ダイレクトマーケティング課題の救急治療室

通信販売を始めとした、ダイレクトマーケティングの課題解決には、改善のため早急に適切なサポートを必要とします。その現場は、救急救命室さながらです。このコラムでは、今の通販業界の実情や、手遅れにならないためのアドバイスなど、読みながら学べるコンテンツをお届けします。

永瀬晃大朗

[広告改善企画]気になるあの広告を勝手にブラッシュアップ

マジワンでは、コンサルティングの一環で広告のチェックと称してブラッシュアップの提案を行っています。そのサービスが人気がありまして当社のブログでも実施したところ多くの反響がありました。

ということで、今回はマジワンの、「広告ブラッシュアップ方法」について見かけた通信販売の広告を例に解説していきます。広告の考え方や作り方、ブラッシュアップやPDCAの方法の参考としてぜひ読んでください。

また、今回の企画については著作権に配慮し、企業などが特定できるような商品名、本文、連絡先等を分からないように実物の広告を加工させていただきました。
その点をご理解ください。

広告チェックのステップについて

まずは、実際にチェックをする前に、どのように広告の確認を行っていくのか?そのステップについて解説いたします。

キャッチやレイアウトなどの作り込みの精度などを確認する、「現状の評価」をおこないます。
その上で、「商材やメディアなどの特性を理解する」ことが大事です。この商材群とメディアの特性を解析して、何ができるのか可能性を考えます。それを踏まえ、改善できそうなポイントを整理する「改善点の洗い出し」をして、出てきた改善ポイントを順番に落とし込んでいきます。

このステップで行うと、「なぜテストを行うのか?」ということをしっかりと理解できると思います。

1)現状の評価をする
2)商材やメディアなどの特性を理解する
3)上記を踏まえ改善点を洗い出す
4)テストをしていく上でのステップを考えていく

まずは実際の広告を確認

今回は「お腹の脂肪が落ちる」という効能を持つ漢方の広告を使って具体的に説明をしていきます。

 

広告の評価で考えるべきことは主に

1)コピーの強さ
2)レイアウト
3)各パーツの良し悪し
4)売り方(オファー)

となります。この4つが大きなポイントですが、主にコピーの説得の強さとレイアウトが重要です。また、売り方(オファー)については企業の個別事情も関わってくるため、今回の評価項目には含めないことにします。

1)コピーの強さ

比較的このコピーは強い方です。やはり、漢方という特徴から効能が強く言えるため、コピー単体で見ればサプリメントなどと比べても強い言葉が使えます。

一方、この強いをネガティブな側面で捉えると、漢方特有の「言えることが決まっている以上、言葉のブレが出しにくい」というポイントから、「お腹の脂肪が落ちる」「お腹が」「脂肪が」という表現に終始し、何がどうなるというポイントは伝わっても、どのようにという具体的な表現の幅がないため、消費者が共感しにくいコピーになっています。

これは、医薬部外品や化粧品、及び機能性表示食品など、厚労省の薬機法で定められている分野では多く見られます。効果効能を超えないレベルで表現に幅を持たせて上手く伝えることができれば、よりリアリティを持った伝え方ができるでしょう。これらの観点から、このコピーには強さはあるが、リアリティを持った表現になっていないという評価です。

2)レイアウト

この掲載紙のレイアウトはセオリー通りではなく、少し気を衒っています。商品特徴が抱える背景があるため致し方ないとは理解できますが、それによって消費者が読みにくくなっています。

また、パッと見た時点で広告と分かる掲載面になっているのもマイナスポイントです。そのため、レイアウトでこの広告は少し損をしていると思われます。

この掲載紙のレイアウトについては後ほど詳しく解説しています。

3)各パーツの良し悪し

漫画、本文についてです。掲載広告は紙面が限られているので特徴として文章量が多くなりますが、それを漫画で気を衒ったのはパーツとしては悪くありません。また、それぞれのパーツもかなり説得に寄与していると思われます。惜しい部分としては、お腹の脂肪が落ちてどうなるというアフター像を、もう少し具体的に想起できると良かったと思います。その部分が漫画における最後の1コマでしかケアされていないため、コンテンツとしては少し弱くなっています。

商材やメディアなどの特性を理解する

医薬品の広告に関してのポイント

今回は漢方という医薬品です。
お腹の脂肪が落ちる、肥満症に効く、そして便秘やむくみといった効果効能がサプリメント等と比べてはっきり言える点が一番の強みです。一方、先ほども記載をしましたが、効果外のものには言えません。作用機序に関わる部分では、体脂肪を分解する、代謝がアップなどはいえますが、それ以外は言えないというのが重要になってきます。

効果効能における補償行為ができない。

脂肪が落ちるとは言えても、確実に脂肪が落ちるという言い方ができません。そのため、「これが効きました」という体験談を使って効果効能を保証できないため、体験談を書くことができないのがサプリメント等との違いです。

商品をナンバーワンと褒めあげる行為ができない。

効果効能の保障というアプローチが、体験談やナンバーワンなどを使って確実性のあるように見せる行為ができません。

上記のポイントから、いろいろな表現でやりづらいので、PASONAという説得のプロセスにおいて、2番めの”アジテーション”が行いにくいといえます。

例えば、脂肪をそのままにしていると大変なことになるという話ができないと言うことです。脂肪や肥満症を放置すると生活習慣病になりやすいと言われていますが、それが言えません。なぜなら、生活習慣病になりやすいと言うと、この漢方が予防薬のように見えてしまうからです。

また、効果効能を含めて脂肪が落ちる、肥満症に効くまでは言えても、痩せるというニュアンスは病気の改善以上の効果になるため、これも言えません。つまり、ダイエットのような標榜はできないということです。

そのため、効果外という部分がアジテーションのやりにくさと、効果以上を言いながら痩身のようなニュアンスまでは出せないのがこの商品のポイントです。

体験談など共感性の高いコンテンツが出せないことについてもご説明します。これは、ユーザーが「これ私のことだ」と思う共感性の高いコンテンツを出すことがやりにくいということです。もちろん漢方薬の信頼性は高くなりますが、共感性を出しにくいのが医薬品の特徴です。

従って、アジテーションのやりにくさ、共感性のコンテンツの出しにくさ、この2つの部分がこの商品におけるポイントとなります。

[コラム]医薬品の通販について
医薬品の通販は定期コースで販売して良いのかと議論になった時期がありました。そのことから、通信販売の仕組みが整備されたのは比較的近年です。そのため、漢方薬を含めた医薬品の広告における当たりパターンは、まだしっかりと構築されていない部分があります。

PASONAのアジテーションが行いにくいこと、体験談の共感性が行いにくいこと。この2つの課題を解決するノウハウまで辿り着いていないのがこの医薬品広告の課題であると同時に、試行錯誤していくべきポイントです。

 

メディアの特性について

次にフリーペーパーの広告についてです。フリーペーパーは拡販紙とも呼ばれ、新聞よりひと回り小さいサイズが多いと思います。特徴としては、比較的しっかり読ませる読み物形式の記事が多いことです。そのため、これまでの当たりパターンも読み物として完成しており、記事に擬態したものが多くありました。その擬態ですが、広告とバレにくいことが大事です。広告と認識されると、それだけでしっかり読もうとする人が減ります。但し、興味があれば記事と思うことでより読む人が増えることもあります。

以前、webメディアのバナー広告において、メディアのトーンマナーに似せることによりクリック率が高くなった事例がありました。このことから、メディアの体裁に合わせるのは、広告らしさを払拭する一つのポイントであり、読ませ込んでレスポンスを上げるテクニックの一つとも考えられています。

フリーペーパーにおいては、まずはしっかり記事のように見せていくことが一つの勝ちパターンとなります。よく用いられたのは、体験談のような体裁です。それが当たりパターンとして確立していることから、メディアとしての体裁を整えながら、共感性のあるコンテンツでずっと自分の事だと思って読ませてクロージングに持って行く。これがフリーペーパーというメディアの重要なポイントです。

今回の広告の評価として、キャッチコピーは効果効能の規定の文言からずらしにくいと思うため、記載されている文言の重要なポイントに関しては精度が高いと考えています。

共感性の入り口としては、メディアに誘導するために漫画という手法のコンテンツを出しています。しかし、漫画は「サイズあたりの情報量」が限られているので、共感性を上げるためだけに漫画を入り口に使うのはもったいない手法というのが現状です。

当たりコピーは見えつつあるという評価点、構成レイアウトの入り口の作り方に関しては改善点が多いのが、フリーペーパー広告の総論としての評価になります。

以前、このサイトを運営している株式会社スタートライズと行ったセミナーでも使った例をここに載せておきます。よろしければ、ご参照下さい。

[コラム]漫画に関して
漫画という手法は、WEB広告におけるクッションページなどでも再評価されつつあります。古くは通信教育企業が顧客のクロージングに漫画を送っていたことから発展してきた手法です。
共感性の高まり易さ、読み易さ、納得性、という部分が手法として優秀ですが、上記の通信教育会社の場合においても十数ページくらいのサイズでありました。つまり、絵柄と文字をともに表現するため、サイズあたりの情報量が少し低いのが難点と言えます。

 

改善が必要なポイント

今回、改善していくポイントはレイアウトです。記事らしさをしっかりと作り「これは記事かも?」と思って読みたくなることが重要だからです。そのためには、まずは記事の体裁を入り口にすべきだと考えます。且つ、先述したとおり漫画は説得要素として少しもったいないため、漫画には頼りすぎず、コマ数も減らした方が良いでしょう。

漫画を置く場所もポイントになります。記事体が入り口なら右側から読んでいくので、左端に四コマ程度を置くと良いでしょう。新聞の四コマ漫画のように、左肩から流れるように説得する。もしくは、Zの流れのように右下の部分に四コマ程度を置く。このどちらかが良いと思います。四コマ漫画の使い方としては、こんなすごい物があったなんて!と言っているので、後半部分を軸に抜き出すと良いと思います。

トップの入り口は基本的に記事から。そして、漫画の使い方は、読み物として「なんか面白そうかも」と思わせるギミックとしての扱いと説得性です。つまり、共感性を記事の入り口にすべきというのが私の考えです。

4つのポイント

1つ目のポイントは、レイアウトを直すこと。

2つ目のポイントは、必然的に漫画に頼りすぎないレイアウトになってくるため、漫画を左肩が右下に置き、記事の入り口には共感性のあるコンテンツを作る。

3つ目のポイントは、読みやすい共感性のコンテンツに開発秘話を入れる。他社で「母のために作りました」と謳っているように、今回は祖母と母が抱える悩みがきっかけなので、「脂肪に悩む母を見ていられなかった」という娘の愛情というストーリーなどテーマをストーリー化にすると、しっかり読み込める流れが作れると思います。
出来ればストーリーの結論あたりに漫画を置くと、漫画のコンテンツとしては切り離されていても、読むと繋がっていることになります。

※開発秘話に関して
悩みからこれが大事だった!という部分のソリューションに繋げることができるため、体験談ではない形で使える医薬品の鉄板モノとしてのテクニックです。但し、実感して痩せた、お腹の脂肪が落ちたなど、最後の効果が出たことまでは書けないのが問題点です。

4つ目のポイントは、電話番号の位置が少し悩ましい点です。現状では電話番号が右下にありますが、本来ならオファーの近くにある方が理想です。しかし、医薬品広告は医薬品販売の表示義務を必ず表記しなくてはいけないため下部分を使います。この部分は二人分の体験談が入るくらいのスペースなので、これがあることで窮屈になるのがフリーペーパーで医薬品広告を出す時の悩ましい点です。

とは言え、これは表示義務なので、目立ちにくいように白場にして、オファーをしっかりと黒に持って行くことでメリハリをつけています。表示方法には正解はありませんが、これはセオリーに沿っている記載方法です。従って、電話番号をオファー下に持って行くことが重要になります。

レイアウトに関しては、私が一例として作成したので提案させていただきます。
改善案1参考改善案2

テストステップを考える

最後にテストステップについて考えていきます。
今回はレイアウトが一番重要なので、スピーディーにテストをする場合、まずは現状を軸にしてトップキャッチと漫画をそのまま入れ替えたレイアウトの変更を行います。つまり、漫画を少し左にして、記事を右に持って行きます。出来れば記事も長くしたいのですが、テストステップを丁寧に組むのであれば、まずは形式の変更を行ってレスポンスを見ます。

しかし、入れ替えるだけでは記事の入り口として共感性が高いとは言えないので、予算があれば一気に全部を直す方が良いでしょう。それができない場合は、順番として1番目はレイアウト変更、2番目は共感性コンテンツ、最後にクレジット部分の直しになります。掲載紙は一面部分のテストなので、予算があれば一気に全部を変更することをおすすめします。

ここで、なぜテストを一気に行った方が良いかについてですが、掲載紙は出すタイミングや同じ時期でのABテストができないからです。メディアが変わってしまうこともあるため、明確なABテストがやりにくいのです。

そのため、掲載紙のテストは仮説の部分が大きければどんどん変更することが多いと思います。一方で精度を上げていく方法としては、例えばWEBで勝っている会社であれば、クッションページで入り口に共感性の高い開発秘話のコンテンツを入れてコンバージョンを見ることもできます。チラシや大きいメディアを持っている場合は、そこで細かいテストやABテストを行ってから掲載紙にノウハウを落とし込む方法もあります。

テストの順番について

企業によってテストステップは変わりますが、テストを行う順番としてはこのような流れです。
・レイアウトを変えて入り口を記事型にする
・入り口に開発秘話を持って行く
・漫画は部分補足としての役割に留める(共感性と説得性を担保しない)

この部分を落とし込んでレイアウトを調整しますが、掲載紙の場合は少し割愛することもあります。

私の場合は、クライアントの許可が出れば一気に全部を直して、何メディアか回してレスポンスを見て、反応が良ければその後キャッチコピーのテストをします。

具体的な方法としては、「おなかの脂肪が落ちる」という規定の文言になってしまっているので、「えっ!お腹の脂肪が!」みたいに喋っているようなエモーショナルな表現など、共感性の高い表現を作れるのかといった細かいテストを行うことになるでしょう。

まとめ

テストを考える順番は、今の評価、メディア商材の評価と仮説出しを行い、それを順に落とし込むことを徹底していただきたいと思います。今回お伝えした方法が必ずしも正解ではないと思いますが、広告をブラッシュアップする方法として参考にしていただければ幸いです。

また機会があれば他の広告を使ってお話をさせていただきます。
気になる広告やチラシがありましたら、ぜひ、お問合せフォームからお知らせください。

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