弘亜社がみる、東南アジアのOOH広告&商業施設事情
創業74年のOOH広告会社の弘亜社は、2010年から本格的に東南アジアへの進出を開始。
タイではバンコクのスワナプーム国際空港と市内を結ぶ国鉄路線「エアポートレールリンク(略称ARL)」の広告媒体と駅商業エリアの独占販売権を獲得。
このコラムでは東南アジアのOOH媒体(屋外・交通広告媒体)と商業施設の現状についてお伝えします。
第2回:バンコク・屋外広告事情
屋外広告天国バンコク
「○○天国」という表現がありますが、その言葉を辞書で調べると「そこで暮らすものにとって、理想的な世界。何にも煩されない、快適な環境」という意味が載っています。
第2回目の今回は、バンコクの屋外広告事情を取り上げますが、屋外広告にとってバンコクは天国に違いないでしょう。バンコクにも、もちろん屋外広告に関する規制があり、「何にも煩わされない」という表現は大袈裟かもしれませんが、日本より天国であることは間違いありません。
街中360°広告媒体
「屋外広告天国」にふさわしく、バンコクの街は広告で溢れかえっています。
人通りが多く、視認性の良い場所であれば、たいてい広告媒体として開発されています。
では、これよりバンコクの主な屋外広告をご紹介します。
巨大屋外看板に驚愕
日本からバンコクへの渡航者が屋外広告に関して最初に驚くことは、屋外看板の大きさだと思います。多くの渡航者は空港からバンコク中心街に向かうとき高速道路を利用しますが、その高速道路脇には日本ではなかなかお目にかかれない巨大看板の数々が鎮座しています。
これらの巨大看板は小さいもので横幅20m程度、大きなものになると100m近いものが存在します。
【高速道路脇巨大看板①】インターネットプロバイダーの広告
【高速道路脇巨大看板②】電機メーカーの広告
【高速道路脇巨大看板③】バンコク都によるフットサルW杯告知広告
(弘亜社インターナショナル制作)
高速道路アーチ看板
高速道路脇には、巨大看板が並びますが、車の頭上にも広告が登場します。高速道路に架かるアーチ広告です。日本では車の安全走行上規制があるようですが、タイでは一般道も含めて道路上に架かる広告を見ることができます。弘亜社が広告媒体の独占販売契約を結んでいる高架鉄道「エアポートレールリンク」の高架橋と一般道の交差部分にも横幅21mの大きな看板が設置されています。
【高速道路アーチ看板】中国系銀行の広告
【エアポートリンクと一般道の交差部分に設置された看板】自動車メーカーの広告
ビルラッピング広告
バンコクの市街地に入ると目に飛び込んでくるのがビルの外壁面ラッピング広告です。
比較的高層のビルの壁面の大部分をステッカーやシートで被いラッピングする広告媒体です。ステッカーの場合は、窓部分がドット状に加工されておりビル内からの視認性は確保されています。夜間はライトアップされるものもあり、暗闇に浮かび上がる広告は、ひときわ目を引きます。
【ビルラッピング広告①】ビールメーカーの広告
【ビルラッピング広告②】清涼飲料水メーカーの広告
【ビルラッピング広告③】バンコクで有数の高さを誇る
バイヨークタワーに付けられた自動車メーカーの広告
【ビルラッピング広告④日中】自動車メーカーと清涼飲料水メーカーの広告
【ビルラッピング広告⑤夜間】
中心街にも所狭しと広告媒体
バンコク中心部の幹線道路に入ると屋外広告媒体の密度は更に高まります。バンコクの中心街は、大きな幹線道路と、そこにつながる小路で構成されています。そのため幹線道路には広告が集中します。
下記の①の写真は幹線道路の上を通るBTSと呼ばれる高架鉄道の柱を利用した看板で、数キロに渡って設置されています。
②の写真も幹線道路わきの歩道に設置された電飾看板で、等間隔で道沿いに並んでいます。
③の写真は幹線道路沿いの商店の壁面を利用した広告で、多くの商店の壁面が媒体化されています。
④の写真も商店ですが、こちらは軒先を利用したものです。この媒体は、商店にとっても日よけ効果があり喜ばれているそうで、思わぬところで二次的な効果を生んでいます。
⑤の写真の幹線道路に面する高層ビルに設置されたビジョン広告です。バンコクでも近年大型ビジョンが急増しており、街のあちこちで様々な広告映像が流されています。
【①幹線道路の広告媒体】携帯電話会社の広告
【②幹線道路の広告媒体】サプリメントの広告
【③幹線道路沿いの商店の壁面広告】コンドミニアムの販売告知広告
【④幹線道路沿い商店の軒先広告】バンコク都によるフットサルW杯告知広告
(弘亜社インターナショナル制作)
【⑤幹線道路沿いの大型ビジョン】
街中のオモシロ広告
バンコク中心街を歩くと、単なる広告看板だけでなく、優れたアイデアで人々の興味を喚起する広告物を発見することができます。
①写真は、高架鉄道の中でも最も利用者数が多いサイアム駅のホームから見える清涼飲料水の瓶を模した特殊ビルラッピング広告です。50m以上はあるであろう巨大な瓶のシートラッピングは圧巻です。
②の写真は、バンコクの人気百貨店「サイアムパラゴン」の敷地内に設置されていたサメのオブジェ広告です。この百貨店の地下には水族館があり、水族館のサメが地上に現れるという設定です。置かれたベンチに座ればサメに襲われる寸前の迫力写真?が撮れるので記念撮影スポットとしても人だかりができていました。
以上が空港からバンコク中心街までの屋外広告のダイジェストです。
【①特殊ビルラッピング広告】清涼飲料水メーカーの広告
【②オブジェ広告】百貨店地下にある水族館の広告
バンコクにおける屋外広告の重要性
ご覧頂いたようにバンコクには、様々な屋外広告が溢れています。
バンコクに屋外広告が多い理由は、広告規制の寛容さに加え、人々の外出率の高さにあります。安価な屋台、食堂が多いタイでは、人々の食事は基本的には外食であり、長時間屋外に滞留することが多いのです。また、急速なモータリゼーションや公共交通の発達により、外出が容易になりました。車利用の増加は、交通渋滞を起こし、屋外での滞留時間をさらに長いものにしています。このような状況により、屋外広告は消費者との重要な接点として機能しています。
屋外広告の今後の展望
タイの人口と富、世界各国からの観光客が集まるバンコクの屋外広告の活況は今後も続いていくと思われます。そして、様々な情報が溢れる街の中でいかに効果的な広告コミュニケーションを行うかは、いつの時代でも企業と広告会社にとって大きな課題です。現在、タイにおける携帯電話の普及率は80%を超えています。スマートフォンも急速に普及しています。日本と同様に最新のIT機器と屋外広告の連動、デジタルサイネージ、LEDの活用などが今後の屋外広告の可能性をさらに広げていくと思います。
個人的には、地震や台風などが少ないタイでは、屋外広告の自由度や、その驚愕的サイズに過度な規制が入らないことを願っています。
【次回コラム内容】
タイ・バンコクの商業施設事情をお伝えします。