第3回「業界の“今”を描く経済ドキュメンタリー テレビ東京『ガイアの夜明け』」
はじめに
第3回目は、「カンブリア宮殿」と並んでテレビ東京の2大経済ドキュメンタリー番組と称される「ガイアの夜明け」(毎週火曜 22:00~22:54)の攻略法についてご紹介したいと思います。
「ガイアの夜明け」は2002年にスタートした経済ドキュメンタリーで、様々な業界の最新動向を描いたり、経済ニュースの真相に迫る人気番組です。「カンブリア宮殿」が毎回1社だけにスポットライトを当てるのに対し、「ガイアの夜明け」は1つのテーマに沿って1~3社の動向が紹介されます。複数の企業が取り上げられる分、1社あたりの放送時間は短くなりますが、それでも大きなPR効果が期待できます。実際に弊社で取材獲得をサポートした企業は、番組で20分近く取り上げられ、広告換算額はおよそ4億円。会社や商品の認知度だけでなく、売り上げアップにも繋がりました。ですが、この番組もまた「カンブリア宮殿」と同様に多くの企業から売り込みがあり、その中から取材を勝ち取るのは至難の業と言っても過言ではありません。
そこで今回は、第1回で紹介した「カンブリア宮殿」と比較しながら、「ガイアの夜明け」の特徴と攻略法について解説したいと思います。
企業のネームバリューよりも業界の新しい動きが重要
前段で、「カンブリア宮殿」は企業を紹介する番組、「ガイアの夜明け」は業界の動向を紹介する番組、と簡単に説明しましたが、これは番組担当者のネタ選びにおいても違いが顕著に表れています。例えば「カンブリア宮殿」は認知度や話題性など「企業のバリュー」を重視するのに対し、「ガイアの夜明け」は取り上げる「テーマ」を重視しています。つまり「ガイアの夜明け」への露出を目指すには、有名な企業かどうかよりもその業界に面白い動きがあるかどうかというのが非常に重要になります。例えば最近の放送で、いまブームになっている「高級食パン戦争」をテーマにした回がありました。その中でオープンしたばかりの食パン専門店、食パンに活路を見出す老舗総菜店、連日行列ができる人気店が取り上げられたのですが、3社とも「カンブリア宮殿」でよく取り上げるようないわゆる業界大手の企業ではありませんでした。「ガイアの夜明け」では、誰もが知っている大企業でなくてもテーマや取り組みが面白ければ取材される可能性があるということです。
テーマは「業界の最新動向」と「社会問題」が半分ずつ
番組が取り上げるテーマは「コンビニ」「アパレル」「外食産業」など、ある業界に絞って
取り上げることが半分、もう半分はいま世界・日本で起こっている「社会問題」になっています。ここ最近の放送の事例をご紹介します。
<業界の最新事情に関する放送回>
・「町工場が食卓を変える!」(2019年12月17日放送)
いま百貨店などでは「ル・クルーゼ」「ストゥブ」といった海外メーカーの鍋が大きく売り場を占めているが、そうした海外メーカーと肩を並べるメイド・イン・ジャパンの「鍋」がある。無水調理のできる鋳物ホーロー鍋「バーミキュラ」だ。そのバーミキュラが今年大きな進化を遂げようとしていた。その壮大な計画に密着取材。一方、第2のバーミキュラを目指そうと三重の町工場もこれまでにない新たな鍋を開発していた。ニッポンの食卓を変えようという町工場の、沸騰するほど熱い戦いを取材する。
・「コンビニ大変革時代」(2019年9月24日放送)
日本の全国津々浦々にある「コンビニ」。今やセブンイレブン、ファミリーマート、ローソンの大手3社を中心に全国で6万店に迫る。24時間いつでも豊富に商品が並び、手軽で便利なサービスで成長を続けてきたが、ここにきてそのコンビニのビジネスモデルが大きな岐路に立っている。仕事の増加、人手不足、人件費の高騰で現場からSOSが上がっているのだ。そんな中、各社とも新しい時代のコンビニの在り方の模索を始めている。令和の時代に始まった“コンビニ大変革時代”。その変革の最前線を追う。
<社会問題に関する放送回>
・「残業を減らす!45時間の壁」(2019年12月10日放送)
2019年4月、大企業の残業規制が始まった。法律による上限が施行され、45時間以内の月を年6回設けなければならなくなった。各企業が対応に追われる中、創業当初から店内調理にこだわり、家庭の味を提供してきた定食チェーン・大戸屋。そのこだわりが労働時間の増加を招いていた。店内での仕込み時間が大幅にかかり、労働時間の削減に頭を悩ませる。さらには各店舗の深刻な人手不足。大戸屋で120日間、3店舗の40代店主たちに密着。残業を減らす闘い、そしてその先に待っているものとは…。
・「“棄てない”闘い!~食品ロス削減2020~」(2020年1月14日放送)
国内で「まだ食べられるのに棄てられる食品」の量は、年間600万トン以上。そんな中、賞味期限や過剰在庫などを理由に棄てられる運命にある“ワケアリ”食品に、再び「売るチャンス」を与えるべく動き出した企業がある。カギを握るのは、かつてないマッチングだ。一方、一流シェフたちも新たなチャレンジをスタート。それは「腕とアイディアで調理現場での廃棄を減らすというもの。そこには家庭でも取り入れられる様々なヒントが。食品ロス削減推進法が施行され取り組みが本格化する中、その先頭を走る人々の奮闘を追う。
企業のマイナス面に鋭く切れ込むことも
「ガイアの夜明け」では業界の最新動向や社会問題に取り組む企業を取り上げるだけでなく、経済ニュースに目を付け、なぜそのような事が起きたのか?いまどうなっているのか?などニュースが起きた企業の背景とその後の状況に迫るような内容が放送されることがあります。2019年には、3月期連結決算の最終損益が193億円の赤字になることを発表したライザップに密着取材し、企業買収を繰り返し急速に肥大化しすぎた現状と立て直しに向けた取り組みを報じていました。番組中には買収した企業を葛藤の末に売却するシーンまで描かれており、衝撃的でした。多くの視聴者も「そんなシーンまで撮影させるのか」と思ったのではないでしょうか?会社の失敗やネガティブな面を見せることはPR目線で考えるとマイナス効果にもなりかねません。しかしい社にとってネガティブな「闇」の面だけでなく、どのような思いを持ってどんな解決策を導き出していくのか、その“夜明け”を描くことがこの番組の本質であり、企業が見せたがらない部分まで見せるからこそ視聴者から大きな支持を得ているのだと思います。また大きな影響力を持つそんな番組だから、普通では見せられないような裏側にまでカメラが入ることができたのだと思います。
プロモート資料に何を記載すべきか?
番組にアプローチする際に使用するプロモート資料ですが、基本的には第一回のコラムでご紹介した「カンブリア宮殿」用のものと大きくは変わりませんが、一つ注意していただきたいポイントがあります。それは「会社の課題と解決策」の項目を「業界の課題と解決策」または「社会問題とそれに対する自社の取り組み」に変えることです。先述の通り、「ガイアの夜明け」は業界の動向や社会問題に対する企業の取り組みを取り上げるケースが多く、ネタを選定する上で、このコンセプトに合っているかどうかが重要になります。ですのでプロモート資料を作成する際には、まず自社の取り組みから逆算して「業界の課題」や「社会問題」をあぶり出し、それを明記した上で自社の取り組みについて紹介すると良いでしょう。
2020年1月から番組をリニューアル
「ガイアの夜明け」は2020年1月に大きなリニューアルを行い、番組の顔である「案内人」を10年間務めてきた江口洋介さんから女優の松下奈緒さんにバトンタッチしました。リニューアルについて野田チーフプロデューサーは「平成の時代が終わり、これから日本、日本経済はどこに向かうのか?いかに働き、いかに生き抜いて行けばよいのか?少子化・超高齢化と課題山積の日本では、既成概念を打ち破る新たな発想や行動が求められています。女優・ピアニストとして松下さんは、しなやかに、そして自分らしく活躍されています。番組が向き合うテーマは、困難が伴うものが多いのですが、その行動力と感受性で、常に視聴者に“新鮮な風”を吹き込んでくれることを期待しています」とコメント。番組のコンセプトやネタ選びの方向性は変えることなく、新しい視聴者層を取り入れ、今後さらにパワーアップして行きそうです。
まとめ
「ガイアの夜明け」は「カンブリア宮殿」と同様に、多くのビジネスマンが視聴している、とても影響力が高い人気番組です。取材を獲得するのは簡単ではありませんが、業界の動向や社会問題と自社の取り組みを上手く絡めた資料を作成し、アタックするようにしてください。