国内No.1の実績を誇り、日本のマーケティングリサーチ業界を牽引し続けているマクロミル。
リサーチャーの在籍数も国内随一の同社で、すべてのリサーチャーを統括している芦沢広直氏が、豊富な経験とオリジナリティ溢れる独自の視点で、リサーチデータから消費者トレンドや変化の捉え方を紹介する!
第3回:家電製品を選ぶ基準に変化の兆し。
3月の年度末。新生活を控え、転居や部屋の模様替えなどで家庭電化製品の購入を検討している人も多くなるだろう。
今回は毎年実施している「家電購入に関する実態調査」(対象:全国30~59歳の既婚男女 実施月2012年12月) の結果を昨年と比較しながら選び方の変化について紹介したい。
■2012年の主要家電の購入率は軒並み低下
<図1:最近1年間購入した家電製品>
2012年の主要家電品の1年以内の購入率を2011年との比較でみると多くの品目で昨年の実績を下回った。特に、薄型テレビやパソコンの購入率の落ち込みが顕著だ。
2011年に起きた東日本大震災や地上波デジタル放送への完全移行などを要因とする買い替え需要の反動がリサーチ結果でもうらづけられる結果となった。
■ネットショッピングで購入するケースが拡大。
パソコンや空気清浄機では3分の1がオンライン購入者。
次に、最近1年間それぞれの製品を購入した人をベースに、店頭ではなくオンラインで購入した人の比率をみてみた。
<図2:オンライン購入者の比率 (対象:各商品1年以内購入者)>
こちらも多くの商品でネットショッピングによる購入が広がっている。特にパソコンや空気清浄機では購入者の3分の1がオンライン購入者になっている。配送されて電源をつなげば即使用できるような電子レンジ・オーブンや空気清浄機・ビデオカメラなどの商品ほどネットショッピング比率が伸びているようだ。
また、エアコンや洗濯機、冷蔵庫のように自宅に配送された後、設置の手続きが必要となる商品はこれまでサービス対応も含めて店頭で購入されることが多い商品であったが、これらの商品のいくつかもネット購入者が拡大している。
■商品選びで重視される「基本性能」と「メーカーブランド」
ネットショッピングによる購入者が増えた「電子レンジ・オーブン」「空気清浄機」「ビデオカメラ」について、購入した際に重視したことを昨年の傾向と比較してみた。
いずれの商品も「基本性能がよい」ことが最も重視されており、しかもその重視度は昨年比で拡大している。またメーカー(ブランド)に対する重視度も同様に伸長している。
昨今家電商品の購入の際は事前にネットで商品の機能や評判を調べることがあたりまえになっているが、この行動変化が商品の選び方にも影響を与えていると考えられる。
これまで家電品選びといえば店頭で陳列された商品のラインナップの中から自分の要望に最も適した商品を探し出すことだった。
その際は大差のない基本性能というより華やかなPOPや店員が語るウリの機能に魅力を感じて、価格の値ごろ感とあわせて購入を判断するケースが多かったと考えられる。
しかしながらショッピングサイトやクチコミサイト上の商品ラインナップとなるとアイテム数も膨大で、しかも行儀よく一定に縦並びに整列されている。その中から探さなければならないので、価格帯や性能ランクなどの選択条件をかけたり、人気ランキング別の抽出をかけてから品定めをするのであるが、一覧画面で得られる情報はメーカー名と価格とその他僅かな情報に限られる。それらの判断材料の中で「これは使いやすそうだ!」や「こんな使い方は便利かもしれない!」といった新しい発見はなかなか得られない。
それでも選ばなければならないので、基本性能の僅かな差やメーカーのブランドイメージを判断基準に商品を選ぶようなケースが増えているのではないだろうか。
ネットショッピングの広がりとともに、このような商品選びの変化の兆しが潮流として拡大していくならば、メーカーサイドでも商品設計の考え方やメーカーブランドの定義についての対策が必要になるかもしれない。
【調査概要】
今回調査(2012年11月実施)の概要
●調査対象:マクロミルモニタ 30~59歳以上の既婚男女 (性年代別に均等割付回収)
●調査地域:全国
●調査方法:インターネットリサーチ
●調査時期:2012年11月26日 (月)~11月27日 (火)
●有効回答数:930サンプル