“加藤公一レオ”の「広告業界的ぶっちゃけ話」
通販王国と言われる九州で、一貫してダイレクトマーケティング型ネット広告に従事し、ネット広告の第一人者と言われる株式会社売れるネット広告社の加藤公一レオ氏の広告業界的“辛口コラム”
第23回:“プレゼンのプロ”が教える、勝率が上がる!企画書・プレゼン資料作成のキーポイント
こんにちは。『売れるネット広告社』代表取締役社長 CEO 加藤公一レオです。
広告マンにとって、避けて通れないのが広告主へのプレゼンである。提案が通らなければキャンペーンを実行できない以上、広告マンなら誰しもプレゼンの勝率を上げたいと思うはずだ。
プレゼンの勝率を上げるためには、しゃべりや自己演出などのプレゼン力を磨くだけでなく、『聴き手に伝わる企画書・プレゼン資料』『聴き手をその気にさせる企画書・プレゼン資料』を作成するスキルも大事になってくる!
そこで今回は、三菱商事とADKを経て2010年に『売れるネット広告社』を創業し、プレゼン勝率90%以上を誇る私が“勝率が上がる企画書・プレゼン資料作成のキーポイント”を伝授しよう。
【1】小学生でもわかるような企画とプレゼンにする
まずは、これまでに自分が作成した企画書やプレゼン資料を振り返ってみてほしい。あなたが作る企画やプレゼンは、小学生でも理解できるくらいシンプルな内容になっているだろうか?
9割以上がクリエイティブな仕事に憧れているせいか、広告マンはやたらとカッコつけて企画やプレゼンを小難しくする傾向にある。しかし、小難しい企画やプレゼンは、頭が良さそうに見えるかもしれないが、実際のところ相手にはほとんど伝わらない!
勝率を上げたければ、思いきってムダをそぎ落としたシンプルな企画とプレゼンにしよう。提案が的を射ている限り、小学生でもわかるような内容にしたほうが圧倒的に決まりやすい! ADK時代も、2010年に『売れるネット広告社』を創業してからも数々のクライアントを相手にプレゼンをし続けてきた私が保証する!!
【2】スライドを使って視覚に訴える
誰もが1度は「メラビアンの法則」という言葉を耳にしたことがあると思う。人がコミュニケーションをとるときに、言語・聴覚・視覚から得られる情報のうち、どれがどの程度優先されるかを検証したものである。
研究の結果、「言語情報7%」「聴覚情報38%」「視覚情報55%」という割合が導き出されている。言葉を使って会話をしていても、「言語情報」がその人の印象に与える影響はわずか7%で、「聴覚情報」と「視覚情報」が93%を占めているのだ!
なかでもプレゼンの場では、55%もの割合を占める「視覚情報」を効果的に使う必要がある。具体的には、企画書・プレゼン資料にPowerPointのスライドを活用し、視覚に訴えかけよう!
文字だけの企画書や資料に比べ、スライドは作成に時間がかかる点がネックだが、イラストや図を交えることで、聴き手がぱっと見て内容を理解しやすい点が最大のメリットである!また、スライドはプレゼンターのペースで1枚ずつ先へと進めることができるため、聴き手に“先読み”されにくく、聴衆をプレゼンの世界に引き込みやすいというメリットもある。
こうしたことから、『売れるネット広告社』では、私も含めて文字だけの企画書やプレゼン資料は一切作っていない!クライアントへの提案やレポーティングはもちろんのこと、社内向けのプレゼンにも100%スライドの資料を活用している!
もちろん、「視覚情報」には企画書やプレゼン資料の見た目だけでなく、プレゼンターの表情やしぐさ、服装といった要素も含まれる。それらのテクニックについては、「第22回:アドテックで3年連続日本一のプロが教える、“成功するプレゼン”の6つの秘訣」を参照してほしい。
【3】プロフィールですごそうな自分をアピール
断言しよう。本当の意味でクライアントの売上拡大に貢献できる広告マンは、クライアントと対等な関係を築ける広告マンだ!もっと言えば、クライアントから“先生”扱いされるコンサルティングができではじめて、クライアントと対等になれるのである!
広告業界は比較的個人が有名になりやすい業界なので、個人としての“ブランド”を育てて、「○○社さん」ではなく「○○さんにお願いしたい」と言われるような存在を目指すべきだ!!
そのためには、クライアントに自分を知ってもらうこと、クライアントから「この人すごい!」と思ってもらうことが有効である。そこで、プレゼンの冒頭でプロフィールを紹介して、自分をアピールするようにしよう。
これまでの経歴はもちろん、資格や実績、執筆歴・講演歴など、自慢できるあらゆる要素を盛り込んだプロフィールのページを作成するのである。現時点で執筆や講演の経験がある人は少ないだろうが、その場合は仕事への意気込みや仕事への取組み姿勢なども盛り込んで、「この人なら信頼できそう」と思われるプロフィールを目指そう!!
【4】「ビフォー・アフター」理論を取り入れる
自分のプレゼンに興味を持ってもらい、提案に「GO」をもらうためには、「ビフォー・アフター」理論を取り入れ、クライアントが“より良くなる未来”をイメージできるように演出するのが効果的だ。
「従来のやり方はこうですが、このようにすれば広告の費用対効果が改善します!」のように、現状(ビフォー)と未来(アフター)を対比させ、魅力的なアフターを強調するのである!
あるいは、「カートシステムは平均8つの画面遷移がありますが、フォーム一体型申込フォームならシンプルな3ステップなのでコンバージョン率が改善します」など、従来のサービスやツールと比較したときの自社プロダクトの優位性を訴求しよう。
もちろん、このビフォー・アフターの訴求も文字や言葉だけでなく、画像やアニメーションを駆使して視覚的に伝えることでインパクトが増す!
『売れるネット広告社』では、「ビフォー」をディスるときやネガティブな内容を伝えるときは、アニメーションで上から下に画像や文字が出てくるようにし、魅力的な「アフター」やポジティブな内容を伝えるときは、下から上に画像や文字が出るようにすることをルール化している!
【5】フォントやデザインを統一する
聴き手の視覚に訴えかけて強い印象を残すためには、スライドの資料が有効だと述べた。ただし、スライドを使って提案やプレゼンをするにあたっては、いくつか注意すべきことがある。
そのひとつが、スライド内で使う文字フォントやデザインを統一することである。目的は、「聴き手に余計なノイズを与えないこと」「視覚情報を通して受けてのスムーズな理解を助けること」の2つだ!
・フォントは全ページで統一
まず、スライド内で使うフォントは、必ず全ページ同じものに統一しよう。会社単位、または部署単位で統一できればなお良い。『売れるネット広告社』では、スライドに使う文字のフォントを全社で統一している。
・ページの役割によってスライドのデザインを変え、役割ごとに統一
それに加えて、「各パートの表紙となるページ」「各パートの内容を説明するためのページ」など、スライド全体における各ページの役割によってデザインを変え、同じ目的を持つページは同じデザインで統一するべきだ。
通常、聴き手はこうした点を意識することはないが、無意識であっても「ここから次のトピックに入るんだな」など、スライドのデザインからプレゼンターの意図を察しているのである!
【6】情報を詰めこまずシンプルに
文字だけの企画書や資料とは違って、スライドの資料はあくまでもプレゼンを補足し、聴き手の理解を助けたり、より強いインパクトを残したりするためのものである。したがって、スライドの資料だけですべてを理解できるようにする必要はない。
むしろ、1枚の資料であれこれ伝えようと情報を詰めこみすぎるとインパクトが薄れ、逆効果になってしまうため、下記のような工夫を凝らして、聴き手が視覚的に内容を理解できるようにしよう。
・余計な装飾語は省き、できるだけシンプルな表現にする
・図やグラフ、イラストなどを活用して、できるだけ文字量を少なくする
・スライドの重要度に応じて、情報量にメリハリをつける
・重要度に応じて、文字の色やサイズにメリハリをつける
聴き手がスライドに書かれている文章を“読む”のに時間がかかって、プレゼンの内容が頭に入らない、理解が追いつかないという状態になってしまっては逆効果である!スライドは“読む”というよりもパッと“見て”理解できるようにしよう。
【7】スライドはテンポよく切り替える
⑥の「情報を詰めこまずシンプルに」とも関連するが、1枚のスライドにはたくさんの情報を盛り込まずに、次のページ、またその次のページへと、スライドがテンポよく切り替わっていくようにしよう。
PowerPointのスライドは、1枚でちゃんと情報が伝わるようにしないといけないと思っている人もいるかもしれないが、決してそんなことはない!あえて、文章の途中で切ってしまって次のページに移るのもアリだ。
例えば「それは」「そこで」など、中途半端なところで言葉が途切れると、“じらし”の効果によって聴き手は「重要な話が登場するに違いない」という期待感を抱き、次に話すことに集中してくれる!
話す内容の重要度を考え、ここぞというところでは“じらし”のテクニックを使いながら、テンポよくスライドが切り替わっていくようにしよう。
【8】色や記号、アニメーション等が与える心理効果を上手に使う
細かいことだが、提案が通る確率を少しでも高くするためには、色や記号が与える心理効果を上手に取り入れることも有効だ!
例えば「今後の改善点」を紹介するスライドには上向きの矢印を入れることによって、聴き手に“その提案を採用することでより良くなる未来”を想起させることができる。しかも、アニメーションで矢印が下から上へと上がっていくようにすることで、より強く「上昇」をイメージさせることができる!
また、詳しくは後述するが、『売れるネット広告社』の提案では、必ずプレゼンの最後で聴き手であるクライアントに各施策を実行するかどうか「YES / NO」を確認している。その際、「YES」の文字は“緑”で、「NO」の文字は“赤”で記載する。
これは、ランディングページの申込みボタンを“緑”にするとコンバージョン率が上がるのと同じ理屈だ!万国共通で赤信号が「止まれ」を意味する通り、“赤”には「警告」のイメージがあり、心理的に選びにくいのである!
さらに、『売れるネット広告社』のプレゼンでは、売上や広告の費用対効果が上がるイメージを演出したい部分にはレジスター音を入れるなどして、聴覚にも働きかけている。
色や記号、アニメーション、サウンドなど、使えるものは総動員して、プレゼンの効果を最大限に引き出すようにしよう!!
【9】決定事項や次のアクションを明確にする
一般的なプレゼンの場では、問題提起や提案の後、「ご清聴ありがとうございました」で締めくくることが多い。ところが“お礼”だけ終わってしまうのはあまりにももったいない。
考えてみてほしい。あなたがクライアントやパートナー企業、上司にプレゼンをする目的はなんだろうか?「ただ自分の話を聞いてもらいたい」からではなく、「自分の提案にゴーをもらいたい」「自分の提案にYESと言ってほしい」からではないだろうか。
ズバリ、ビジネスプレゼンの目的は、聴き手に対して、プレゼンターにとってプラスになるような意思決定を促すことである!であるならば、提案と決定はセットであると認識しよう。
そこでプレゼンの最後に、「提案事項のまとめ」を行い、提案した施策のひとつひとつに対し「YES / NO」を確認していくのである。もちろん、「YES / NO」を確認するページもスライドに入れよう。
聴き手がすぐに意思決定できるものであれば、その場で“決定事項”として片づけてしまえばいいし、すぐに決められないものについては、「〇月〇日までにYES / NOのご回答をください」と、こちらから期限を設定する。
何かを「決める」ことは人間にとって大きなストレスになるので、そのプロセスをできるだけ後回しにせず、すぐに決められることはその場で決めてしまうことはプレゼンターにとって有利に働きやすいだけでなく、聴き手の負担の軽減にもつながるのである。
【10】フォーマット化して横展開する
世の中のビジネスマンの多くは、「企画書やプレゼン資料はクライアントごとにカスタマイズする必要がある」と思っているが、実はそうではない。
ひとつの広告主にプレゼンして採用された評判のいい企画書があれば、キレイゴトなしにほかのクライアントへのプレゼンにもその企画書を横展開すればいい!なぜなら、本物の“ノウハウ”はどの広告主に適用させても成功する汎用的な『仕組み』だからである!!
もちろん『売れるネット広告社』のプレゼン資料も、クライアントのステージや提案の目的に応じて、完全にフォーマット化している。当然、これまでのキャンペーン成績や課題など、クライアントごとに異なる点については修正やアップデートは必要だが、全体の構成やストーリー、デザインはほとんど同じものを横展開することができる!
ほかのクライアントでうまくいった企画書をフォーマット化して横展開することで、誰でも同じレベルのプレゼン資料が簡単に作れるようになるし、資料作成にかける工数をより付加価値の高い業務に振り分けることもできるようになる!
プレゼンの相手(クライアント)と提案の目的によって多少異なるが、『売れるネット広告社』が採用している企画書・プレゼン資料の内容は、下記のような構成になっている。ぜひ参考にしてほしい。
1.プレゼンターと会社の紹介
2.プレゼンの背景・目的
3.現状分析・課題とその背景
4.具体的な提案内容
5.提案を採用した場合の効果とその裏づけ
6.決定事項(提案事項のまとめと「YES/NO」の確認)
最後に、広告マンの多くはコンペやプレゼンの直前までバタバタ企画書づくりをするが、ミスをなくすためにも、企画書やプレゼン資料は遅くとも2日前に作成を終わらせ、寝かせるようにしよう。直前までバタバタと企画書づくりをするかわりに、前日は徹底的にプレゼンの「イメトレ」をすることで、提案の勝率がぐっと上がるはずだ!
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