マルチスクリーン時代の消費者行動を探る
PC、スマートフォンにとどまらずタブレットやTV、ゲーム端末など様々なデバイス(スクリーン)がインターネット接続機能を持つようになり、消費者がインターネット上のコンテンツやサービスを利用できる環境が劇的に変化しています。
トリプルスクリーンとよばれる、テレビ、PC、モバイルという組み合わせを考えるにとどまらず、より広い視野を持って消費者のデジタル行動のトレンドを把握することが、今後ますます重要になってきます。いったい消費者は、「どのスクリーンから」「何を視聴し」、「どんなサービスを利用」しているでしょうか?本コラムではニールセンが行ったマルチスクリーン(7つのスクリーン)の利用動向調査「デジタルコンシューマーデータベース」をもとにスクリーンとコンテンツの関係を探っていきたいと考えています。
第2回:消費者はどのスクリーンから何を見ているのか?
前回は各スクリーンの保有状況と利用実態を俯瞰的に見ましたが、今回は実際に消費者がどのスクリーンを通して、何を見ているのか、どんなサービスを利用しているのかを見て行きたいと思います。
以下の各図表は、各保有デバイスからそれぞれ最も利用するコンテンツやサービスを尋ねたものです。週に1回以上、各デバイスを利用している人が、そのデバイスを通してどんなコンテンツを利用しているのかを表しており、割合が高いデバイスとコンテンツの組み合わせほど多くの人に利用されていることになります。
まずは、全体を俯瞰してみたいと思います。その中でも特に、利用割合の高いデバイスの上位3位に焦点をあてました。使用するデバイスと閲覧するコンテンツの組み合わせでは、テレビから「テレビ番組や映画」を視聴する人の割合が最も多く72%となり、この組み合わせが未だ多く人に支持されていることがわかります。次いでPCから「情報検索」を利用する人が39%、携帯ゲーム端末から「ゲーム」を楽しむ人が19%となりました。
次に多かった組み合わせは、PCから「ニュースや天気」を見る、スマートフォンから「情報検索」をする人の割合で、それぞれ10%程度となっています。
テレビ、PC、携帯ゲーム端末に次いでスマートフォンからのコンテンツ利用割合が上位に入ってきており、現在の端末普及速度から考えると、企業としては、より積極的に『どこでも「情報検索」を行うことができる』という特性を考えたコミュニケーション手法を考えていく必要が出てくるでしょう。
タブレット、電子書籍リーダーは普及率との関連もあり、利用されているコンテンツの割合も低くなりました。
図7
次に、全体の中でも利用割合の高かったテレビ、PC、スマートフォンに注目して、男女の比較をしてみます。テレビは、女性の利用割合が75%と男性の69%より6ポイントほど高く、女性の方がテレビから「テレビ番組・映画」に接触する機会が多いことが分かります。PCとスマートフォンの利用では、男性はPCから「ニュースや天気」を見る割合が14%、スマートフォンから「情報検索」をする割合が13%と女性よりも倍程度の利用率があります。一方、女性は9%がPCからの「ショッピング」利用とスマートフォンからの「ソーシャルネットワーキングサイト(SNS)」利用となりました。PCからの利用コンテンツでは「ブログ・掲示板」も女性の利用割合が若干高くなっています。男性は情報を求め、女性はショッピングやコミュニケーションにデバイスを活用している傾向が見えてきます。
図8
では年代別ではどのような特徴があるのでしょうか。10代と60代以上の利用動向をみてみました。テレビから「テレビ番組・映画」を視聴する割合は両年代で同程度の割合となりましたが、その他の組み合わせでは違いが見られ、各年代のライフスタイルが垣間見られる結果となりました。
10代ではPCとスマートフォンの利用動向に特徴が見られます。PC利用では「情報検索」が23%と最も高くなっていますが、「投稿動画」を見る割合も20%と高く、また携帯ゲーム端末からの「ゲーム」利用も全年代の中でも最も高い割合となり、エンターテイメントコンテンツへの興味が大きいことが分かります。
スマートフォンからのコンテンツ利用では「SNS」が17%で最も高く、図表にはありませんが「ブログ・掲示板」の利用割合も「ラジオ・音楽」の6%についで割合が高くなっています。これらを従来型携帯電話からの利用コンテンツと比較すると利用されるコンテンツの順位に大きな変化はみられず、10代はスマートフォンを保有することで利用動向が大きく変化している状況ではないようです。
一方、60代以上のデバイスとコンテンツの組み合わせは、PCから「情報検索」が39%、「ニュース・天気」が16%、「ショッピング」の利用が9%と、その他のデバイスからのコンテンツ利用割合に比べPCの利用割合は未だに高く、テレビと合わせると、従来型のスクリーンの利用が主流となっているようです。
図9
図10
さらに男女の差をもう少し詳しく見ていきます。20代の男女の利用動向に焦点をあてました。
まず、テレビから「テレビ番組・映画」の視聴は女性の方が若干高く73%となりました。PCからの利用コンテンツでは男女とも「情報検索」が最も多く36~38%程度で、大きな差はありません。
スマートフォンからのコンテンツの利用傾向では、男性は「情報検索」を利用する割合が最も多く22%、女性は「SNS」を利用する割合が最も多く20%となりました。
コンテンツに注目すると、20代女性の「SNS」の利用が特徴的でスマートフォンから20%、PCから11%、従来型携帯電話から7%といずれも男性の倍近い利用者が存在していることが分かります。一方で男性は「ゲーム」への関心が高いようです。
図11
最後に購買品によるデバイスとコンテンツの組み合わせの傾向を見ていきます。今回は「化粧品購入者」に注目してみました。女性が中心となるため、傾向としては女性全体に近くなりますが、スマートフォンから利用するコンテンツでは、女性全体が「SNS」の利用割合が最も高いのに対し、化粧品購入者では「情報検索」の利用割合が最も高かくなっていました。また、PCからの「情報収集」も若干ですが高い傾向がありました。化粧品購入者はオンラインの情報収集をうまく活用し購買をしている姿が想像できます。
図12
以上、今回はデモグラフィックを中心にスクリーンとコンテンツの組み合わせ、その利用動向に違いを見てきました。大きな視点で見ると、男性は情報把握のために様々なスクリーンを駆使し、女性はコミュニケーションを中心にスクリーンを利用していると言えそうです。年代別では若年層ではスマートフォンの存在が大きなものとなっていますが、年齢が上がるにつれ従来型のスクリーンも依然として支持されていました。実際のマーケティングを考える上では、今回よりさらにセグメントを分けて状況を把握する必要があると思いますし、加えて複数のスクリーンの同時利用や購買プロセスでのスクリーンの役割なども考えながら、ターゲットに最適にリーチ出来るスクリーンを把握することが、必要不可欠な状況になってくると思われます。その状況を見据えながら、ベースラインとしてのスクリーンとコンテンツの最頻利用の組み合わせを把握することは重要性を増していのではないでしょうか。
次回はデバイスの同時利用状況と、購買プロセスにおけるスクリーンの関わりについて考察していきたいと思います。